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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第2部 - 第8章

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203.8章 - 第18話 ”帝都防衛 - 開戦前 #1/2”

 ほんの18日前、スパイスの香りと共に圧倒的な生命力の奔流で私たちを迎えてくれた帝都の、赤みがかった石造りの建物は無残に崩れていた。色とりどりのモザイクで彩られた、南方の正門へと続く大通りも剥がれ、砕かれ、圧縮された地面がむきだしに露呈されている。


 そこら中に散乱する緑の触手、菌糸の寄り集まった塊。歪に膨れ上がった、人の体の部位の形をした残骸。

 地上へと戻り、皇帝広場を抜ける私たちを出迎えたのは、身体から緑の触手を伸ばし、痙攣しながら散乱しているマナコリスたちであったモノ……もう、紗雪に寄ってたかって肩に上り、スンスンと愛らしく鼻をひきつかせることもない。


 私たちを先導する純白の戦乙女風装束に身を包む、身長60㎝の小さな人形少女。真っ先に出迎えてくれたアクロイトを先頭に、周囲を固める48に上るうちの子達。

「皆は無事でしたね?」

「はい、欠員無し、損傷も極めて軽微です」

 私の問いかけに即座に応答を返すアクロイト。その言葉通り、周りを固める子達のドレスやドレスアーマーにも汚れすらついていない。もちろん皆もリスポーンできるのだけれど、そんな目には皆には極力あってほしくないので。


 未だ赤紫の妖しい光に満たされた帝都に冴え冴えと降り注ぐ青白い月光は、遮る物もなく、憩いの場であった自然豊かな皇帝広場を抜ける私たちを照らしている。


「結界はやはり消えてしまいましたね……」

「ナオ……様……」

 ぴったりと横に寄り添うルナリスが、私とそっと指を絡め合う。

 分かっていた。帝都中に張り巡らされた結界紋様を形成する水路はもう、空を照らすことなく、黒く沈んでいる。


「飲用水は、そういえばどうなったのでしょう? もう遅いとはいえ、新たに摂取させるもまずいですよね」

「魔法で生成した水を今は代用で使っているみたいですよ、うちの第2部隊の子達も水属性が使える子達は、今はそちらの支援に回っていますね」

 総勢720名。悠久の楽園防衛に残した100人を除いたうちの子達の総数。今なお帝都のそこかしこから聞こえる散発的な争いの音の元には彼女達もいる。



 帝都歌劇場が見えてきた。避難民の数はさらに膨れ上がり、正面に広がる美しく剪定された庭園のそこかしこに身を寄せ合う集団がいくつも見える。

 炊き出し……というには違和感があるのは仕方がないだろう。いくつもの扉が虚空に浮かび、人が出てきては場違いに良い匂いが漂う料理をふるまっている。生産やこのリアリティー溢れるSEOでの生活体験を主とし、アーカリア大陸に残っていたプレイヤー達の炊き出しでしょう。各自の領域に戻っては調理し、一斉にふるまう。治癒の心得や薬品の調合ができる者は負傷者の手当てを迅速にこなす。現実ではこうはいかない、なんとも合理的な救援方法。



「ご苦労だった」

「いえ……」

 ルナリスと紗雪の手をそっと握り、無傷の歌劇場を背に、出迎えてくれた黒赤ドレスアーマーのシャーリィさんの目を見て返す私。

 謝ってしまうのは……ダメだと2人に諭されましたから。


「ふふ、少しはましになったか。いや、ほんの数刻前を思えば、むしろ急成長か?」

 もっと自信をもって、2人を頼って、抱え込まないで。

 ゲームの中とはいえ、あまりにリアル。いえ、もはや魂という意味でももう一つの現実としか私には思えないSEOの中で、元社畜(記憶は薄れすぎて実感がもうあまりないけれど……)に無理を言わないで。という気持ちはまだあるけれど。

