18.第18話 ” ダンジョン:彷徨いの樹海 #1/4”
歌が響く。
緩やかな調子に乗せて、銀の髪が舞い広がる。
指先まで神経の通った優美な舞いに、鉄扇”桜闇”が桜吹雪の幻想を舞い広げる。
舞踊に乗せた謡に込められた月魔術が、幽玄のはざまに惑わす。
ルナリスの戦闘法、舞刀術は、舞い・歌・月魔術・刀術の、複合武術、統合芸術だった。
静かに立つ姿は、腰に太刀を佩き、胸元に扇を隠す。
動に転じては左手に鉄扇を、右手に太刀を構える。
歌は月魔術の詠唱となり、持続的な幻惑効果を生み出す。それは時に姿を幾重にも重ね、相手の狙いをそらし。時にその姿を隠し。またある時は、在りもせぬ断崖への落下を錯覚させる。
舞う動きは回避、位置取り、そして相対するものの、拍子を崩す。
かくて生まれた隙に、太刀の一閃が差し込まれる。
幻惑を超えて身に迫る脅威は鉄扇で払い、打ち、逸らされる。
隠すべきを最小限のみ隠し、素肌のほとんどがうっすらと透けて見える。されど、直接の露出は、常の胸元から鎖骨にかけてと、動きに合わせ複雑に揺れ動くを除けばほぼ無い、純白の供犠姫のドレス。
あまりにも華やかな舞い踊る姿に、引き込まれ、そして粛々と命脈を絶たれる襲撃者たち。
装備品の効果の数々もまた、さらに彼女の完成された芸術に、幻想の厚みを加え、支え、増幅している。
さすがは”☆7 伝説級”と、納得する逸品ばかり。
不幸な事情が重なり、正当な王族として表に身をさらす機会はついぞなかった。王と、国最高峰の影の実力者たちが溺愛した姫。
その姿をこうして、親愛の情を交わし、並び立つべきものとして在れる幸せをただただ、今はかみしめる他ない。
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☆7 桜闇 ※鉄扇
形状:満開の桜が闇を払いのけるがごとく、満開の桜の螺鈿細工が施された鉄扇
主材質:アダマンタイト、夜虹貝 (夜の空にかかる虹から流れ落ちた光が、貝の形に凝集したとされる、希少素材)
基本性能:AGI+☆7, DEX+☆7, INT+☆5, MND+☆5
強化値:0
特性:不壊、幻影拡張
※幻影系統に属する魔術の効果を常時増幅する。また、舞踏に組み込む際、任意の情景を映し出す。
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☆7 朧月宮 ※太刀/鞘に飾太刀の設え
・太刀本体
形状:小ぶりな太刀
主材質:オリハルコン/神金、アダマンタイト、夜天竜の骨/血/牙
基本性能:AGI+☆7, DEX+☆7, STR+☆5, MND+☆5
強化値:0
特性:不壊、朧月影
※朧月影:月/影/闇に属する事象の効力を強化する
・鞘
形状:飾太刀の設えを成す
主材質:ミスリル/神銀、オリハルコン/神金、桜の古木、夜虹貝、夜天竜の革/鱗、アラクネの糸
基本性能:MP+☆7, CHR+☆7, DEX+☆5, MND+☆5
強化値:0
特性:不壊、再生強化
※再生強化:“所有者”の治癒力/再生能力を強化する
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☆7 供犠姫のドレスセット
形状:透け感の高い白布を数多重ね、形作られたドレス。着用者を、聖なる奉仕者として優しく神秘的に包み込む層と、略奪される供犠として戒め扇情的に彩る層からなる
主材質:雲竜の毛、アラクネ上位固有種の糸、妖精女王の鱗粉、夢魔の女王の髪、ミスリル/神銀、オリハルコン/神金
基本性能:MP/AGI/DEX/MND/CHR+☆7
強化値:0
特性:超速再生/任意再生、清浄化、認識操作、身捧ぐ姫
※任意再生:この装備の再生能力を一時的に停止することが可能
※認識操作:周囲に与える存在感を操作可能。低下させ隠密性を高めることも、上昇させ、注視効果を高めることも可能。
