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3.第3話 ”キャラクターメイク #2/3”

 つ……疲れた。

 いやもうそれ以外、何も出てきません。


 “運命値”50以上を割り振ったプレイヤーへの、適性検査という名の質疑タイムらしいです。

 本当に一人一人、カスタムメイドの”特別”を提供するために必要なことなのだそう。

 この質疑の結果が今後のゲームライフを左右すると意識すれば、おざなりにするなどあり得るはずもなく。

 全力全開、恥も外聞も捨てて挑んだ結果……憔悴しきって、倒れそうになる私が完成しました。


 サユキさんに、精魂全て吸い尽くされた……もう、私、お嫁にいけない……ヨヨヨ。

 あ、あ、そこでお顔を超至近距離に近づけない。甘い吐息が感じられちゃうから!




 サユキさんの特上の笑顔と、途中で何度も淹れてくれた紅茶にハーブティー、大変おいしい手作り風クッキー。

 はい、すべて最高でした。それは良いのですよ?

 サユキさんがにこやかに手を広げると、何もなかった空間に、温かな湯気を立てるティーセットを乗せた、木のぬくもりを感じるカントリー調のダイニングセットが現れ。しかも、現実とたぶん、そん色ない気がする五感でそれを楽しめる。

 最高すぎます。



 こんな美少女メイドさんとのティータイム、現実でだって、むしろ現実でこそ、買えやしません。



 ですが。ですがね?



 さすがに8時間に及ぶノンストップの質問攻めは、もはや一種の拷問と呼べるのではないのでしょうか。

 目の焦点が合っていない自覚がありますよ、私。



 初めはいわゆるゲームにおける趣味嗜好や、得意/不得意、武術経験の有無等々、まあ、聞かれるだろうなといった内容から始まっていました。

 それがそのうち、


「もしも、理想のキャラクターの姿を現実に持ち込めるなら、生まれ変わりたいですか」「はい、もちろん」

 それはそうでし

ょう。記憶があやふやで多分、ですが。連れ添う人もなく、平々凡々、悪くはないが、良くもない、やせ型の日本の企業戦士とは名ばかりに社畜。一山お幾らの存在から、理想の姿への転身なんて、男女問わず、大多数が夢見るでしょうとも。


「水着、浴衣、ナースにドレス、様々な衣服にコスチューム、選ぶなら?」

「ドレス一択。あ、でも、サユキさんのメイド姿は至高です。誰がどんな思いでその装いをしてくれているか、大切だと認識を改めました」

「んー? あら、あらあら。うふふ、本心から、そうですか♪」


「男性、女性、中性、はたまたそれ以外。なるなら?」

「い、以外って……え? 選ぶなら女性、かな? 綺麗なドレスを着て、可愛いや素敵に囲まれて生きたいですし。でも、お付き合いするなら絶対に女性一択。男性とあれやこれやなんて絶対に嫌。という意味では、私は男性だった……? でも、それもピンとこないし。うーん?」


 とか

 4時間を過ぎた頃には意識ももうろうとし。理性という名の思考のストッパーも外れていっていましたね。


「サユキをお膝の上に抱きかかえて、髪をすんすん、嗅ぎたいですか?」

「はい」


「あらあら、髪フェチさん? それとも匂いフェチさん?」

「え、いや……ロングの美しい御髪は至上でありまして」


「好きな髪の色は?」

「銀髪。うっすらと紫がかっていたり、神秘的な色味が加わっていると、なお至高」


「お淑やかなお嬢様タイプ、距離感の近い気さくなタイプ、一緒にいるなら?」

「前者」


「依存するのと依存されるの、どちらが好き?」

「え、なに、その二択。される方?」


「性的に。いじめるのと、いじめられるの、どちらが好き?」

「え、だからなにその……ええ、まじめにわからない……」


 だんだん思考機能が停止する中に差し込まれる、危ない質問の数々。


「では、失礼して」


 気が付けば、なぜかサユキさんを後ろから抱きかかえている私。


「むぅ、それ以上はしてくれませんか、そうですか」


 何をです……?

 大変柔らかく、温かな体温がそれはもう……。理性よ、がんばれ。

 サユキさん? お膝に乗った状態で、もぞもぞはやめてください? ね?