 結局どうできたか? と言われたら首は傾げるものの、ああできたのではないか、こうできたのではないか。同じ後悔を何度も繰り返してきた私……いい加減変わらないと。


 手指から伝わるすべすべとした温もり。魂核を介した確かな絆。

 今はただそれを信じて。


 一瞬振りかえり、空を覆う護りの結界の失せた、赤紫に染まる帝都をしっかりと目に焼き付け。


「外の様子は?」

「敵本隊の侵攻が早まっている。観測から予測される総数は約12万。2時間以内には到達するだろう。皇帝陛下のお力により、先鋒との交戦は終結。現状は城壁ごしのにらみ合いだ」

 大小約5千のモンスターの群れはあっという間に殲滅されたらしい。城壁への損傷も無きに等しい。

 皇帝陛下の戦う姿はわずかな伝令を除き、見る事はできなかったという。どんな戦いだったのか……まあ、もう少しで見ることになるか。


「帝都内部の鎮圧はもう間もなく完了する。被害は甚大と言うほかないがな……」

 ミ=ゴ変異体と化した事で、多くの政治中枢の高官や貴族を失い、軍勢もボロボロ。住民の喪失も5割を優に超える。

 主要施設を含め、帝都内部も壊滅的。完全に無傷であったのは、創世聖教帝都大聖堂、帝国大図書館、この帝都歌劇場位のものか。美しい純白の姿を見せつけていた帝城すら、尖塔がいくつも崩落し、そこかしこに大穴があけられている。

 それがこのたった6時間程度でミドガ帝国帝都が被った損失。


 長年仕組まれた侵攻計画とは言え、あまりに大きすぎる損害。そして今、トドメとばかりに迫る、人跡未踏の脅威地帯“竜の背骨山脈”から襲来する、十中八九ミ=ゴに操られたモンスターの群れ。挙句帝国を守護するはずであった軍勢までもが、その魔導兵器ごと敵に取り込まれているときた。


「此方の残存戦力はせいぜい1万。戦闘意志のある冒険者をかき集めた上で、な」

 あまりに少ない。城壁が無事とはいえ、魔導兵器の大半は汚染された岩塩触媒により使用不能。魔法もスキルもありのファンタジー世界とはいえ、それは敵も同じこと。それこそ竜の姿すら多数確認されている、むしろ絶望しかない戦力差。


「避難、しますか?」

「無理だな。来訪者の持つ領域への収容という進言もいくつか上がったが、住む土地そのものを失う以上、長い目で見れば意味がない。もちろん最後の最後となれば頼らせていただきたいが……」


 他プレイヤーの領域の広さはわかりませんが、悠久の楽園まで解放すれば、それこそ壊滅的被害を受けた帝都の全住民を収容する事もたやすいでしょう。それでも、確かに。シャーリィ騎士団長の言葉通り、それでは先がない。

 帝都が落ちるその時、東ミドガ帝国全域は瞬く間に蹂躙され尽くすだろう。そうなれば、他大陸にでも移住する他なくなる。魔導学園を擁し、古代魔導王国の技術研究も盛んだというフェリシテ連邦とて、最大の版図と勢力を誇る帝国亡き後に単独では到底、抗し切れまい。


 他のサーバーでは竜の背骨山脈から伸びた歪んだ樹木が大陸分断のきっかけとなり、黒い兵士達の軍勢によって全土が蹂躙された。このサーバーは、前者は“冥府の洞窟-ニベヘリィル“の儀式を止めたことで事なきを得た。後者はアレイスター王国という表向きにすぎなかったのかもしれないが、少なくとも主導者を失い、黒い兵士達を一度は退けた。


 しかし今。

 ミ=ゴによって操られた軍勢により、結局はこの001サーバーも同じ破滅の末路をたどるのか?

 アーカリア大陸は始まりの街、唯一ゲームらしいゲーム空間として存在するその領域を残し、邪神崇拝者が支配する暗黒の世界に落ちるのか?

 それがこの大陸の、Steps to Elysium Onlineにおける定め?


