3章 デートのちディスカッション 下
《第3章》
「幻獣『ウロボロス』。生と死、輪廻、無限、始まりと終わり。それらを自らの尾を食んだ姿のみで象徴する幻獣。ロロちゃんは、そんな強大な能力をその小さな体に秘めているんだよ。ロロちゃんがいろんな組織から狙われているのはそれが原因だ。大体のことは話したけど、何か質問はあるかい? 」
四神が話している最中、俺はただ呆然としていることしかできなかった。何故なら、四神が話していたことは俺が思っていた以上にスケールの大きなものだったからだ。今までの俺は、ロロがいろいろな組織に追われている理由を『ロロが何かやらかしたから』程度にしか思っていなかった。
まさかそんな壮大なことだったとは、前の俺に是非とも教えてやりたいぜ。だが、今の話を聞いていて1つ気になったことがある。
俺は右手を少し挙げて四神に言った。
「1つ気になることがある」
「なんだい? 」
「さっきの話でアンタはロロの体には強大な力が秘められているって言ってたな。ならどうして、ロロはそれを直接使わずにわざわざ俺に能力を貸し与えているんだ? 本来の所有者であるあいつが使った方が出力も違うんじゃないのか? 」
「そうだね〜。君の言っていることは今の話を聞いた人間なら誰もが持つ最もな意見だと思うよ。確かにあの力は本来の所有者であるロロちゃん自身が使った方が出力も桁違いだろうし、力の応用も利くだろう。それこそ本気で使えば彼女を狙っている組織を直接消しに行くことだってできる訳だ。じゃあ逆に聞くけど、もし君が彼女と同じ力を得て同じ状況に陥ったとして、さて君はどうするかな? 」
「…………」
その質問に、俺はすぐ答えることはできなかった。俺がすぐ質問に答えなかったことで、その場にしばしの静寂が生まれた。
もし俺があいつと同じ状況になったら、か……。
「俺なら、迷わず組織を潰しに行く」
それを聞いた四神はうんうんと頷いた。
「そうだね。それも有りだ。というか、それが問題を解決するのには1番の近道だろう。でも彼女はそれをしない。それは何故か。まあ、これは僕の勝手な予想なんだけどね。きっと彼女は底なしに優しいんだと思うよ。死んでほしくない。たとえそれが自分を狙っている人間だとしても、ね」
「そう、だったのか……」
「いや、今のはただの予想に過ぎない。真意はロロちゃん本人に時を待って聞くといい」
四神はそう言ってコップの水を一気に飲み干した。これだけ喋ったのだから無理もないと思う。
だが、四神本人はああ言っていたが、そうだな。今度機会を見てまた聞いてみよう。そうすれば話してくれるかもしれない。
「おー、ウェイターのにいちゃん。このジューシーステーキを3人前頼むよ」
「かしこまりました」
「て、とんだシリアスブレイカーだなアンタは」
この雰囲気でジューシーステーキを頼むか。かなりの強者だな。ところで、心なしか青山が気持ち良さそうに寝ているように見えるのは俺だけだろうか。
「ん? ああ。あんまりしんみりした雰囲気は好きじゃないんだよ僕は。それより前置きが長くなったけど、本題に入ろうか」
「ああ」
「単刀直入に言おう。僕達の組織に入るつもりはないか? 」
そんな、予想だにしなかった問がきた。
「は? 」
「いやね? 最近僕達の組織が人手不足でね〜。君達2人を守らなきゃいけないけど、その為にはただでさえ少ない人員を割かないといけないそこでだ。2人を加入させてしまえば人員も増えるし、同時に2人の守護もできる。一石二鳥じゃあないか‼︎ っていう考えからきた提案なんだけど、どうかな? 」
「どうかなって言われてもなー。俺の一存では決められないし。ちょっと待ってくれればあいつと連絡が取れるが」
「ああ構わないよ。むしろそうしてくれると助かる」
「分かった」
意識を集中させてロロとの『経路』を繋ぎロロの意識を呼び出す。初めは苦労したが、今となっては慣れたもんだ。
