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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第1部 - 第3章

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84.3章-第28話 ”神域への階”

 そうして、夏祭りと、イベント会場を楽しみつくす9日間が過ぎました。

 意外とイベントというか、難関込みで精神的にも負荷の高い状況が続いたSEOでの生活。久しぶりの完全休養期間を過ごし、リフレッシュできた私達。

 出発前夜、辺境伯から、家令さんに頼んでいた件で。と、お呼び出しをいただきました。


 もはやいつもの、となってきた応接間。そこにいらしたのは辺境伯と家令さんにメイド達。そして、一目で高位の聖職者と分かる、穏やかそうな表情のご老人と、お付きらしき数名の聖職者達。彼らの胸元にはアレイスター王国の宝物庫に廃棄された貴族たちの持ち物、あるいは、あの地下でルナリスを救わんと共に踏み込んだアルフレドさんが、地下牢で祈りを捧げていたのと同じ。創世聖教の十字架が下げられています。


 案内に従い、室内に入り。私の姿が目に映るや否や……辺境伯と和やかにお話をされていた高位聖職者のご老人を筆頭に、席を立つや十字架を手に、私に向けて祈りを捧げ始めてしまわれました。


「このような姿にて御前を穢します事をどうかお許しください。御使い様と伺ってはおりました。が、よもや、よもや誠、神域に至らんと成される御方とその眷属様がたであらせられるとは」


 あ……これ、やっぱり教会系は種族的な何やかやがありそうな感じですか。


「どうか、頭をお上げください。私はそのような、礼をいただくような者ではありません」

「滅相もございませぬ。ですが、お心遣いを無とするは不徳。御前を拝する事、お許し願います」


 今一度深く礼を捧げると、頭を上げてくれる聖職者の方々。


「お願いごとをしたのは私の方です。どうか、おかけください」


 と、辺境伯を前に勝手に仕切るのはまずかったですね。目線を向ければ。


「ナオ殿もこのように仰せです。どうぞ」


 いつものごとく鷹揚に構えてくれている辺境伯。


「わたくしも、しっかりと首を垂れるべきですかな?」

「どうかおやめください」


 油断していたらそんなお茶目まで私に向かって……。


 さて、このような場が設けられる事となった原因ですが、例のクエストの前払いの報酬。準備も兼ねて、許可されていたスキル結晶に関する相談。私がお願いしたのは、”☆8 Lock:魔力変質:神代魔法適正”に関する事。結果、神代魔術に関わる事物は創世聖教が管理されている。との事で、つなぎをとってくれたわけです。後あるとすれば、各国の国宝や、禁書庫とかそういうレベルらしいです。


「創世神様の御心のお赦しの元、大司教の責を賜っております、フェルナレンと申します」

「ナオ、と申します。こちらがルナリス、そして紗雪。大司教猊下にお運びをいただくとは、光栄の至りです」

「滅相もございません。此度は神代魔術の理を進まれるとのこと。御使い様であれば、格別のご事情あっての事と思い、まかり越しました次第でございました」


 天使では神代魔術の素養はないという事でしょうかね? それで、天使のはずなのに、神代魔術について求めているので確認を兼ねてやってきたと。


「わたくしどもの不明をただただ恥じるばかりにございます。神の翼を宿す御方であらせられるとは。なればお求めも当然の事」


 魔力変質で神翼種に種族が変わったことが、大きな意味を持つと。


 大司教猊下の合図で、後ろに控えていた2人のシスターが前に歩み出てきます。

 2人がかりで恭しく掲げられる豪奢な台と、その上に乗せられたクッション。さらに、その上にのせられているのは、神々しさを感じる黒い結晶。


「試練のただなかと、お見受けいたします。こちらもお納めください」


 もう一人、男性の聖職者がすっと差し出してくれたのは小さな結晶が5個。

 これはスキルスロットエンハンサーですね。一瞬躊躇したのを即座に見抜かれ


「どうか、神の翼を宿す御方のお力となれることは我らの栄誉。創世聖教の理にかなう事にございます」

「ありがとうございます」


 しかし見ただけでいろいろと察せられてしまうものなのでしょうか。鑑定とか、あるいは聖職者独自のスキルとかあるのでしょうかね。ありがたくいただき、きっとこのスキルは魔力変質の時と同じなのでしょう。4個を消費し、封印体”不朽の束縛”のSlot12を開放させてもらいます。