※身捧ぐ姫:”所有者:ルナリス”の意思により、以下の効果を常時発動(非装備状態を含む)
自身を捧げる対象を設定:ナオ (変更不可)
対象への思慕の情に比例し、自身のステータス上昇(全)
対象との接触において情動強化効果
“対象/対象と繋がりを有するもの”以外に対し、生命(HP)/魔力(MP)吸収:効果は距離に反比例
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呪いにより、身体能力への大幅な低下がもたらされている事を全く感じさせない、洗練された身のこなし。
もちろんただ茫然と眺めているわけにはいかない。
譲り受けた新しい2本1対の短剣。刺突短剣から変わり、アシンメトリーな両刃の、新しい武器。
全体的に翼を意識したデザイン。ナックルガードにはめ込まれた深紅の石を核とした魔術発動体の能力も兼ねたそれは、接触と同時に融炎魔術の発動起点となる。
時に切り裂き、時に突き刺し、その度に刃に触れた肉体は局所的な超高温に溶け、蒸発する。
首をなで斬りにすれば頸部を消し飛ばし、即死。
関節部に突き立てれば、関節部が消失し、四肢の欠損まで招く。
回避すれども、薄皮1枚でも触れれば、深く抉りとったように肉が消し飛ぶ。
そのひと振りは常に、致命の一撃となり、魔力飛行を用いた立体的な動きで体ごと遠心力を活かし、私の動きの全てを死の舞踏に昇華させる。
天使の身に宿した一芸特化に近いピーキーなビルドに、まさに合致した最高の相棒。思わず陶酔する。
新たな”感覚拡張”は従来の五感を超えた、育てばいづれ未来予知に近づかんとするかの如く、動きの最適化を支えてくれている。
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☆7 鳳凰翔舞
形状:左右の翼を意識した双短剣。ナックルガードには鳳凰の血が凝縮して生成された魔核が埋め込まれている
主材質:不死鳥鳳凰の羽根、血、爪、
基本性能:AGI+☆7, DEX+☆7, INT+☆5, MND+☆5
強化値:0
特性:超速再生、火炎無効、二翼一対、火炎系統強化、治療系効果増強、魔術発動体
※火炎無効:この短剣は火炎系統、高熱系統の影響を受けない
※二翼一対:この短剣は2本1対で装備されていなければ特性が発揮されない
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“彷徨いの樹海”に入りこんで早4日。ルナリスの放つ魅了に誘引され、ほとんど途切れることなく襲い掛かるモンスター達。
角の本数と立派さが格を決めるという猪型の魔物。
樹を足場に、高速立体機動で集団戦を仕掛けてくる鹿型の魔物。
霧、影、月光、種族別に特化した隠密能力を持ち、有機的な連携と高い知能で獲物を狩らんとする狼型の魔物。
糸で拘束型、切断型、様々な罠を張る巨大蜘蛛の魔物。
植物を操り、搦め手の魔術を交えてくる歪にねじくれた樹人形の魔物。
☆1~☆3、レベル20~30前後の魔物のわんこそば状態は、狩りとしてみれば美味しいものの、歩みはどうしても遅くなります。
疲労の蓄積もばかにならず、当初の予定を変え、ミニチュアコテージの展開を日に2回。
ミニチュアコテージが、素晴らしすぎるのです。
手のひらサイズのドールハウスのようなアイテムですが、木の洞の中や、岩陰などに設置、許可したものが入りたいと念じると、ちっちゃくなってこのコテージの中に入れます。
しかもこのミニチュアコテージ、設置すると、空間座標が固定された上に安全地帯となるという。
おかげで、モンスターの襲撃も何も気にすることなく、快適に休憩や野営ができるわけです。
そうして、昼に3時間。
夜に睡眠と……その……親睦と信愛を深めるべくですね……? を含め11時間。
都合、進行は日に約10時間に抑えられているわけです。
え、夜の時間が長すぎる……?
いやぁ…… ルナリスの”感覚過剰増幅”がですね……?
