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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第1部 - 第3章

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81/202

80.3章-第24話 ”モンスターラッシュイベント #2/2”

 モンスターラッシュイベントもすでに最終5日目の朝。


「比較的誰でも参加できるように、というコンセプトなのでしょうね」

「ですね~。さすがにうちの子達の敵ではないですね」

「皆……強い」


 ええ、結局出現ポイントはこの南の3個と、反対側の北に3個、合計2か所のみのようです。

 敵陣も偶数の場所がそろって解放されていますが、今のところ黒い兵士と獣、その融合体のみなのも変わらず。

 もはや沸いた傍から殲滅されています。

 暇になったのか、凝りだすと止まらないからか、防衛陣地の城壁や砦が、芸術作品のように、美しい彫刻やモザイクの芸術作品で彩られています。


 さらに城壁上には、魔導砲がずらりと並び、第3、第4部隊の子達がたまに楽しそうわいわいきゃいきゃいと、はしゃぎながらズドーンっと、打ち放っていました。

 右の方では、いかに正確に砲撃できるかの競い合いを始めましたね? え、商品が私達のお部屋の夜のお傍付き? ……えー。


「これで全員3億ポイント獲得。スキルスロットエンハンサーを上限の10個に、マジッククローゼット (衣装アバター設定スロット)1個を取り切れますから、ある意味救済イベントですね。目玉商品は全プレイヤーが、獲得できるようにという配慮もあるのでしょうかね」


 と、暢気に話していた矢先。


【サーバーアナウンス:モンスターラッシュイベント最終日は、各領域ごとの個別難易度となります。奮闘に期待します】


「おっと?」


 12の敵陣全ての靄が晴れました。

 さらに、それぞれの地形がガラッと変わっているではありませんか。


【連合レイドアナウンス:総員、最低限の警戒を残し、南北に再配置。敵襲に備えよ】


「12時方向、氷河地帯。6時方向、蜘蛛の巣……いや、蜘蛛糸の芸術でおおわれた漆黒の渓谷。3時方向、溶岩地帯に活火山らしき巨大な山。9時方向、月が綺麗に地面に映りこんだ漆黒の谷」

「お二人の装備強化素材から逆算して、アトラク=ナチャ、アフーム=ザー、鳳凰、夜天竜それぞれの領域でしょうかね!他の方角もえぐい気配がしていますよ」

「魔力密度が……とんでもない……です」


 種族変化の結果、豪華さと羽根のふかふか具合が増したと、ルナリスと紗雪2人から好評の翼を広げ。


「とりあえず南から行ってみましょうか」

「北には私のドール体も向かわせます」


 アクロイトと、ルビーノが北に布陣しているのを確認し、多分そう期待もされているだろうと、まだ指示はありませんがイヤリング越しに一言告げて移動します。


 3つの魔法陣が輝きだし、出現したのは漆黒の大蜘蛛が3匹。


「断片や邪霊そのものではないみたいですね」

「眷属とかそういうランクっぽいですね。それでも、普通に全部ボスクラスですが」


 城壁上から放たれる魔導砲のエネルギー弾。確かに命中したはずだが、何ら痛痒すら感じさせず、前進してくる大蜘蛛3体。続けて中央に炸裂する火炎旋風。見事な炎の竜巻が天地を結び、さらに追い打ちとばかりに撃ち込まれた魔術の岩石が、高温を帯び、内部で暴れまわる。


 さすがに、これはひとたまりもないかと、嵐の収まった後を見れば、蜘蛛糸で編まれた繭に包まれた、3つの大きな塊。1つが割れ、中から大蜘蛛がまたも無傷で出てくるのが視界に映るや、残る2つに突貫する、ランスを構えた戦乙女達。


「中央をやります」


 繭を破り、全身を今にもあらわさんとする大蜘蛛。

 先手必勝とばかりに重低音とともに吐き出される紗雪の対物狙撃銃の魔術弾体。

 戦場に歌が響き渡る。刀と扇を手に舞い踊るルナリス、立ち上る月の魔力、スキル強化の甲斐もあって、明らかに今までとは発する圧力が違う。


 突き込まれたランスすら跳ね除け、いよいよ姿を現した残り2体の大蜘蛛。しかし彼らの赤黒い瞳が見据えるのは先の1匹。紗雪の弾丸にのけぞるそれに、やおら、とびかかる2匹。銀の姫の幻惑に味方を敵と謝認識させられているです。

 強靭なあごにかみ砕かれ、互いの吐き出す糸にがんじがらめにされ始める3匹。


 まだ味方を敵と誤認識している、無防備で一番元気な右奥側の1匹に、双短剣を両手に、最高速で飛翔する私。

 かつて邪霊、アトラク=ナチャの断片の外殻を直接貫くことはできなかった融炎の一撃ですが……。

 刃は通らずとも接触と同時に吹き上げさせた豪炎。強固な邪神の眷属の外殻をたやすく溶断し、内部へ灼熱地獄を巻き起こす。


 たまらず悲鳴を上げる大蜘蛛。その抉り、溶かされた背中の傷に、対物狙撃銃の弾丸が再び飛び込む。内部で炸裂した弾丸から広がる、束縛の鎖の結界。今までならば、ただ相手を拘束するにとどまったそれは、しかし。今や特性変化をかけられ、凶悪な斬撃の華へと特性を変じている。内部から展開された刃の鎖に、ずたずたに引きちぎられ、あえなく消滅する大蜘蛛。