 などと、思い返すも赤面もののシーンを繰り広げる羽目に陥っていたわけなのです。



「あの、これ本当に意味があったのでしょうか……?」

「ええ、もちろんですとも! ナオさんの全てを、赤裸々に、それはもう丸裸に、サユキは理解したのですよ!」


 んー趣旨、あっていましたかね……? いえ、まあ、サユキさんが幸せそうなので、おっけーですね。



「お疲れと思います。また、現在現実時刻20時です。キャラクタークリエイトの続きは明日にして、お夕飯でもいかがです? 通常のプレイヤーさんはアーリーアクセス中1日8時間までのログインしかできませんが、ナオさんはログインの制限撤廃が許可されています。公平性のため、ゲームに関する事は制限されますが、この空間で自由に私と過ごしていただけますよ♪」


 そうでした。私はもう、ログアウトして食事をとる身体も、まともにないのでしたね。

 それに、この質疑の結果を反映したランダム? の結果確定にも、きっと時間がかかるのでしょう。ここはサユキさんのお誘いに乗るのです。


 外では栄養剤? 生命維持の何か? で、なんやかやしてくれていると信じましょう。

 決してログアウトして、様子を確認するのが怖いわけではないのですよ? はい。


 何も動きのない病室で、モザイクのかかった自分の様子をひたすら眺めるという、大変に心を病みそうな状況ですからね……。あのモザイクが外れれば、私の性別も特定できるかな……他にも虫食いのように欠けている記憶ですが、性別は自己のアイデンティティーにもつながりますから気になりますよね?


 公平性という意味では、あの謎の、体感2年に及ぶ、濃密かつ高度な訓練時間はよかったのかな……と、軽く罪悪感を覚えますが……別に悪いことをしたわけではありませんものね。学生時代にスポーツや武術をしたことが歩かないか、そういう違いの一種だと思う事にしましょう。



「ゲームのことに触れられない時間は、こうしてサユキと過ごしましょうね。こう見えても私たちナビAIは、カウンセリングをはじめ心理療法や医療に関する機能も、セットされているのですよ。すべてはプレイヤーさんの良きナビゲーターたるため、です♪」




 用意された、大変心温まる、どこか懐かしさを覚えるハンバーグに舌鼓を打ち。

 いつの間にか用意されていた、こじんまりとしたおうちの中、ダブルサイズのベッドで、私はサユキさんと床を共にするのでした。


 ……うん。

 なんで……?


 やましい事は、かけらもありませんでしたよ?

 ちょーっと、気が付いたら、ふわふわさらさらの御髪に指を通しながら、すやすや眠るサユキさんの睫毛長いなー、なんて、見蕩れていただけですとも。



 この夜。確かなぬくもりを感じ、癒される中。


 この半月の暗闇の中、無限ともいえる魂の牢獄の中、そうであった。

 自分の悲鳴に、もはやありもしない背筋をのけぞらせ、意識をたたき起こされる。

 そんな、こともなく。


 深い、深い、眠りを。

 ただ、静かに甘受することができたのでした。




 ◇  ◇  ◇



 ごしごし。

 じー。


 ごしごし。


「にゃははー。これはまた」


 明くる朝。

 さあ、いよいよ私の晴れやかなる旅路を彩る、アバターの在りようが決まるぞ。と、サユキさんにお願いしてキャラクタークリエイトを再開。

 したのですが……。


 なんでしょうね、ええ、端的に言って……。

 特級呪物?

 というか、まんま、物。

 冗談ではなく。そこにあるべき、『種族』の表記とかすらないのですよ。



 ###【封印体】###

 名称    :不朽の束縛

 種別    :装飾品

 レアリティー :☆8 禁忌級

 形状    :チョーカー

 Lv     :10


 消費UP:0

 残りUP :0


 ステータス傾向値

 MP   :20 (消費UP=装飾1に内包)

 他ステータス傾向値消滅

 ############



 ほらね?


 ベーコンに、甘いスクランブルエッグ、たっぷりバターのトーストでいただいた、朝食の記憶も冷めやらぬ、木目を生かした机の上。

 不釣り合いに仰々しい、漆黒の宝石箱の中に収められた、破滅的な美をたたえた1つのチョーカー。

 かつて、最高額で落札されたとの史実に残るピンクダイヤモンドを彷彿とさせつつ、さらに、怪しい魅力を添えるカボションカットを施された、宝石。

 装着者自身を咎める内向きのとげを生やす金の茨と、優しくそのとげを包みからめとる銀の茨のせめぎあい。


 続く表記を見れば、いかにもゲーム的な記述がその実態を詳らかに示します。



 ###【封印体】###

<装備>

 装飾1:☆7 Lock:魔核/宝石-魔術発動体 UP5,000

 ※ピンクダイヤモンド/60ct/オーバルミックスカット+コンケーブカット (約2cm×3cm)

