戦いは終わり、再会を果たす(1)
前回のあらすじっぽいもの:包囲・挟撃…その全てを打倒したアキラ達三人は…
「どうして倒さなかったの?」
戦闘後、アキラ自身が『形態変化』で穴を掘り、殺してしまった九人を弔っていると、コガが無表情に、けれども言葉に不満を滲ませ訊ねてきた。
「残り四人。あなたの強さなら勝てたはず。それをどうしてしなかったの?」
「逆だよ、逆」
「逆?」
岩で押し潰してしまった六人の内一人を、土の質を変化させ、そのまま土の中へと眠らせながら、アキラはコガの疑問に答える。
「あのまま戦ってたら、オレは確実に負けてた。コガさんがオレを高評価してくれるのは嬉しいけどさ。あのままだと絶対に勝てなかったって」
「あれだけ有利な状況だったのに何を言ってるの?」
「事実だよ事実。だってそもそも最後のアレ、コガさんの手伝いがなかったらどう考えても勝ててなかっただろ?」
手を借りないと負けてしまう。
そうアキラが思ったのは終盤、六人を相手にしている時だった。
二人が前衛、四人が後衛に回ったその時、どうしても一人では守備に回るのに精一杯になり、守備に回ればそのまま反撃の糸口が見つけられず、ごり押されて負けてしまう。
そんな負ける映像しか、彼の頭の中には浮かんでこなかったのだ。
「それだけ切羽詰ってたんだって、マジで。もうあの最後の落石攻撃で全員仕留められなかった時点で、ハッタリ利かせて逃げてもらわないとさ」
あれだけの強さを見せ付けた癖にその言葉を信用しろというのは、コガとしては中々難しい。
……でも、少なくとも土煙で覆われた時、慌ててコガを手招きし、気配察知をしてもらい、手伝ってもらっていなければ……今頃はまだあの十人と戦っていたのは間違いないだろうことは、彼女でも想像できた。
「さて、と……こんなもんか」
話しながらも作業の手は止めず、時間にして三十分ほどでようやく、九人全員を土の中へと埋めることが出来た。
埋めたところはそのまま山になっていたりと不恰好で、戦闘前の川の名残は既に失われてしまっているが、死体をそのまま放置しているよりかはマシだろう。
別にアキラも、道徳的に埋めていたわけではない。
死体をそのままにし、腐臭漂わせては周りに迷惑をかけてしまうからという、その程度の考えしか持っていない。
そのため後々腐臭がしないよう、土質もしっかりとイジってある。
(まっ、これで周りの住民には迷惑掛からないだろう。……大きく地形を変えてしまっている時点で少々手遅れ感はあるが……せめてこれぐらいはな……)
所々山になっている元平地を眺めながら、そんなことを思うアキラの背に――
「ようやく終わった? それなら早く出発しよう」
――なんて、どうでもいいことに時間を潰してしまった、とばかりの、少し呆れの色さえ滲ませたコガの言葉がかけられた。
どうせ立ち去るのだから死体なんてそのままでも構わない、とまで主張していたのだから、まぁ当然と言えば当然なのかもしれないが。
もしナナ姫がアキラの弔いに同意していなければ、彼を放ってとりあえず二人で行ったことは間違いないだろう。そう断言できてしまいそうなほどの慈悲無き言葉だった。
しかしそこには、同時にどこか急ぎの色も感じられる。
現に今も、どこか急かして来たようにも聞こえなくも無い。
慌てているようにさえ見える。
それはアキラも気がついた。
けれども、同時に疑問が浮かぶ。
とっくにナナ姫の命を狙う敵は倒したと言うのに……どうしてそこまで焦る必要があるのか。
「なんでそんなに慌てるんだ? コガさん」
だから、訊ねてみることにした。
「さっきの敵だってさすがにさっきの今日で襲ってはこないだろ? まあ見張りはつけられるかもしれないけどさ」
「見張りもいない」
キッパリと断言した後、続ける。
「いえ、おそらく本部にあなたの強さを報告するためにも、これから三日間は大丈夫だって言い切れる」
「じゃあ尚のことそんな慌てなくても……」
「他にもいるの。ナナを狙っている相手は」
「え……? ……あ~……言っていた、あの」
出会った時、四人程度の規模で無視できない敵もいる、とチラリと言っていたことを思い出す。
「確かにド派手に戦ったからなぁ……見に来るぐらいはするかも」
「その通り。だから早く出発しないと。その相手は、私たちがさっきの組織に狙われていることを知っていて、戦いになってもおかしく無いと思ってる。そして……戦って欲しくないとも思ってる」
戦って欲しくないと思ってる。
その言葉にアキラは引っ掛かりを覚えたが、さっきの言い方だといくら訊ねても答えてくれないような気がしたので、黙っておいた。
「だから、戦いの場所は絶対に見に来る」
確信を持った言葉。
昨日見せた被害妄想的なネガティブ思考も含まれているのだろうが、しかしこういった形で警戒してきたからからこそ、今まで敵に襲われることが無かったのであろうことは明白。
なら、言うことは聞いたほうがいいだろう。
「分かった。なら移動しよっか」
アキラの言葉に「ん」と頷くと、少し盛り上がった地面一つ一つに、丁寧に手を合わせていたナナ姫を呼ぶ。
「それでは、出発する」
ナナ姫が傍にやってきてからすぐ、この場所へとやってきた道とは反対側……川があったなら対岸に位置する方向へと歩き始める。
コガを先頭にし、ナナ姫、アキラが順に付いていく――
「あ、やっと終わりましたか」
――その、前方に――坂道の上に、一人の男が現れた。
コガとナナ姫にとって見覚えの無い……けれども、アキラにとっては会いたくも無かった、その姿が。




