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33.2章-第6話 ”ダンジョン-試練の間-後半 #1/4”

 オークション会場から戻った晩、定宿と化しているスイートルームの、ふかふかのベッドの上。

 ルナリスと抱き合いながら、ゆっくりと、リアルでのことも含め、全てをきちんと話しました。


 リアルの事はどうしても天界としか理解はしてもらえませんでしたが……Steps to Elysium Onlineの開発元であり、運営基盤の存在する世界、という意味では間違いとは言い切れないので、そこは説明はしたうえで、言葉はそのままに。


 彼女は時に興味深そうに、時にはらはらしながら、特に私の身体がおそらく壊滅的である事、に対しては 、私の魂魄魔術でなら……!」とか、「高位司祭様……いえ、枢機卿様をさらいましてでも」 と、今にも行動に移しそうな危うさがあったので、創世神様が手ずから蘇生をしてくださっている最中で、そのおかげで今こうして元気にいる事。その代わりにお仕事を受けている事も話しました。


 中途半端に、ゲームとリアルと、線を引いていた今までと比べ、なんだかしっくり来たといいますか。

 どこか、ルナリスを都合よく扱っている、そんな幻の罪悪感がようやくすっと消えた気がします……。


 そして彼女と語らう中で、改めて、あの2年の体験を間に挟んでも、一切あせないどころかより悪化した、死の瞬間の恐怖と喪失感。

 それがあまりに重く、サユキさんに心を癒してもらっていなければ、あのまま自分は、潰れて、下手をすればそれこそ魂の死を迎えていたのだと、深く実感し。彼女に会いたいという思いも、改めて自覚しました。

 それももちろん、素直に白状しましたら……。


「わたくしは……元で、仮もよいところとはいえ、王族……ですよ? たかだか2人の妻がナオ様を支えるという……お話。むしろ当たり前……です。まだお会いもしていないので……正妻をどちらが務めるか……は、お会いして後に。出会いはあと……ですが、関係性は今は……1歩も2歩もわたくしが、リード……です」


 ええ、私よりもよほど、現実に即してお考えになっていました。

 最後に、ふんすと、こぶしを握り締める彼女の、それはもう愛らしい事ときたら……。



 すべてをきちんとさらけ出して、話し合い、仲直り……とは違いますね。絆をさらに深め、慈しみあった次の朝。


「ますます、大会は上位を目指さなければならなくなりました」


 こくり


 そうなのです。オークション落札直後のアナウンス。

 あの結果、更新された交換報酬リストを確認しましたら、ずらりと、「古代魔導人形」に関するアイテムが……。

 イベント報酬リストが、プレイヤーごとの状況で変わるって、いいのですか? それ……。


 下手すると私に見えていない潜在的な報酬アイテムとか、山ほどありそうですね……。まさかこんなところにまで、「特別」が仕込まれているだなんて思いませんよ……。

 情報交換ができるプレイヤーが周りにいないのがこういう時は痛いですね。あ……せっかく有料会員登録をしたSEO情報サイト、ほとんど見ていませんでした……。


 で、その中でも最重要と目されるのが”古代魔導人形の核”これは絶対に確保せねばならないでしょう。

 オークションの言葉通り、現行技術の物では、修復も作成もできないと思うべきでしょうね。

 これ以外にも、準必須と思われるものが多数。

 というわけで……。


  「より確実を期すためにも、やはり大会前までに、試練の間を踏破します。私の側の課題はあまり解決できていませんが……結局ルナリスに甘えることになりますけれども、オークション前にもらった提言通り、私も覚悟を決めます」


 彼女とまとめた、課題リストの内、本当にどうしようもないのは

 天使⇒堕天使に強制的に切り替えることになっていた

 ◎全域攻撃を持つ相手 (速度で範囲外に避けるが許されない相手。低耐久、低HPで、回復以前に即死する)

 これなのです。



 幻影顕現へ切り替えて、攻撃をすかす。

 顕現そのものを解除して回避する。

 こうした事もこれまで試しましたが、敵の行動パターンが変わったり、打ち切らせたかった攻撃を中断されたりと、行動パターンの変化を招き。逆にルナリスの危険が跳ね上がる。という状況に陥ったのですよね……。

 SEOのあらゆる存在は高度なAIが組み込まれているので、仮に1回目が通じても、2度目にはたいてい学習されています。それをブラフに使ったりも逆にできますた。



 が、これだって、私の特殊性。そう、本体がルナリスとともに移動し、”その場“に常にある封印体”不朽の束縛”である事を考慮に入れれば。もう一つ、取れる手段はあるのです。

 ええ、ゲーム思考を避けると今一度自分を戒めましたが、ゲームゆえの利点を放棄する必要はありませんでしょう?

