Prologue 雨上がりの出会い
新しく思い付いた話を投稿します
短期連載になるので、あしからず
雨が上がったばかりの朝だった。
村を囲む森からは、濡れた土の匂いが漂い、畑には朝露が残っている。村人たちはいつも通り仕事へ向かい、薪を集める者、畑へ出る者、それぞれが静かな一日を始めようとしていた。
――その途中だった。
「……おい」
村の外れを歩いていた男が足を止める。
ぬかるんだ地面の先に、小さな灰色の影が倒れていた。
最初は獣の死骸かと思った。
しかし近づくにつれ、その姿ははっきりする。
細い手足。
尖った耳。
泥に汚れた緑がかった肌。
「ゴブリン……」
男は思わず息をのんだ。
その声を聞きつけ、近くにいた村人たちも集まってくる。
「本当だ」
「なんでこんなところに……」
「近づくな」
誰も不用意には近寄らない。
ゴブリンは魔物だ。
畑を荒らし、人を襲うこともある。子どもの頃からそう教えられて育ってきた。
だからこそ、距離を取る。
しばらく誰も動かなかった。
風だけが静かに吹き抜ける。
やがて、一人の年配の男が落ちていた枝を拾い、恐る恐る倒れているゴブリンの肩をつついた。
反応はない。
もう一度つつく。
かすかに身体が震えた。
「……生きてるぞ」
その一言で、場の空気が変わった。
「なら危険だ」
「今のうちに始末したほうがいい。」
「目を覚ましたら襲ってくるかもしれん」
口々に飛ぶ言葉に、誰も反論しない。
それが、この世界では当たり前だった。
男は黙って倒れているゴブリンを見つめる。
泥だらけの身体。
浅く繰り返される呼吸。
ところどころに見える傷跡。
何があったのかは分からない。
分かるのは、このまま放っておけば長くはもたないということだけだった。
男はゆっくり息を吐く。
「……どうする」
誰に向けた言葉でもなかった。
返事をする者はいない。
ただ、村人たちは警戒したまま、その小さなゴブリンを見つめ続けていた。
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