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1章 放課後に校門で

≪第1章≫

 学校の昼休み。それは学生達が午前中の授業の疲れを癒し、午後からの授業に向けて食事等で英気を養う時間だ。また、食事の取り方も人それぞれで、1人で取る者もいれば、友人と一緒だったり、互いに想い合ったパートナー同士でといった風にいろいろとパターンがある。

 俺はというと、今朝のゴタゴタの後処理やら数学の抜き打ちテストやらでヘトヘトになっていたので、5分で弁当を掻き込んで机に伏せて寝ていた。

 家のベッドで眠るのが一番だが、学校の机に伏せて眠るというのは独特の気持ち良さがある。俺は後の10分を無駄にしない為に速やかに目を瞑り、眠りについた。

 が、しかし。その俺の時間を無駄にしないようにするという素晴らしい精神を邪魔するやつが現れた。

「よお、親友。ちょっと起きろよ」

 この声は、速水(はやみ)か? この野郎。俺の睡眠の邪魔を。

 今俺に声をかけたのは親友の速水友介(はやみゆうすけ)。中学の頃からの知り合いで、当時から結構仲は良かった。でも、今俺に何の用が?

「俺は今眠いんだ。後にしてくれ」

  俺が伏せたまま言うと、速水は俺の耳元でこう囁いた。

「すごい美少女さんが呼んでいるとしてもか……? 」

「っ……⁉︎ 」

 瞬間、俺の頭は覚醒した。俺は速水に掴みかかる勢いで言う。

「それは本当か本当ならその美少女はどこにいる‼︎ 」

「ああ、本当だ‼︎ 教室を出たところでお前の青春が待ってる‼︎ 」

 そう言いながら、速水はクラーク像みたいに廊下を指差した。

 そうか。そうと決まれば男として待たせる訳にはいかないな。

 俺は美少女というキーワードに胸踊らせて廊下へ出た。そして、廊下へ出た俺は意識をしてないにも関わらず、自然と視線を『それ』に向けられた気がした。俺の目の前には、今までに見たことがない程の存在感を放つ美少女が立っていた。

 ポニーテールに結われた長めの美しい黒髪。端整でよく整った美貌に切れ長の目。中でも特に目を惹かれたのは、神秘的な光を湛えた黒い瞳だ。

 俺はそのあまりの存在感につい釘付けになっていたらしい。俺の視線に気付いたその少女が俺を見て言った。

「ねえ。あなたが龍海勇誠? 」

 俺は突然の問いに少しの間反応できないでいた。

「…………」

「どうかした? 」

 そんな俺を不思議に思ったのか、少女が下から上目遣いで覗き込んできた。

 ピピッ。主審が笛を吹いた! これはいけませんね〜。

「あ、ああ。そうだが」

「そう。私の名前は青山美春(あおやまみはる)。あなたと同じ1年よ」

「なるほど」

「そんなことより。あなたに聞きたいことがあるのよ」

 青山はそう言って俺から少し離れた。その次に彼女が言った言葉を、俺は一生忘れないだろう。

「あなた、今日の放課後時間ある? 」

 瞬間。俺の脳に革命が起きた。

「今日の放課後時間ある? 」だと……。そんな言葉がこの世にあったなんて。もし時間がなくても時間を作るのが男というもの。まあ、何も予定はないんだが。

「ああ。もちろん」

「そ。じゃあ、放課後に校門で待ち合わせましょ」

「おう」

「じゃあ」

 そう言って青山は歩いて行った。青山が踵を返した際に揺れた黒髪から心地良い石鹸の香りがして俺の鼻腔を刺激した。

 俺が教室に戻ると、速水が俺の首に腕を絡めてきて言った。

「おうおう! 成功したのか? ん? 」

 少しウザいぞ、速水よ。

「放課後、校門で待ち合わせだとよ」

「やったじゃねえか親友‼︎ あんな美少女と放課後デートなんて羨ましい限りだぜ、この‼︎ 」

「おい。あんま腕に力を入れるなよ。首が絞まる」

「おっと、すまん」

 すると、速水は絡めた腕を離して「絶対成功させろよ? 」と、言って席に戻った。気付けば昼休みはもう残り3分程しか残っていなかった。

 後3分か。次の授業は教室であるから、少しの時間でも寝るか。

 俺は自分の席に戻り、未だ高鳴っている心と共に再び机に顔を伏せた。

 ずっと放課後のことが気になっていたせいか、その後の授業がまったく頭に入っていないのは言うまでもない。


 ○ ○ ○


 そして、運命の放課後。さあ、決戦だ。

 俺は期待に胸踊らせ、教室を出た。今から起こる大イベントに気を取られていたためか、教室から校門に辿り着くまでの時間はほとんど一瞬に感じられた。

 俺が到着してから間もなくして、青山が校舎から出てくるのが確認できた。

 すると、俺を確認した青山が向こうから歩きながら手を振ってきたので俺もそれに応えて小さく手を振った。

 何故だろうか、とても幸せな気持ちだ……。

 俺は湧き上がってきた例え難い感慨を思う存分噛み締めた。

「ごめんなさい。待たせたかしら? 」

 俺の側まで来た青山はそう言った。俺は澄ました顔で答えた。

「いいや。さっき来たばっかりだ」

 それを聞いた青山は特に表情を変えないまま言った。

「そ。それじゃ行きましょうか」

「おう」

 すると、青山は踵を返して歩き出した。俺もそれに合わせて歩き出す。俺の心は今、今世紀最大級に高鳴っていた。

 歩くたびに揺れる青山のポニーテールがとても可愛らしい。

 こう、ぴょこぴょこ揺れるんだよ。そこがとても良い。はっ! 俺は何てアホなことを考えているんだ……。


 こんなアホなことを思っている俺だが、この時はまさかあんなことが起こるなんて思ってもみなかった……。

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