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3章 デートのちディスカッション 上

《第3章》

「美春ちゃん。君に最初出しておいた命令は彼の殺害じゃなくて、僕のところに連れてくるっていう命令だったはずだけど? 」

「うっ……」

 男の言葉にあの青山がたじろいだ。

 おいおい、青山のやつなんだかすごく焦ってるぞ。青山があんなに焦らせるなんて、あの男は一体何者なんだ? と、そんなことより、さっきあの男がかなり重大なことを言っていた気がするぞ。

「なあ」

「なんだい? 龍海勇誠君」

「アンタがさっき言ってた、僕のところに連れてくるってのは、俺を殺さずにってことか? 」

「ああもちろん。だって、死んじゃったら君と協力しようにも協力できなくなるじゃないか」

 なるほど。つまり、さっきのは青山が勝手に暴走してただけなのか。

 俺は青山に視線を移して言った。

「どういうことだ青山。俺はお前のせいで危うく死ぬところだったんだぞ」

 すると、青山は俯いて申し訳なさそうに言った。

「だって、あなたが急にやる気になったから、つい燃えたっていうか……」

「いやいや。俺が急にやる気になったって、あんな殺るか殺られるかみたいな状況に持ち込んでおいてあまつさえ『あなたを殺す』だの言ってたアホはどこの誰だと思ってるんだ? 」

「う、うるさいわね! あなたが抵抗するからでしょ⁉︎ 」

「あんな言い方してきたら普通は身を守ろうとするだろうが! 」

「ハイハイ、終わり! 2人共、ちょっとは僕にも話させてくれない? 」

 俺と青山が言い合っていると男が間に割り込んできた。それによって俺は自分と青山以外にもう1人いることを思い出した。

 さっきからほとんど喋ってなかったから存在を忘れてたが、そういやいたわ。

「まあ、用があるのは主に龍海君になんだけどね」

  俺を見据えて男はそう言った。

「俺に、用? 」

「そんなに身構えなくても大丈夫だよ。一応言っておくと僕は、いや、『僕達』は君の味方なんだから」

「味方、だと……? 」

「そうだよ。今日はその為に食事がてら少し話し合いをしようと思っていたんだ」

 男は俺を警戒させないためか、陽気に言った。

 この男が何を言っているのか全く理解できない。急に「僕達は味方だ」なんて言われてもそうホイホイと信じることはできない。いや、決してしたくない訳ではないが、したくてもできないといった感じか。少なくとも、こいつがロロの力を狙っていないと一概に言えない内はな。