戦闘においては痛みの増幅という致命的かつもう本当に、穏やかに隠れ住んでほしいと思うデメリットの反面。
夜の……その……ほにゃほにゃな営みもですね、それはもう途方もなく。ええ、敏感どころでは無くですね? 天上の神々の楽器とでも言わんばかりに、艶やかな鳴き声を……。
その上、“魂漏出“の魅了効果は私にもぶっ刺さるわ、彼女は”超速再生”で体力も無尽蔵というわけでして……それで互いにもう、底なし沼にはまり込むように抜け出せなくですね……?
インベントリを覗けば、自力獲得したスキルのスキル結晶がごろごろと……
☆1体力増進×2、☆2 気絶抵抗×2、☆2 魅了抵抗×2、☆3 再生×2、
なにゆえに2個づつって? 天使、堕天使、どちらの姿も関係なく愛してるって、ルナリスに耳元で熱く囁かれて我慢できると思います?
スキルスロットの入れ替えができないのが悔やまれますよ。ぎぶみー再生、切実に。あるのに使えない、ぐぬぬ感。
寝顔を見られるのがたいてい私という。今や私とて現実の以前と性別の同一性はわかりませんが、性別は両性で両方ある身体なれど、外見は絶世の美人、麗しき美少女。な姿ですから? 見られて困るとは申しませんが。精神的にも外見にかなりひきずられていますし。
「小領域の……主の住処が、近づいているかも……しれません」
「樹々のおどろおどろしさが増しているとは思いましたが、そういう事ですか」
このダンジョン、とにかくやたらに広大なことは事前に聞いていました。
最深部どころか中層域と目される領域から奥は誰も、少なくとも情報が公開される範囲で、帰還した方は住民にはいない。とのこと。
その要因として、樹海は細かく領域に分けられており、それぞれに、領域の主。要するにゲーム的に言うところの小ボス、中ボスが、いるわけです。このボスを倒さない限り、各領域の境を通過できず、かつこのボスは一定周期で復活する……と。
いわゆる洞窟型などのダンジョンとは比べ物にならない、モンスターの数の暴力。地形効果。そして無数のボス領域。
この3要素がダンジョン”彷徨いの樹海”を難所としているわけです。
「アルフレドが……開拓した経路……を、この“導きの宝珠“は……記録しています。領域の……境目をうまく……通り、主との遭遇を最小限に……していますが、それでも……数回は」
「幸い食料は(課金販売のおかげで)充足していますので、慌てず、確実に抜けましょう」
「は……い。ナオ様と……二人きりで……の、逃避行……嬉しい、です」
確かに見方によっては、国を追われた姫との愛の逃避行。というかそのもの?
「ルナリス。少し気は早いですが、先々どうしたいか、希望はありますか? できうる限り、ルナリスの希望をかなえたいのです」
意識にあるのは、託された品の中の2つ
☆- 書類 ※アレイスター王国公式文書として押印がなされた書類
☆- 星の煌めきのティアラ ※アレイスター王国レガリア(王権の証)を成す品の1つ
書類は、彼女に確認の後、内容を改めると、ルナリスの立ち位置に関するものであった。
要するに、破棄されていると思っていた継承権は残されている。
「わたくし……は。父も、皆も、いないあの国に……もはや未練はありません。一人の……ぉ……おんな……として……ナオ様に侍り、肩を並べ戦うこと……だけが望みです。わたくしは籠の鳥、でした。未知を……まだ見ぬ地を、ナオ様と見たい……です」
政治や継承にかかわる詳しいことは一切まだ聞いていない。簡単に放り出せる、あるいは、無関係な者として、クーデターで持って王位を簒奪した現王が、ルナリスを見逃すのかも不安がある。
「それ……に、それこそ……が、命を賭して……わたくしを逃がし……てくれた、彼ら……の望みでも……あります」
彼女の望みが変わらない限り、ただ、それに寄り添おうと。彼女の嗜好的にはむしろ、私が牽引しなければ。と思うのであった。
「この大陸に……おいては、同性婚も、重婚も……すべての愛が、合法です……」
ルナリスさん、その情報は今必要でしたか……? ていうか重婚?