『自由』を謳うSEOがそんな一本道を引くとは思えない。それがどれほど無茶苦茶なに見えても。


「それとな、わずかに残っていた来訪者の冒険者たちが、こんなものを見つけた。主の一族がミ=ゴ変異体と化した商会を隠れ家にしていた、犯罪者に堕ちた来訪者が遺した物品だそうだ。突如湧いて出たところを討伐したそうで、綾とも相談したが、そのタイミングから見ても、ナオ殿達が地下で退けた連中そのものだったのではないかと推測している。地下水路でも奴らは何か、残していかなかったか?」

 見せられたのは……なんです? これ。ICチップとかそんな雰囲気を感じる、微細な魔法金属の刻印がびっしりと施された破片。

 あそこでキルした連中のリスポーン先がその、商会の建物内だったのでしょうね。


「えと、どう……でしょう。遺留品(ドロップアイテム)はまとめてお引き渡ししようと思っていたので、まだ中身を見ていなくて。紗雪、軽く見てもらえる?」

「はい、直ちに」


 さっとインベントリの中を精査してくれる紗雪。共有されていてよかった……ワイバーン戦の関係もあって、今日の分だけでもすでにわりと馬鹿にならない量のドロップアイテムがインベントリに放り込まれているので、新規取得順でソートするにしても私では、すぐには……。


「このあたりですね、土星猫とワイバーンの間辺り、黒い兵士のドロップはほとんどないみたいですから……プレイヤーらしからぬなんとも画一的なドロップ(遺留品)ですね。なんでしょう、わざと装備を統一しているせい? 品質も低いというか、店売りの量産品しかないですし、正直ごみの山……あ、これですかね?」

 と、さすが紗雪。すぐに精査を終え、実体化してくれたのは布製の小袋がいくつかと、シャーリィさんが見せてくれたのと似た破片が1個だけ。


「小袋の中身は薬品類ですね。で、肝心のこれは……」

「どれどれ?」


 ============

 ☆- 破損したアイテム

 詳細不明のアイテム。アーカリア大陸、聖国マリシアにおける魔導技術体系とは明らかにそぐわない。

 ※プレイヤー限定メッセージ:本アイテムの情報をDeus ex Machina Corp.へ共有しますか? Y/N

 ============


 レアリティー不明の破損アイテム、その上初めて見るメッセージが。


「勿論Yesで……いいですよね?」

 2人も躊躇なく頷いてくれたので、Yを意識して。


「不可思議」

 おや、聖女イリスも興味津々ですね。どのみち彼女はここに預けていくつもりでしたし。

 ん、アイテムの注釈が書き換わりました。


 ============

 ☆- 破損したアイテム

 詳細不明のアイテム。アーカリア大陸、聖国マリシアにおける魔導技術体系とは明らかにそぐわない。

 ※プレイヤー限定メッセージ:ご協力に感謝します。本アイテムはクエスト対象の住民(NPC)へ引き渡して構いません

 ============


 と、いう事らしいのでシャーリィさんに渡すと、

「協力、調査」

「そうですね、頼めますでしょうか?」

「承諾」

 私たちが引き渡した方の破片を渡すと、ゴスロリ聖女さんはそっと受け取り、私たちにペコリ。薄紫色の髪をふわふわと靡かせて、とことこ。劇場内へと小走りで……あぁぁ、転ぶ! ころんじゃうから。

 間一髪、同じくお辞儀をしていた研究員ヴェルスさんが大慌てで彼女を支え、そのまま一緒に中へ。

 早速いろいろと調べるのでしょう。


 私たちの方はといえば、それぞれの視界の中で確認するクエスト状況が進んでいました。



 ---☆8 禁忌級クエスト 「ユゴス コンコード(ユゴス協定)」 ※公開名称「アーカリア大陸の深淵」---

 ☆8 禁忌級クエスト #1 彷徨いの樹海 ミ=ゴの研究施設調査 : 済

 ☆8 禁忌級クエスト #2 進行中―帝都蠢動

 !! ☆8 禁忌級クエスト #3 進行待機中―彷徨いの樹海 闇に秘された囁き


 追加条件達成 (星の煌めきのティアラを復元)

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 ---プレイヤー共通:長期連続クエスト :☆10 - 「マナ簒奪の阻止」 ---

 ☆6 帝都蠢動 #1 ミ=ゴの影―侵蝕 :済

 ☆6 帝都蠢動 #2 地下水脈:!!済

 ☆6 帝都蠢動 #3 帝都防衛:進行中

 !! ☆8 暗躍する影

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