74.3章-第18話 ”領都到着”
本日から1日2話投稿(7:30, 22:10の2回)に変更させていただきます。
どうやら最奥の領域の主の再出現も抑制できている事を確認し、私達からすると来た道を逆走。帝国西側、辺境伯領方面に騎士団長シャーリィさん達とともに戻る事3日。ダンジョンの開通完了を後続の帝国軍へと魔導具で伝達をした後、辺境伯領とも通信により状況を確認。黒い兵士達の攻勢は激しいものの、帝国西部内の援軍の助勢もあって持ちこたえていることを確認。
領都までの道中の状況調査も兼ね、そのまま東からの先発隊ともども馬車で領都まで移動する事さらに5日。
領都にたどり着いたのは、8月一の巡りも終わりに差し掛かろうかという、現実8月5日、内部サービス開始から153日目のことでした。
道中、シュブ=ニグラスの断片の一連の戦闘や儀式で手出しできなかった事を悔やんで、綾さんがルナリスに稽古をつけてくれていました。現実でも何やら本格的な古武術の流派の師範代を務めているらしい綾さん。流派と言いますか、舞いを基礎としたルナリスでは根本こそ違えども、刀の扱いという点においては共通するものがあると。
この世界で師事していたといっても、受けられる稽古の密度はさほどでもなかったルナリス。アレイスター王城での師匠方とは違った観点からの教えに、得るものは非常に大きかったようです。
後半から、綾さんの教えの合間に、浮遊する2本の剣も、ルナリスに稽古をつけ始めていたのが印象的でした。どうも2本の剣はこの稽古を、今後も毎日続ける気満々のようです。むしろこの機会を待っていた雰囲気までありますね?
問題は何と言っても、無限かと思う程に”彷徨いの樹海”から湧き出し続けているという敵兵達。彼らはただ、真っ黒としか言いようがない。鎧も、武装も、兜から覗く体があるであろう空洞もすべてが黒。
倒すとダンジョンのモンスターと同じく靄となって消えてしまう。解体や狩猟系スキルなどを有していても、フィールドのモンスターの仕様である、死体が残るという状況は発生せず。一様に、ドロップアイテムだけを残して消えてしまう。
そんな敵の兵士達は、冥府の洞窟から領都へ向かうそこかしこにあふれかえっていました。
道中の村や町は破壊の限りを尽くされ、ただただ、煙を上げるばかり。不幸中の幸いは避難がおそらく間に合ったのであろう事か。また、空間拡張のポーチもあるここSEOの世界にあっては、あらかたの生活用品や家財も持ち出せたはずとは、騎士団長の言。
あくまで遭遇戦にすぎない事もあり、先発隊1レイドと、私達1レイド、合計48人にかかれば、さしたる問題でもない相手ではあった。
しかし、領都を囲む敵軍の規模と言ったら。
中央に池を擁し、小高い丘の上に設けられた領都。築かれた城壁こそ破られていないものの、十重二十重に周辺を囲む敵軍の規模は圧倒的。
航空戦力が見当たらないのをよい事に、プレイヤー達のハウジングエリアに隠れてもらい。視認すら困難な空高くへ私達が連れて行き、運ばなければ、この人数では領都の包囲を突破する事もままならなかったことでしょう。
なお、ハウジングエリアですが、権限を持つメンバーが誰かひとりでも、外界を移動していれば、そのメンバーの所に扉を開くことは可能です。全員が避難してしまうと、元居た場所にしか扉が開けなくなるので、移動の際はハウジングエリアあたり最低でも一人は、どうしても地道に移動が必要ですね。
――閑話休題
「援軍本陣の第1陣はあと2日で到達の予定です。他隊は状況に応じ、冥府の洞窟出口周辺で集結、順次進軍を開始します」
「ミゼルクラス卿、この度の援軍派兵、直々の指揮に先発隊としてのご助勢、誠にかたじけない」
「皇帝陛下からの勅命にございますれば」
辺境伯と帝国騎士団長の会談の場に、なぜ私達が同席しているのでしょうね……? ちなみに、ミゼルクラスというのは、騎士団長シャーリィさんの家名です。
綾さんはまあ、シャーリィさんのお付きのような立場になっているようですので、まあ、いいとして。他のプレイヤーは皆さん、別室で待機していますよ。
「物資等は先ほどの空間拡張のポーチに。後続軍も同様に、支援物資も伴っています」
そうそう、後続軍の進軍の速さですが、空間拡張のポーチを活用する事で、輜重隊の負担が大幅に軽減されること。魔術やレベルによる身体能力の増強。それぞれの要素が加わり、現実とは全く異なる様相、行軍速度が実現されているのですよね。それであっても、遥か北回りは遠いという事ですが。
現実であればそれこそ、馬車と徒歩移動前提では、半年どころか1年単位の計画になりかねない広大さです。
あまり比較に意味はないかもしれませんが、ミドガ帝国の領土だけで、ロシア連邦よりも面積として広いくらい。と言えば何となくの規模間の指標になるでしょうか。自動車等がない代わりに魔術に、ゴーレム、多種多様な別技術がありますので、一概には何とも言いづらいですが。