 粛然とその様子を受け入れる銀の姫と紗雪。

 改めて、跪く2人のシスターから捧げられた、黒いスキル結晶。


 “☆8 神威-領域規定”


 想像とあまりに異なるスキルの名称に、少し驚きが漏れてしまいます


「神代の魔法。それは創世神様がこの世界を生み出された神の御業を、再び世界にしろしめす、法。神々が、あるいは、至らんとする御方々が、世界の源から己が法を敷く行いにございます。“魔術”とは、己が内より生ずる魔力を用い、事を成す術理」


 そこで少しだけ、言葉を切り。再び、さらに熱のこもった様子で語り始めてくださいます。


「これとはまた別に、現代においても。己が内の魔力を誘い水とし、世界を満たすマナに働きかける法としての”魔法”もございます。しかし、ナオ様が至らんとされる法は、これとは全く異なる次元に在るのです。同じ“魔法”の名を冠する現代の事象”魔法使い”がおこがましく感じられるほどに。貴女様が至らんとする真なる”魔法”、それには、まずは領域を定め、支配し、拡げる事からにございます。そのために必要な術理、術法こそ、そちらになります」


「ご教示、痛み入ります。学ばねばならないことが多くありますね」


 ありがたく、受け取ったスキル結晶をいよいよ使用します。


【エリアアナウンス:ナオが、称号”神域への階を踏み出す者”を獲得しました。職業”神威を成さんとする者”を認められました】

【エリアアナウンス:ナオの眷属、”ルナリス”、”紗雪”、条件未達成。変質を保留します】


 住民からすればそれは創世神様の神託そのもの。よもやエリア全域にアナウンスされるような事になるとは……。

 室内の全員が一斉に私達に向けて跪いてしまいました。それには辺境伯まで含まれてしまっており……。


「皆様どうか、普通に」


 それでもしばらく、逡巡が手に取るように伝わる時間の後。


「かたじけない……」


 ようやく辺境伯が立ち上がってくれました。


「どうか、これまで通りに」

「承知……しました。ですが、何かご助力できることがあれば、その時は遠慮なく」

「感謝します」


 その後、空気を変える意味もあってでしょう。辺境伯の指示でメイドさん達が全員に紅茶を淹れてくれ、一息ついた後。ようやく話の続きとなりました。



「アレイスター王国へ赴かれるとのこと。創世聖教の把握している限りの事実をお話いたしましょう」


 そうして大司教が語ってくださった状況。辺境伯も適宜、得られている情報から補足してくれたことによれば。


 ルナリスを連れて”彷徨いの樹海”を通過していた頃。

 アレイスター王国全土では、創世聖教の教えを禁ずる旨が正式に布告され、教会の閉鎖、同国出身者を除くすべての関係者の国外退去が強行された。住民の反発もあったものの、武力を背景とした強制命令に表立っての抵抗は抑えられた。生活そのものは安定していたどころか、むしろ食糧事情をはじめ、生活水準さらに向上の兆しを見せ始めていた事がやはり大きいと。また、孤児院や土木工事、土壌改良等、創世聖教教会が主導あるいは支援していた事業は王国が直接引き継ぐと、わざわざ後任まで派遣されたという。


 しかしながら輸入量が増えているわけでもなく、クーデタ発生からわずか2,3か月で食糧生産、文化、様々な向上や変容が実現できるはずもない中。どのようにして……? という点は、結局つかめず仕舞いであったと。


 創世聖教に変わる拠り所とするよう、国内に一斉に配布されたのは、不可思議な呪文や難解な図案が記された経典。その内容も地域によって異なる場合があるようで、全容はつかめていないそう。

 現物を持ち出そうとした密偵は国境へ至る前に音信不通となったとの事。



「もともと彼の地には、土着の信仰がございました。創世聖教はそれぞれの信仰に対し、基本的に寛容です。大陸全土で主教と定める動きが進む中、招きにより王国内に布教と、教会の建設が行われましたことが始まりでした。土地の借款等や教会の領分と共に権利についても、約定として交わされました。この度その約定そのものの破棄を、新国王クロウリード=フォン=アレイスター陛下が議会の反対を封じ、決定されたのです」


 想像はしていましたが、かなり厄介な状況になっていそうな気がしますね。

 とにかく優先順位を間違えないようにだけは肝に銘じつつ、最大限の成果を狙っていきましょう。と、想いを新たにした会合でした。


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