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二・五章 二人きりで
こうして振り返ってみるとこの二人は随分と恋愛の展開が早い事に気付く。
うん、片方が出会い頭に告白するような人間だから、それも当然なんだろうけど。
世間では一週間で付き合う相手が変わってる人間もいるし、これくらい許容範囲内だよね。
実際、愛に飢えてたんだと思うんだ、僕。
駆け足気味の速度で突き進みたい程度には、ね。
だから、相手に身を任せてたんだ。
二人で互いの背中に寄りかかり、あとは沈むのを待つだけの泥船。
船底に次々と空いた穴。
僕らはそれでもその船を手放す事は出来なかったみたいだけど。
愛の鎖が、僕等を、そして船を繋いでいたから。
ああ、やっぱり。振り返ってみて再度、僕にはこの人しか有り得なかったんだと悟った。
こんなにも真っ直ぐな想いを受け止めるには、どこまでも空っぽの器が必要だから。
あー、自惚れ――惚気はこの程度にしよう。
ただでさえ、胸焼けが酷いから、ね。自分自身にも、毒だから。
でも最後に一つだけ言っておくと、今でも僕等は強く強く結ばれていると、そう誓えるよ。