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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第2部 - 第8章

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199.8章 - 第14話 ”帝都地下特別水路 #3/5”

 敵が消滅した広間。堕天使の少女が中央の黒い球体に手を添えると、黒い靄のようなものが、天使、堕天使2つの身体から湧き上がり、すさまじい勢いで球体へと吸い込まれ始めた。

 その時間、僅か数秒程度。

 しかし彼女と繋がった、残された2人には共有された生命力、魔力、双方が途轍もない速さで減少し。

 また、愛する人のパーティーメンバーアイコンにとんでもない数のデバフアイコンが点灯するという形で異常が察せられた。


『ナオ……様……!』

『ナオさんの馬鹿!』


 思わず念話で叫ぶ2人だが、その声が届いている様子もなく、惚けたような表情で、目の焦点も合わない。


 銀の髪を虹色に輝かせる少女が悩む。ここで致命傷を負って自身が脱落してでも、愛する人を守る。それでよいのか?

 否。この後こそが本番、ただこの一瞬を守ってもダメ。

 瞬時に判断し、自身に取りうる次善の策として。

「狂愛の楔―慈愛」

 宣言と共に、互いの受ける異常と損傷を分け合い、再度同じ異常状態に陥る事への抵抗を増すエンゲージメントスキルの効果を発揮する。


 灰銀のツーサイドアップをなびかせる人形少女が、銀色の鎖を伸ばす。

 黒い球体に手を押し当てたままの堕天使を雁字搦めに巻き取り、引きはがす。

 幸い、吸着して離れないなどという事もなく、あっけなく迂闊な少女の身体は、すぽん、と野菜を引っこ抜くように引きはがされ、2人の元に横たえられる。


「アクロイト、アメティスタとサフィーロをもらいますよ……はい――はい、そちらは任せます。アメティスタ、サフィーロ、聞いていましたね。悠久の楽園経由でこちらへ、扉はドール体で開きます」

 耳元のイヤリングを介し、通信を行う人形少女。あっという間に手配を終え、虚空に開かれた扉を経由し、2人の少女人形が姿を現す。

 片や落ち着いたマーメイドラインのドレスに身を包んだ薄紫の髪の落ち着いた女性。片やゴシックドレス風メイド服の淡い金髪少女。

「まあ、まあ、またナオ様は……」

「奥方様を不安にさせすぎ、なの」

「はい。ちょっと今回はたっぷりお仕置きしますので、まずは容態の確認と、この後の探索に付き合ってください」

「「承知しました(なの)」」


 そんな僅か20秒もない間の出来事を後ろから眺めていたゴスロリ少女が一言。

「迂闊、粗忽?」

「さすがに擁護できませんです、はい。備えあっての行動かと思いましたが、はい」


 `なぜ触ったし`

 `え、マジで防護手段無しでタッチしたん?`

 `抜けてるナオ氏可愛い。でも2人を泣かせたのは減点`

 `ちゃんと叱られてもろて`

 `そもそも、スカウト/シーフ系無し編成でなぜ敵の拠点らしき場所に突入してる……`

 `いつの間にか探索系スキル生やしてたのかと思ったわ`



 ◇  ◇  ◇



「ん……あ、れ……」 「む、動けない?」

 もぞもぞ。動こうとしますが何でしょう、体中雁字搦め?

 なんだかすごく嫌なことがあったような。でもなぜか、すごくすっきりしていますよ?


「正座」

 おや? 紗雪の可愛らしい声が、むすっとした平坦な感じに。

「ナオさん?! せ・い・ざ!!」

 あ、これ超怒ってる。て、下を見たら私、銀の鎖でぐるぐる巻き!?

 大きなお胸が強調されてかなり、いやんな感じに。


 あ、でもエッチな縛り方はされていませんよ、残念。


「ナーオーさ~ん?」

「「あ、は、はい!」」

 と、とにかく言われるまま、もぞもぞと一生懸命動いて正座。はい、正座です! しましたよ!


「わかってます? あ、これ分かってませんね? はい、見る!」


 目の前の透明ウィンドウがビヨン!