 死んでも死なないのはプレイヤー共通。彼らはリスポーン地点は規定の場所。が……私は? ええ。ルナリスの元に、常にリスポーンするのです。


「天使モードを主軸に、90層まで、一定回数の転身以内で進める事。その上で、王手がかけられると判断すれば、リスポーン、つまり、顕現体で死んで、復活する前提での進行を選択肢に入れます」


 こくり

 初め猛烈に反対されましたが、期日も踏まえればこれしかないと、最終的に彼女も納得済みです。


「この場合、ルナリスも負担が増えます。天使状態の火力が対ボスで不足しがちなのは変わりませんし、戦闘時間が延びれば、受ける傷も増えます」


 それとあまり頻繁にやれば、デスペナの20%経験値ダウンも積み重なります。

 MCでデスペナを消せるみたいなシステムはありませんからね。


「まずは早急に、ルナリスのスキル統合を目指します。そこで空いたスロットに魔術攻撃系のスキルを追加。その後、本格的な攻略を再開。具体的には期日3日前をデッドラインと置いて、踏破を目指します」


 ゲーム内時間で、本日がサービス開始から75日目。大会初日が101日目。

 97日目、22日後までの踏破完了を目指すわけですね。残り3日は予備です。


「過度の疲労は溜めないように気を付けますが、本格的な踏破チャレンジは1日1回しかできないにしても、その後も追加で1回。1回が強制6時間経過になりますので日に2回12時間をあてる。全体的なスキルレベル上昇は1日でも早く達成できるように努力しましょう」

「はい」


 方針が決まればさあ、いよいよ本格踏破に向けて再開です!

 緩く肩にかけられ、胸下で優しくリボン結びされた”☆7飛翔の羽衣”をふんわりなびかせるルナリスを、優しく抱きしめてから、外へと繰り出したのでした。




 それから内部時間16日間はスキルレベリングに重点を置きつつの攻略。サービス開始91日目、PVP大会の日まであと10日。




 カン カン カカン カン カカカン

 軽妙な拍子とともに打ち合わされる、刀と剣。

 空を舞う銀の姫が、打ち鳴らす音。


 空を駆け、襲い来る、銀の剣の群れは終わることがない。

 次々と、一撃を見舞い、駆け抜ける剣たち。

 1本1本が意思を持ち、突き、払い、くるりと舞い切りつける。


 その全てを、空を飛び、瞬間的に形成される足場を蹴り

 ひらりひらりと、虹色に輝く銀の髪と、純白の透けるドレスが舞い踊る。


 冴えわたる歌声の纏う月魔術に惑わされ、彼方へ飛び行く剣の銀光

 幻覚の供犠姫の姿に魅せられ、虚空に躍りかかる剣の群れ


 空は一面、ルナリスの舞の舞台となっていた。

 もはやただただ幻想的、思わず、空を征く剣に融炎を叩き込むことも忘れ、魅入ってしまいそう。


 75階層で出会った敵は”☆6 魔剣のゴーレム”と、簡易鑑定には示されていた。

 その姿は一見、甲冑をまとい、盾と剣を構えた正統派騎士。

 しかし、その体も武具もすべてが、統一された規格の、無数の銀の剣で構成されていたのです。

 石畳がどこまでも広がり、夜天に満月が輝くフィールドへと変遷を遂げるとともに、その剣が一斉にばらけ、空を舞った。

 さながら戦闘機の編隊飛行のよう。



 すでに戦闘開始から間もなく1時間。

 美しい刀の舞を、剣達を相手に繰り広げるルナリスは、ただただ神秘的で美しく。

 疲労の欠片も見せてはいませんが、身体衰弱の呪いが常時かかっている身。瞬間再生が支えているといっても、これ以上長引いてほしくもありません。

 しかしどれだけ観察しても、核となる統率者、中心となる剣らしきものも見当たらず。

 やむなく、1本1本、同じく空を駆け、融炎でもって溶かし落としているわけですが……。



 キーーーン


 飛来する剣の連打を舞いかわし、猛烈な回転とともに一際強く打ち付けられた剣を、受け、流し

 清冽な金鳴りが美しく響き渡ったその時。



 すべての空駆ける銀の剣の動きが止まりました

 何が起きてもよいようにと、舞い踊り続けるルナリスの傍まで翼をなびかせ飛び寄る視線の先。


 溶かし、破壊した剣の分でしょうか、欠損を生じさせながらも、再び騎士の姿へと寄り集まる”剣のゴーレム”


 低く、深い声が、響き渡ります


「見事。実に見事。良き剣舞であった……。娘よ、名は」


 戦意をもはや感じない問いかけに、舞い踊るをやめ、ゆるりと地に降り


「ルナリス……と申します」


 深く、頷いて見せる、剣のゴーレム。

 姿がほどけるように、その身を構成する剣が次々姿を消し。

 月光に照らされる中、たった二振りの、銀色に冴え冴えを光る剣が浮かび、残されたのです。

 すっと、刃を下に、剣の腹を向け、ルナリスの前に差し出される2本の剣。

 ルナリスが手を差し伸べると、その手には、剣が2本交差する意匠が施された1つのブローチが残されていました。



「ナオ……様……いろいろと変化が。スキル統合先が複数……それと職業が」


 意思伝達越しにも困惑が伝わってきます。


「今日はここまでにして、戻ってしっかり確認しましょうか」

「はい……できましたら」


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