第31話 悪役令嬢の悪だくみ発動!
「やっとできたわね」
売り出し2時間で完売した6色カラフルスカーフ。今度は2000枚に増やして9色カラフルスカーフに進化した。
そもそも、この街は人口が3万人程度。そのうちの女性は1/3にすぎないから、1万人ほど。
2000枚のスカーフって本当に売り切ることができるのか。ちょっと心配なアリサ。
「どのくらい売れるかな」
「そうね。私の今日の販売目標は500枚」
強気なプリシラ。輝くような笑顔で答える。
「それにね。ジャスミンさんが来れないから応援の人員を用意しておいたの」
「はじめまして、ボブです」
店の奥から出てきたのは、プリシラさんと同じ綺麗金髪で青い瞳の男。スラっとした体型で背が高いイケメンだ。
「兄のボブ。もうひとりの兄のビルと一緒にビル&ボブ商会の経営をしているの」
「うわっ、お兄さんなんですね。お会いできて幸栄です」
うふふ。また、かっこいい男性と知り合いになれてしまった。うれしいな。今日1日、スカーフを一緒に売りまくって仲良くなってしまう、なんて素晴らしい展開。
「ちなみに。兄さんは独身なのよ」
あ、一番知りたいことを。ナイス、プリシラ。でも、プリシラさんの家族って美人美男子揃いなのね。
「アリサさんの話はプリシラから良く聞いています。すごい錬金術士だって」
「あ、そんなぁ」
なに、やってんのよ。せっかくのチャンスなのに。もっと気の利いたこと言わなきゃ。でも、そう思うと思うほど、言葉が出てこないアリサ。
「今日は、がんばってバンバンとスカーフを売りまくりましょう」
そう言って、プリシラが番号のついた木札を並べている。全部で100枚ある整理札。一気にお店に入ってこないための対策だ。
「それじゃ、開店するわよ」
「「はい」」
お店の入口のドアを開いて、『営業中』の札をさげる。
「あれ?開店前は誰もいないのね」
行列ができているかもと、期待したけど全然なかった。
「おかしいなぁ。予約している人もずいぶんいるのに・・・」
「まぁ、予約していたら、そんなにあせって来なくてもいいってことじゃないかしら」
「そうかなぁ。私だったら、開店すぐに買いにいっちゃうんだけど。。。」
開店30分しても、お客さんが入ってこない。どうしてなんだろう。前の時と全然ちがう。
「あ、いらっしゃいませ」
「これ、返品したいんですけど」
手にもっている赤いカラフルスカーフを差し出してくる。うわ、最初のお客さんが返品客かぁ。メゲルな。
「お気に入りませんでしたか?」
「ふざけないでよ。あなた、これ読んでないの?」
あきれた表情で、お客さんが手にした瓦版を見せる。
【 ビル&ボブ商会のカラフルスカーフ、美しき暗い罠 】
なに、これっ。
「1週間前に発売されたビル&ボブ商会のカラフルスカーフ。首に巻いていると強いアレルギー反応が起きた女性がいます。診察した医者によると『美しい色を出している染料はもしかしたら猛毒なのかもしれません』」
ひどいことが書かれている。良く分からない染料を使って発色だけで安全を無視したビル&ボブ商会の問題性。
「どうして。こんな瓦版が出ているの?」
「この医者、街でなかなか評判がいい医者だよ。この買ったという女性は知らないけど、ちゃんと名前が出ているとところを見ると、嘘とも思えないし」
「だけど、再発売のタイミングを待っていたようにこの記事を出してくるってことは」
「それはあるね。ちょっと調べてみる必要性はあるな」
返品のお客さんは、お金を返してもらって帰っていった。
その後も、お客さんが来ることはなかった。
「たぶん、これからもそれほど多くのお客さんはこないと思う。僕は記事の女性に話を聞いてくるよ」
「お願いね。兄さん」
「わかっているって」
2001枚のスカーフを前に、この日はプリシラとふたり。誰も来ないお店で暗い顔をして過ごすしかなかった。
そんなふたりを、嬉しそうに眺めている存在がいた。そう、公爵令嬢イライザだ。
「庶民の癖に私に盾つこうとするからよ。神様はちゃんと見ていてくれるよ。うふふ」