 映し出されるのは編集された動画。1分もないシーンがリピート再生されます。

 あ、私がぺとっと、黒い宝珠を触ったら、ぶわーって、黒い靄が出て。あっという間に吸い込まれて。

 ひょいっと、大根を引っこ抜くみたいに紗雪の鎖に引っ張られて。て、これわざわざいつもの鋼糸じゃなくて、鎖にしてくれたんですね。傷つけないように配慮してくれる紗雪優しい。


 で、私は両方の身体ともデバフマシマシになったところをルナリスのエンゲージメントスキルで解除してもらって、なんとか事なきを得たと。


「とりあえず異常は見当たりませんわ」

「なんだか、すっきりしている感じです、なの」

「そうですね、なんだかすごく心地よいというか、嫌なのが抜けて行ったというか」

「解析でわかる限りでは、何かを吸収し、どこかへ転送する。という術式が組み込まれているようですわ。以前お伝えいただいた、何かを召喚するような術式は見当たりませんでした」

 アメティスタが早速スキルで調べてくれた情報を伝えてくれます。


「見た目は似ていますが、別物という事ですね」

「吸収、継続」

 そこにさらに、球体の傍で様々な魔導具を取り出して調べていた聖女イリスが結果を伝えてくれている……のでしょうけれども、言っている内容が分からないので研究員ヴェルスさんを見れば。


「接触時ほど急激なものではありませんが、今も緩やかに吸収効果が継続されています、はい」

「では、早急に離脱した方が良いのでは?」

 紗雪の問いかけにはしかし、ふるふるとゆっくりと、薄紫の髪を揺らし首を振る聖女イリス。


「無害。有益?」

「この黒い球体は特定のマナを吸収しているようなのです、はい。澱んだマナ。悪霊の源となり、悪感情や無念、死からも生み出されるそれを緩やかに吸収しているようなのです、はい。害になるものではないと思われ、むしろ人々の苛立ちや敵愾心、そうした騒乱の元を鎮める効果すら見込まれます、はい」


 さらに、上を見上げながらゴスロリ聖女ちゃんが、音叉が複数重なり合ったような魔導具を上空に掲げ。

「離脱、無意味」

 その魔導具の様子を見ながら、

「接触時ほど劇的ではありませんが、相当広範囲。天井の穴を介して、地上の帝都から吸収しているようなのです。もしかしますと、この地下水路全域を介して、こうした吸気施設を張り巡らせているかもしれません、はい」


 さらに聖女イリスが浮遊する円環がいくつも重なった、とてもお洒落な天球儀のような魔導具を今度は取り出し、魔力を込めると。

「南」

 一緒に道具をのぞき込んでいたヴェルスさんもじっくりと観察した後。

「吸収した澱んだマナは南へと転送されているようです、はい」

「南……と、いえば、彷徨いの樹海?」

「距離、曖昧。可能性、大」



 `それって、アーカリア大陸の「マナ簒奪の阻止」クエストのキーアイテムじゃない?`

 `聖国マリシアでも、装飾品として売られていたアイテムが実は、とかいろいろ発見されてる`

 `あぁ、あれな~。露店で売られてるアクセで、装備してると悪いマナを吸収してくれるってやつ。状態異常耐性も上がるから便利なんだけど、クエストで強制回収される`

 `001サーバーだと、アーカリア大陸は密売組織自体、聖国マリシアに移動したって思われてたけれど、まだ活動してたんだな~`

 `これ、他サーバーも同じ場所にあるんじゃない?`

 `東ミドガ帝国がまだ侵蝕されてないサーバーは、調べる価値あるね`

 `アーカリア残って活動してる勢が、どのサーバーもほとんどない件`



「「……じー」」

 あ、あ、視線が刺さる~。麗しの銀の姫と、愛くるしい人形姫のジト目が!

 ちょっと癖になりそう……ぽっ。

 なんて言っている場合じゃなくて。


「えと、ですね? ルナリス? 紗雪?」

「「じー……」」

 あ、あ、アメティスタもサフィーロも、すすす―って離れて行った。ずるい! じゃない、薄情者~。

 こら、カグラとリィナも尻尾を後ろ脚の間に挟んでじりじりと壁際に後退ってく。アクセサリーにいつも通り擬態しているセレスティアはともかく、アリアも空間上空をふよふよ気持ちよさそうに漂って我関せず。皆ひどい!