 ※魔力保有上限:MP傾向値20 相当

 装飾2:☆5 Lock:茨の首飾り (神銀/ミスリル)UP500

 装飾3:★6 Lock:茨の首飾り (呪われた神金/オリハルコン)UP-1,000

 装飾4:空き

 装飾5:空き

 ※他装備スロット消滅

 ############



「☆はメリットを。★はデメリットを示し、レアリティーに応じたUPの消費と還元(追加獲得)がされていますよ。しかもしかも、☆7は伝説級、Legendaryですね! ☆7以上は初期では運命値のランダム要素でしか得られません!」


 あ、はい。

 必死に明るく説明してくれるサユキさん。笑顔が引きつっているのは気のせいですか? そうですか。


 いえね、これが、素直に装備品です、どうぞ。ということであれば、不穏な言葉に目をつむりつつ、高レアリティーにかなーり、有頂天になれたことかもしれません。

 ですが、繰り返しますが……これ、私のプレイヤー”キャラクター”らしいですよ?

 レア度☆7以上は純粋な性能で上というよりも、”特殊”という昨日のサユキさんの言葉に実感もててきました。


 うん。

 物。まごうことなき、アイテム、だよね……? 装飾品とかそういう。


 口を半開きにして、ジト目になる私を見かねてか。

「ほ、ほら。スキル、スキルを見てみましょう?」

 と、妖しくも禍々しい気配にちょっと腰が引けているように見えるサユキさんが促します。

「ソウデスネー」



 ###【封印体】###

<スキル>

 Slot1:☆8   Lock:統合スキル-二重性 (制限-顕現体) SLv1 UP10,000

 Slot2:★8   Lock:呪い-統合スキル-封印 SLv N/A UP-10,000

 Slot3:☆5   Lock:顕現 SLv1 UP500

 Slot4:☆6   Lock:高速再生SLv5 UP1,000

 Slot5:★5   Lock:呪い-MP自動回復停止 SLv N/A UP-500

 Slot6:★5   Lock:呪い:装着者-魔力(MP)吸収 SLv8 UP-500

 Slot7:★8   Lock:呪い:装着者-強制契約/眷属化 SLv8 UP-10,000

 Slot8:★8   Lock:呪い:装着者-身体虚弱 SLv8 UP-10,000

 Slot9:☆8   Lock:装着者-老化停止SLv N/A UP10,000

 Slot10:☆8  Lock:装着者-不死SLv N/A UP10,000


 ※SLv=スキルレベル

 ※N/A=無しを意味する。スキルレベルの増減がないスキル。

 ※☆8=禁忌級 ☆6、☆7、☆9の内、世界の禁忌に触れる物が全て☆8とまとめて評価される。このため☆8の中身は性能が千差万別となりうる。

 ############


 プレイヤーキャラクターはスキルを10個までセットできる。

 本来、入れ替えが可能だが、Lockとなっているスキルは入れ替え不可。


「すーー」


 すべてを受け入れるのです。ええ、これは自分の責任。すべてを決めたのは私です。

 スキルの詳細はこれから見るとして、つまるところ簡単に言えば……。


「持ち主から魔力(MP)を吸い尽くした上に、死ぬほど肉体を衰弱させつつ、意のままに操っておきながら、不老不死になったね、やったね! と、のたまう、特級呪物?」

「スキルの上では、不壊がありませんが、プレイヤーですから、事実上不壊でもありますね~」

「うん、救いがない」


 深呼吸一つ。深く吸ってー、吐いてー。

 よし、前向きに、前向きに。


「でも、考えようによっては……。ええ、ゲーム脳的に見れば。ぱっと見、強い、ですね。はまるパートナーの手に渡って、デメリット踏み倒して不老不死に。とか、まさにファンタジー小説の主人公……」

「の、装備品みたいですよね」

「それを言っちゃあ、おしまいよぅ」


 サユキさんの言葉に、思わずツッコミを入れてしまいます。


「そして不死は必ずしも祝福ではなく、呪いでもありうる。まさに“禁忌”という評価の通りです」

「確かに……。とまあ、それはさておき、肝心なのは”顕現”、ですよね」


 茶番はおしまい、と、特級呪物を前に一夜を共にして(健全)、すっかり夫婦感の増した(妄想)美少女サユキさんとの呼吸に従い。


「ですね」


 さて、この特級呪物(仮)な私の真実やいかに?


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