そういえば、生産イベントの方で、ゴーレム技術に傾倒したプレイヤーが戦車や飛行機の再現を試みていたとか。戦力面で見ると一概に強いかというと……という評価のようですが、いろいろな技術交流が生まれているようですね。
「敵軍の規模はいかほどで」
「そこが問題でしてな……、通信でも都度報告は帝都へ上げておりましたが、無尽蔵。としか表現ができない状況です。包囲している軍勢を殲滅したとて、翌日には元の数に戻っている。直接の出現場所は”彷徨いの樹海”。この領都は十全に守ることができておりますが、周辺町村については、惨憺たる有様です。幸い避難も間に合い、人的被害は最小限に抑えられておりますが」
「敵軍は我々と同じように、ダンジョン内部に進軍経路を構築していると?」
「それであれば、2か月もすれば、小領域の抑制が効かなくなり、分断が期待できます。が、調査に向かわせた部隊が持ち帰りましたのが」
辺境伯が取り出して見せたのは、黒く染まった宝珠。
「解析させた結果、領域の主の出現を抑制する”抑制の宝珠”に類似しているそうです。持ち帰った部隊の証言と合わせると、どうもこの宝珠こそが、あの兵士たちを生み出している元凶のようなのです。小領域に満ちる魔力なり、なんらかの力を吸収。ダンジョンがモンスターを生み出すように、黒い兵士たちを生み出していると」
「この場に在るこちらは問題ないので?」
「調査の結果では、この宝珠が機能するのはダンジョン内部だけ、とされています」
いわゆるファンタジー作品に在るダンジョンコアみたいなものですかね? それを使って、既存のダンジョンの小領域を乗っ取って、エネルギーを奪い取ってあの兵士たちを生み出している?
「なるほど。では援軍の到着次第、領都防衛、周辺地域の開放。彷徨いの樹海内部へ突入し、これらの回収または破壊を試みることになりますね」
「ええ、大方針としてはそのように考えております」
と、大筋のすり合わせが終わったところで、辺境伯の視線が私達に。
「ナオ殿、ルナリス殿、紗雪殿。そしてこの場にはお呼びできなかったが、麾下の魔導人形の方々。この度の助力、改めて御礼申す。貴殿らクラン”悠久の楽園”の力なくば、”冥府の洞窟”の開通は無しえなかったと、報告を受けている。謝礼は別途、お渡しするとともに、指名依頼に関する報告は冒険者ギルドへすでに出させていただいている」
「過分なお言葉、感謝申し上げます」
「いったんは依頼はここで完了となる。が、今後の作戦において、また力添えを頼みたい可能性がある。願わくば今しばし、この領都にとどまってはいただけないだろうか。宿泊は当家の屋敷内にご用意する。有事の最中故、もてなしも満足にできぬが……」
連絡が取れる場所に……という意味もありそうですから、逗留する場所は受け入れた方がよさそうですかね。
「お心遣い感謝いたします。ご存じの通り、専用領域も有しております。お声がけを賜れるよう、お言葉に甘えさせていただくとともに、お貸しいただくお部屋に常に連絡が取れる者を配置するよういたします。しかしながら、お部屋は1室で十分にございます」
魔導人形の子達の誰かしらに交代で常駐してもらう事にしましょう。
「かたじけない。ではそのように。それと、”冥府の洞窟”最奥での出来事、その詳細を別途伺いたい。分析官他、同席もさせたいがよろしいか」
「勿論でございます」
と、ここで、クエスト完了が来ましたか。
【サーバーアナウンス:☆8 禁忌級クエスト 「供犠姫-策謀阻止」 をプレイヤー「ナオ」がクリアしました】
【個人アナウンス:☆8 禁忌級クエスト 「供犠姫#4-策謀阻止-策謀の胎動」 をクリアしました……評価算定中】
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クエスト名:供犠姫#4-策謀阻止-策謀の胎動
ランク:☆8 禁忌級
<評価>
総合評価:☆10
<評価内訳>
☆10:援軍を求めて – 冥府の洞窟に東西ミドガ帝国をつなぐ経路を確立した
☆10:援軍の先触れ - 帝国騎士団長シャーリィ並びに同軍勢が辺境伯領領都へ、無傷で到着した
☆10-:策謀の阻止 – XXXをXXXする計画を部分的に阻止した。顕現した邪霊を撃退した
<達成報酬>
EXP、スキルEXP
アイテム等:別途辺境伯家、家令から、お受け取りください
アイテム等:別途冒険者ギルドにて、お受け取りください
MC:0 GOLD:25億
【確認】
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「そなたらはアンブロシウス辺境伯の依頼の元、動かれた扱いとなっている故な。こちらから直接の褒章は出せない事、了承願いたい」
「当然の事と認識しております」
「辺境伯殿からはもちろん、私からもそなたらの武勲については、しっかりと皇帝陛下へ報告申し上げる故、安心してくれ」
いえ……そこは別にいいのですが……とも言えず。ありがたくシャーリィさんの気遣いは受け取るのでした。