 なんて思考も2人に流れてしまい。ジト目がさらに、どよーん、じとーんって。

「ナオさぁん?」「ナオ……様」

「「反省してませんね!?」」


「あ、いえ、その」「迂闊すぎた行動は事実で、反省していてですね」

「ナオさん、いいですか? まずそもそもナオさんは頼らなさすぎるんです。何でも自分でやろうとしないでください、もっと人を頼ってください。私たちを頼ってください。折衝ごととか、対外的な接点はもちろんナオさんにお任せせざるを得ない部分は多いですけれど。私たちがいつも一緒にいるんです、傍にいるんです、常に繋がっているんです。なんでも危ない事は自分にっていう、その癖をまずは改めてください!」

「お心……に、抱えすぎるの……も、哀しい、です。もっと、わたくし……たちと、わかちあって……ください。頼りがい……も、嬉しいです。けれ……ど、一緒に背負いたい、です」


 鎖で縛られたまま正座する私の前にずずいっと腰に手を当て、可愛く拗ねたお顔で迫る2人。


「そうですよ。なんでも分かち合える、全てを分け合える関係にまでなっているんですよ? 少なくともSEOの中では」

「痛みも……苦しみ……も、もっと欲しい、です。ナオ……様、の、全てを」


「はい、いえ、もうその通りで」「でも、2人に……」

「でもも、だっても、ありません!」

「ナオ……様、だけが。大切、なのです」


 ぅ。そもそもこう、なんだかさっきのは違ってですね。なんだかすごく、気も楽になっていてですね? それは今もなわけでして。こうしている今もなんとなく、ふわふわしているというか。でも、すごく大切な事なのはわかるのでちゃんとしないといけなくて。


「まずは、救うものとそうでないものを線引きした事ですよね? それこそ気にする必要ありません。救えなかった。のではなく、一人を救った。そう考えるべきです」

「全て……を、救うなど、王にも不可能……です。まして、その王……すら、民を使い捨てるような……」

「あの子は救えたのでしょうか」「その場しのぎをしただけというか」

 氷漬けにして封印した。アフーム=ザーのお力を借りた特別な封印ですから、一定の効果はあると信じたいですが。


「その後を考えるのはナオさんの責任じゃないですよ。それにまあ、ここはSEOなんですから」

「救う手立て……は、ある……はず、です」

 そう。そうですよね、ここはあくまでゲームの中。その中での出来事なら……。


「まあ極端な話、蘇生薬の1個でも手に入れると言う手もありますし、悩みすぎない事です」

「ナオ……様。冷たいと……嫌われるかも、しれません……が。大切を、お間違い……にならないで、ください。あの子の……事は帝国、の……問題です。割り切って……難しい、と思います……が、お気持ちを分けて……ください」


「「……はい」」


 ひと段落ついたと見たのか。

「調査、完了。運搬、可能?」

 おや、ヴェルスさんが空間拡張されたカバンらしきものに大きな黒い宝珠を入れようとして、全く反応がないようで困っていますね。普通であれば入り口よりも大きくとも、すーっと吸い込まれるように入るはずですが。


「インベントリに入らないか見てみますね」

 怒られたばかりですからね、鎖を解いてもらったとはいえ、いきなり手を触れる事無く2人に確認を取って……。


「私がやります」

 あ、はい。紗雪に止められてしまいました。インベントリも共有されましたから、普通に2人にも使えるんですよね。

 そうして慎重に近寄って紗雪が、触れない程度の距離に手をかざすと。


「おや?」


【所有者登録済みのアイテムはインベントリに保管することができません】


 これはまたひどく懐かしい警告メッセージが。アレイスター王国宝物庫以来ですね。

「収納する権限が私たちにはないみたいです」


 `●綾:衛兵隊を向かわせるそうですので、探索を優先してください`


 おや、配信コメントに綾さんから。

「了解です」

 物理的に移動させてしまおうという事なのでしょうね。安全に動かせると良いのですが。

 それ以前に手が空いている人が足りるのか。


 まあ、それはお任せするとして。とりあえず私たちは奥の扉へと探索をつづける事になるのでした。


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