第20話 騎士団長の依頼
「本当に畑で作っていたんですね」
「もちろんです」
今日は錬金畑にひとりのお客さんが来ている。
紅炎の騎士団、アンソニー団長。ビリーの参加している剣士トーナメントの主催者。
まだトーナメントは続いているはずなのだが、なぜか錬金畑に見学にきている。
「これがお話のポーション畑ですね。本当にただのラディッシュの株にしかみえませんね」
「地上に出ているのは、普通のラディッシュと一緒ですから」
珍しそうに、ポーションラディッシュを見ている。
今は、初級ポーションと中級ポーションを育てている。
「できたら、ひとつ収穫してもらうことはできませんか?」
「えーっ。今日の朝の分は収穫してしまったから、明日の朝にならないと・・・」
「ですよね。物は相談なんですが。売値で買い取りますから、ひとつ収穫してみせてください」
「・・・初級ポーションで、いいですか?」
仕方ないので明日朝、収穫しようと思っていた初級ポーションラディッシュのうち、一番成長が良いのを選んで一本だけ引き抜く。
「あ、本当にポーションだ」
「まぁ、とりあえずポーションになってはいますね。すでに」
引き抜いた初級ポーションラディッシュは、まだ赤い色が薄めだけど初級ポーションにはなっている。
「えっと。初級ポーション、品質は低級レベル。ですね」
「だから、まだ、早いんです。。。って、鑑定したんですか?」
「はい。鑑定スキル持ちですから」
魔道士でもなく、錬金術士でも、商人でもない騎士の方が鑑定スキルを持っているのは珍しい。
「それなら、在庫してあるポーション、見てみますか?」
「あ、見させてください」
『アリサのかわいいお店』の横に併設してある倉庫に案内する。
ここは、お店に出したり、売りに出す前の錬金畑で収穫した産品を貯蔵している。
「今は、中級ポーションが売り切れで、初級ポーションと上級ポーションだけです」
「ほほう。それぞれクオリティー高いですね」
「わかりますよね。鑑定スキルがあるなら」
売り物として出す予定の棚に並べたポーションはすべて鑑定が高品質だ。
ちょっとできがよくない中品質のポーションは別の棚に分けてある。
自分で使ったり、プレゼントしたりする用で、基本的には売りに出さない。
「あのお店のポーションは高いけど品質がいいのよ」と言われるように選別している。
「でも。ビリー君が持っていたような極高品質のポーションはないですね」
「あれは、特別に作った品でして。コストを無視して品質アップをしてみたんです」
それだけじゃなくて愛情を込めましたってことは内緒です。
「それって。また作ることはできるんですか?」
「うーん。どうでしょう?やってみないと分からないので」
「そういうものなんですか」
アンソニー団長は、極高品質のポーションが欲しいのかな。
でも、あれはまだ一度しか作ったことないアイテムだし、保証の限りではないの。
「それでは、極高品質とはいいません。できるだけ品質の良い上級ポーションを作ってほしいんです」
「それなら、8日ほど待ってもらえば可能です」
「8日なら大丈夫です。実は半月後に騎士団が大規模な魔物討伐を予定していまして」
「そうなんですか。その時用のポーションですね。いくつくらい必要ですか?」
「最低100は欲しいんです。高品質以上の上級ポーションを」
「うーん。それでは素材が足りない物がありますね」
今、あるだけの素材では上級ポーションは30本しか作れない。
特に足りなくなるのは、グレートワイルドボアの牙だ。
「他の物は街で探せばなんとかなりそうですが、ワイルドボア、それもグレート級の牙が20本くらい必要になりますね」
「それなら、騎士団で集めましょう。グレート級なら魔物の森で見つかるでしょうから」
それなら、なんとかなりそうだ。でも、素材持ち込みだからいくらの値段になるかな。
「上級ポーションはだいたい金貨2枚が相場です。ただアリサさんの品質なら1.5倍の価値があります」
「はい。そのくらいだと思います」
「牙は普通に入手すると一本が銀貨5枚くらいですか」
「もうちょっとしますね。銀貨6枚といったところでしょう」
団長さんは冒険者ギルドでの買い取り価格から牙の相場を予想したみたい。
でも、錬金ギルドで買った素材の中に同じ牙があって、それが6枚だった。
「あと、ひとつお願いが。100本まとめて買い取るということで、1割引きにしてほしいんですが」
「1割引きですか・・・まぁ、素材も用意してもらうし、いいでしょう。ただし、今回だけの特別価格ですよ」
「ありがたい」
上級ポーション100本を一本あたり金貨3枚で、合計が金貨300枚の一割引きで金貨270枚。
それに一本銀貨6枚の牙が20本で金貨12枚。それを引いて、金貨258枚。
すごい商談だなぁ。
「できれば、半金を先にいただけますか?」
「半金ほどはないんですが、金貨100枚はもってきています。それでどうですか?」
「はい。了解しました」
アンソニー団長は鞄から袋を取り出して、中に入っている金貨をテーブルに出す。
じゃら、じゃら、じゃら。
金貨100枚、キラキラっ。
金貨というのは、やっぱりわくわくさせるなぁ。
前世で一万円札100枚っていのもわくわくさせたけど、金貨がたくさんっていうのもすごいパワー。
「素敵っ」
つい、瞳をキラキラさせてしまった。
「お金、好きですか」
「はい」
このあたりは正直にいう事にしている。
前世では、給料以外にお金をもらうことにちょっと抵抗があったけど、こっちの世界にきてなくなった。
でも実は、お金だけではなく、かっこいい男の人も好きだったりする。
用件が分かって、契約もできたし。
改めてアンソニー団長を見ると、やっぱりカッコいいの。
細マッチョで、きりっとした顔。
三十代の後半くらいかな。
きっと人気あるんだろうなぁ。
あ、たぶん奥さんと子供いるだろうな。
こっちの世界の人は結婚早いし。
「それでは、これからもよろしくです」
「こちらこそ、いろいろとお願いすることもあるかと思います。よろしくお願いします」
あ、そうそう。
「そうだ。これ、奥さんにお土産にどうぞ」
まだ使っていない化粧水があったんだ。
奥さんの気持ちをつかんでおくと、旦那さんとも仲良くなれるって、ね。
「えっ。私は独身ですが・・・」
なんと。こんなに有望株な男がなぜ残っている?
もしかしたら、女嫌いとか・・・それとも、男が好き?
ついつい、いけない想像をしてしまった。
紅炎の騎士団の乱れた男関係。
そんな腐女子的な発想はおさえないと。
「では、かわりにこれを」
「なんですかこれ?」
出来立てのインスピレーションの実。
「これは、どうしようもないって状況のときに食べると、いい発想がみつかるっていうアイテムです」
「そんなアイテムがあるんですか」
「ええ。私のオリジナルアイテムです」
「貴重な品ありがとうございます」
いえいえ。結婚していないと分かったから、ちょっとは気を引いておかないと。
まぁ、無理目だってことは分かっているけどね。
そんな感じで、アンソニー団長とは仲良くなれて、ちょっと嬉しい一日でした。
昨日の夜から、アクセスが急に増えてまして。たぶん、脱底エッセイの影響かな、と。
読んでもらえるのは、素直にうれしいです。
『底辺作家は脱出したい。(脱底1週目の報告書)』
https://ncode.syosetu.com/n8202er/
脱底の仲間が増えたらいいな。厳しいコメント待ってます。