 残る瀕死の2匹に双短剣を向けたその時、するり……確かにとらえていたはずの、銀の姫の影が意識をすり抜ける。

 気が付けばすでに舞いは余韻を残すのみ。

 虹色に輝く銀のきらめきを宿した刀の刃。その斬線にそって、すっ……と、音一つなく、美しい断面を晒して、くずおれる2つの躯。


 時空の理を直視する、”月の姫巫女”が宿す、”月姫の時空眼”。 時空属性を纏わせた刀が、彼女の瞳だけが映し出すその世界の裂け目に沿って、振るわれ、時空の傷痕を現界させた。生半可な、否、邪神の眷属ですら、防御を許さない慮外の斬撃。ただただ、美しい舞いのままに、理が断ち切られた。装甲無視の凶悪な一閃。



 さすがに、昨日までの雑魚とは違い、無限沸きとはゆかぬのか、1時間に1度程度に出現頻度を落とした、ボス格モンスターのラッシュ。

 しかし、強化された3人の前には少々役者不足の感も否めず。


 大きく戦力を再配置し、人形少女達総がかりで抑える北と、私たち3人で抑える南。

 しばしば休憩のためのお給仕に来てくれるサフィーロ筆頭に第4部隊の子達に癒しをもらいつつ。順調に撃破を続け、おそらくこれがラストの20時過ぎ。


 南に姿を現すは、夜天の竜。北に出現するは、不死の炎を纏う1羽の鳳。


「大幅に弱体化されているのでしょうが、それでもこの威圧感」

「本物がどれだけの脅威か、今は、ちょっと考えたくないですね」

「断ち斬り……ます」


 最近では師匠面も板についてきた、二振りの空舞う銀剣を後ろに控えさせ、舞いを一層加速させるルナリス。虹色の輝きを宿した、蒼銀の瞳が、妖しく光の筋を月明かりの元に残します。


 初手は顕現体裏、もはや堕天使にあらず、神翼種/闇となったこの身から放つ、暗黒の束縛。

 夜天の主に、不遜にも挑まんと、闇が凝縮する。想像を絶する束縛に、溜めた息吹をブレスと化し、相殺を狙うように、打ち放つ竜。

 だが、そのブレスの前には悠然と、悠々と、舞う銀の姫の身が、踊り出る。


「月魔術-反射, 時空魔術-歪曲, 時空魔術纏い-斬」


 舞いに、歌いに、込めた多重詠唱による高等魔術の待機発動。連続起動。

 ブレスの初動は、その主へと牙をむき。防ぎ留めんとする後続の息吹は無辺の彼方へ歪められ。さらに反射されたブレスの後を追うように、無拍子で迫った銀の姫が振るう刀が、竜の前足を両断する。


 さらにその直後、飛翔した私の進化した” 斧槍術-天翔”に、漆黒のハルバードの力をのせ。

 風巻く轟音。千切れ飛ぶ、もう片方の前足。


 たまらず上空へと逃げようと暴れる竜。暗黒の戒めに逆らい、魔力の限り天を目指すその姿に


「アメティスタの自信作なんですよ? 鋼糸展開-縛」


 生産に特化した副統括アメティスタ。”☆7 着想具現”で設計し、惜しみなく希少金属をつぎ込んだ、新たな紗雪専用武装。無限の長さへと延び、念動と最上級古代魔導人形の演算能力を駆使くして展開される、複雑怪奇な鋼糸の結界。

 囚われ、完全に身動きを封じられた、夜天の主たる竜に、最後の一言が告げられる。


「特性付与-斬」


 胸元でそっと閉じられた紗雪の手。

 斬撃の結界と化した、鋼糸の檻が、閉じる。

 夜の天を統べる王者たる竜の写し身が、煌く無数の輝きに、散った。



【エリアアナウンス:モンスターラッシュ 全ての敵の撃破完遂。おめでとうございます】


 ちょうど北の鳳も、うちの子達が無事撃破してくれたようですね。


 手元に表示された特別ボーナス含む、20億ポイント。

 そして、わずかづつとはいえ、これまで入手の可能性すら見つかっていなかった、装備強化素材の数々。

 完璧といってよい結果でしょう。そして、この一連のイベントのおかげで、私たち自身。そして、集団としても大きな力を手にすることが叶いました。


 静かな月明かりに照らされる、白亜の城壁を背に。

 微笑む、愛しの銀の姫と、優しき少女人形。


 彼女達と共に、私はこのSteps to Elysium Onlineの世界で、どこまで羽ばたいてゆけるのでしょうね。


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