第5章「遠い国の赤い犬」⑦
部屋の中を照らすランプから、獣の油の匂いと、薔薇の香りが混ざりあって立ち込める。火の勢いが強くなり、ルビアの瞳を輝かせた。
するすると衣服が床に落ちていくと、肌があらわになる。ミルクを混ぜたコーヒーのような褐色の裸身に、控えめな乳房。体の奥底から熱を生み出しているかのように、彼女はひどく汗をかいていた。
リュウは初めて見る女の裸に視線を囚われていたが、内心では、自分が簡単に祖国を離れることができた理由を考えていた。そもそもまともな身元保証人もいなかったのにやすやすと出国できたこと、異国について早々に簡単に農場に雇われたことに、何かしらの誰かの差配がなかったかと思い返していた。出国するときの、役所の担当者の名前、農場の主の名前、そして今いる鉱山主の名前、それらが、どこかであの女と関りがあったのではないかと疑い始めていた。自分を捨てたあの女、顔すら知らない女。思い返せば、酒におぼれた父親は、もともと由緒ある神社の出身だったが、身持ちを崩してああなれ果てたことを、それすら、父親の出自に何かしらの価値を見出して、布石のように自分を生み出したのでないかと。
そのような思考を繰り返すうちに、ルビアは彼を床に横たわらせ、彼の体に指を這わせると、手慣れた様子で、必要な部分を十分に機能する状態に導いていた。
「おとなしくしていれば、すぐに終わるから」
その言葉をどう受け入れていいか判らず、ひょっとして愚弄されているのかとも思いながらも、この状況に抗うこともできず、いや心地よさに身を任せることに抵抗を感じることができなくなり、促されるままに彼女の中に入っていった。
覆いかぶさる彼女の口をじっと見つめると、桃色の舌のずっと先、体の奥の方から、赤黒い炭の熾火ような輝きが見えた。吐く息は火傷しそうなくらいの熱をもっていた。このまま、自分はここで消し炭のように燃え切って、風が吹くと白い灰が巻きあがって消えてしまうのだろうか。リュウは思ったが、そうはならず、やがて彼女の中で果てると、二人はベッドの上の汗の海に浮かぶように体を横たえ、そのまま眠りに落ちた。