 そんなことを考えていた俺に男はまるで全てを見透かしているかのような口調で言う。

「初対面の人間に急に味方だと宣言されても信じられるか! みたいなことを今考えてるね? けど、せっかく協力し合うんだから仲良くしたいなー僕は」

「まあ、そうだが。て、それよりなんで考えていることが分かった? エスパーか」

  男はそのままの調子で言う。

「だからね。親睦を深める為に、近くのレストランで食事でもしないかい? 今日は暇なんだろう? 」

 エスパーなのかどうかについてをスルーされたがまあ良いか。

「まあ、課題以外は特にないな」

「そうかそうか。なら行こうじゃないか」

「分かった。じゃあ、ちょっと妹に連絡するから少し待っててくれ」

 俺が言うと、男は何を思ったのか突然ニヤリといやらしい笑みを浮かべた。

「君は、同居人を勝手に妹にする趣味があったのかい? これは以外だね」

「っ……⁉︎ 断じて違う。て、もうそんなのは全部調べられてるのか」

「ああ。一応ね。ロロちゃんだったかな? 中々のネーミングセンスをしているじゃないか」

「良い意味で受け取っておくよ。じゃ、連絡するからちょっと待っててくれ」

「ああ。分かったよ」

 まさかこんなことになるとは。奢ってもらえるのは嬉しいが、ロロの夕飯をどうしようか。あいつに任せたら絶対ポテチばっかり食べるし……。

 俺はロロがまともな食事をしてくれるよう祈りながらメールを送った。

【急に親戚のおじさんが夕飯奢ってくれることになったから、夕飯はそっちで適当に食べててくれ。くれぐれもポテチだけで済まさないように】

 すると、送ってから20秒くらいで返信がきた。多分、暇なんだろう。

【では、ポテトチップスを主食におかずを食べます】

 俺は愕然とした。

 ちょっと待て。ポテチを主食におかずって、食べる物がポテチだけじゃなけりゃ良いと思ってんのかあいつは。

【アホ。それじゃ本末転倒だ。ちゃんと米と普通のおかずを食え】

 俺が返信すると、またもや20秒以内に返信が来た。どれだけ暇なんだ。

【仕方ありませんね。分かりました】

 仕方ありませんねじゃない。俺はお前の健康を思って言ってるんだが……。だが、これ以上は流石にもうしつこいか。じゃあ、待たせるのも悪いしもう行くか。

「待たせて悪い。もう良いぞ」

「そうかい。それじゃ行こうか。ほら、美春ちゃんも退屈そうにしてないで、一緒に行こうじゃないか」

 そう呼ばれた青山は本当に退屈そうにしていた。まあ、今まで放置されてたんだから無理もないか。

「はあー。一緒に行くのは良いですけど、その『美春ちゃん』って呼び方止めてくれませんか? 」

「僕は気にいってるんだけどねえ〜」

「私は気にいってません……」

 あの青山も上司? の前だと普段とこうも違うのか。それよりも、『美春ちゃん』ね〜。青山のイメージとはかけ離れた呼び名だな。よし。俺も呼んでみよう。

「なあ、美春ちゃーー」

「その呼び方で呼ばないでくれる……? 」

「いっ⁉︎ お、落ち着こう! まずは落ち着いて俺の首からそのよく切れそうなナイフを退けよう! 」

「だったら今度からは絶対、絶対にあの呼び方で呼ばないで! 」

「わ、分かった! 呼ばない、呼ばないって! 」

 俺が言うと、青山は素直にナイフを退けてくれた。どうやら本人の言っている通り、本当に嫌らしい。次はもうないだろう。

「おーい2人共ー。あまり物騒なことは起こさないように頼むよ〜」

 どうやら先程の俺と青山のやり取りを見ていたらしい。男が声のトーンはそのままで注意してきた。

「そんなことしませんっ」

 男の注意に毅然と反論する青山。それを聞いた俺は青山が事実を改竄していることに気付いたが何をされるか分からないので敢えて指摘しなかった。

「じゃあ、そろそろ行こうか。せっかくの時間がなくなってしまうからね」

 男はそう言うと踵を返してメイン通りの方へと歩き出した。青山もそれに連れて歩き出す。そして俺も。

 確か、協力関係を結ぶとか言っていたな。話の内容はほぼ確実にそれについてだろう。あの男が頭の中で何を考えているかは想像もつかないが、面倒事になるのだけは避けないといけないな。

 数分後。俺達はあるファミリーレストランの前に到着した。その店は、ハンバーグやステーキといった肉料理を主に扱っていて、とても美味いことで有名だ。

 なるほど。ここを選んでくるとは。この男、出来る……!

「入ろうか」

 店のドアを開けると、カランカランという鈴の音と共に「いらっしゃいませー! 」と、入口付近に立っているウェイトレスが元気に言った。

「3名様でよろしいでしょうか? 」

「うん、そうだね。それより、君のスリーサイズを教えてくれなグホ! 」

「本当にすみません! 禁煙席でお願いします! 」

 あの野郎、何言ってんだ⁉︎

 危うく警察沙汰になるところだったが、青山の素人とは思えない見事なボディーブローによってその場はなんとか収拾を得た。ボディーブローの餌食となった男は俺の肩にもたれかかっている。

 俺はため息を吐いている青山に聞いた。

「こいつ、もしかしていつもあんな事聞いてんのか? 」

「ええそうよ。それで、ほぼ毎回この始末よ」

「そいつは気苦労が絶えないことだな」

「本当なんとかしてほしいわ……」

「なんとかなれば良いな」

 青山も青山で色々と苦労してるんだなあ。さて、場所も整ったことだし、そろそろ話し合いとやらを始めるか。

 俺は案内された席に青山達と向かい合うようにして座った。男は青山の隣で今もグッタリしている。

「青山、起こしてやれよ。言い出しっぺが伸びてるんじゃ、話し合いにもならないぞ」

「嫌よ。面倒くさい」

「は? お前の上司だろうがお前が起こせよ」

「はあ〜」

 面倒くさそうに息を吐いた青山は男の鼻をつまみ引っ張った。

「いだだだだだだ⁉︎ は、鼻がもげる! もげるうううぅぅぅ! 」

「起きたか。よし。もう離してやれ」

「なんで私が命令されなきゃいけないのよ」

 悪態をつく青山だったが、俺の言った通り手を離した。男が目を潤ませて鼻をさする。

「痛いじゃないか。もっとマシな起こし方をしてほしいものだね」

「元はと言えばお前が原因だ。少しは反省しろ」

「いやー。あれは長年の癖みたいなものなんだよ」

「癖なのかよ! それでよく今まで警察の世話にならなかったな」

 まあ、青山というストッパーがいてこそなんだろうが。

「とまあそんな訳で。とっとと始めようか」

「ここまで遅れさせた原因がよく言う」

「まったくその通りよ」

 俺と青山が責め立てたが、男は構わず言う。

「さて、それじゃあまずは自己紹介から始めようか。僕の名は四神麟正しのがみりんせいだ。そして、組織『セイヴァー』の極東支部長でもある。以後、よろしく頼むよ」

 そんな名前だったのか。聞いた事ない苗字だから覚え易そうだ。

 青山が後に続く。

「名前はいいわね。えーっと、一応あなたと同じ学校の生徒でクラスは2組よ。まあ、それは表で裏は『セイヴァー』極東支部のメンバーやってるわ」

 そして、最後に俺。

「俺の名前は龍海勇誠。通ってる学校は青山と同じでクラスは1組だ。そして、ロロとの契約者であいつの世話を焼いてる。こちらこそよろしく」

「よーし。これで取り敢えず互いの素性が分かった訳だ。それじゃあ、話し合いを始めようか」

 男改め、四神はウェイターが運んできたコップの水を一口含んでから言う。

「まず、話を進めるにあたって君に確認したいことがあるんだ。君は、ロロちゃんの持ってる能力が何なのかを知っているかい? 」

「いや、あいつが教えてくれないから詳しくは知らない」

「そうか。それなら教えてあげよう。ロロちゃんの能力。それはーー」

 そして、四神は少し間を空けて言った。

「それは、『無限の象徴』シンボル・オブ・ウロボロス。かの有名な北欧神話に出てくる幻獣、『ウロボロス』の力を体現する能力だ

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