ロロはすぐそれに応じてくれた。
『なんでしょうか。人が楽しくバラエティー番組を見ながら食事をしている時に』
『おお、ロロ。悪いが、今から俺が伝える内容についての回答を求む』
『分かりました』
『いろいろあって、組織に入らないかって誘いがきてな。なんでも、そこは俺達のことを守ってくれるそうで、人員も不足してるから入ってくれると助かるらしいんだ』
『ふむ。そうですか。守ってくれるという情報は信用できるのですか? 』
やっぱりそこがネックか。
『ああ大丈夫だ。心配はいらない』
『そうですか。なら良いのではないでしょうか』
『オーケー、分かった。じゃ、そう伝えとく』
話が終わったところで『経路』を断つ。俺は早速先程のロロの回答を伝えた。
「さっきの提案、ロロは承諾したぜ。俺もオーケーだ」
「そうかそれは良かった! それじゃ、本部の方に申請を出しておくよ」
そう言った四神はズボンのポケットから携帯電話を取り出しどこかにメールを打ち始めた。そうしていると、先程のウェイターが料理を持ってきたのでそれを受け取る。そしてその1つを青山の前に置き、まだ寝ている青山に声をかける。
「おい青山。起きろー。おーい」
「ぅん、……んー? 」
青山の寝起き顔いただきました! 完全に寝ぼけてらっしゃる! うんうん。良きものを見せてもらった。
「おーい。料理がきたぞー」
「……え? あ、…………」
そこで何かに気付いた青山は顔をみるみると赤らめた。
「あ、あなた。見た? 私の寝顔」
「ああもちろん。寝起きの顔もバッチリジックリ見させてもらっだあっ⁉︎ 」
「忘れなさい……‼︎ 永遠に……‼︎ 」
「わ、忘れ、なさいだとぉ……? あんなかわいい寝顔を忘れられるか! って爪先潰れるぅっ! 」
「か、かわいい寝顔ですってぇ? …………。あーもう! 」
そして一際大きく叫んだかと思うと青山は俺の爪先から踵を退けてプイとそっぽを向いた。てか店内で叫ぶなよ。
四神がゲス顔で言う。
「へえー。美春ちゃんもそんな顔するんだね〜。僕の脳内メモリに保存しないとね」
「やめて下さい支部長! 」
「良いではないか良いではないか」
まるでどこかの悪代官みたいな台詞だな四神よ。
「そうだぜ青山ー。俺も脳内メモリに保存するぜ」
「あなたまで……。はー。もういいわよ」
「はい。それじゃ料理もきたところで、冷めない内に食べようか! 」
「おお! 肉汁がたっぷりだ! 」
「あなたねえ。合掌してから食べなさいよ全く」
こうして、話し合いとやらはそのまま賑やかな雰囲気でその後数十分続いた。そしてその間、周りの客の迷惑になっていたのは言うまでもないだろう。
○ ○ ○
「報告します。本日、『セイヴァー』の四神麟正が例の『契約者』の1人を引き入れたもようです」
「ほう、そうか。で、その『契約者』は誰と契約を結んでいる? 」
「はい。その人間はあの『ウロボロス』。それも歴代最強と謳われるオリジナルと契約を結んでいます」
「なるほどオリジナルとねえ。それで、その人間の名は? 」
「龍海勇誠という名です」
「龍海勇誠か。よし。下がって良いぞ」
「はっ」
部下が室内から去るのを確認すると、男は大きな声で笑った。
「ふふ、フハハハハハハ! 全くあの馬鹿は! ハハハハハ! 滑稽過ぎて笑いが止まらんぞ! 」
そして、笑いによって乱れた呼吸を整えた男は愉快な笑いとは一転して凄まじい笑みと共に言った。
「その程度のことで俺達が諦めると思うなよ四神麟正。お前はそれで切り札を手に入れたつもりだろうが、生憎ワンセットのトランプに必ず2枚の『ジョーカー』が入っているように、切り札を手に入れたのは俺も同じことだ。さあ、精々俺が退屈しないよう頑張ってくれよ? 四神麟正、そしてオリジナルとの『契約者』龍海勇誠」




