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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第2部 - 第6章

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131.6章-第1話 ”第2部 プロローグ”

 茫然……唖然……。

 それが今の私の素直な気持ちだと思います。


「どうです! すごいでしょう、すごいでしょう!? ナオさんと言えばやっぱり、こうでなければですわ!」


 待ちに待った9月1日。ルナリスと紗雪を現実に迎え、私の身体も蘇生される日。

 目の前には鏡。

 そして鏡に映るのは……。


「各宝石はもちろん本物ですわ! マナから生成してはいますけれども、天然の宝石と何一つ変わる事はありませんの。さすがに、質、大きさ共に埒外ですから、対外的にはイミテーションという事にすべきですが……って、ナオさん、大丈夫かしら? 何か不具合がありましたの?」

「いえ、その点は大丈夫かと。ええ……その点は……。ナオさん、どうかお気を確かに」


 すぅ……心の中で深呼吸をし……斎賀さんと、もう一人の黒髪の女性を視界の端に収め。


「な・ん・で、”不朽の束縛”なんですかぁ……!」


 ええ、ええ。待ち合わせ時間になり、ルナリスと紗雪に先立ち、現実へとログアウトした私。その容れ物はいつものドローンカメラではなく、ゲーム内でもはやおなじみ。3つの宝石が付いた、チョーカー”不朽の束縛”だったのですよ……!


「え……え……まさかこれが生身の身体とか、無いですよね……よね!?」

 いけません、私は今、冷静さを失おうとしています。


「体が魂の器という意味でしたら、そうですわよ?」

 さらっと返される無情の一言。

 気が遠くなりかけたところで、斎賀さんが割って入ってくれます。


「お嬢様……さすがにそれでは伝わりません、というか、誤解を生んでいます。丁寧に、きちんと、ご説明を」

 黒髪ロングの、それこそ高校生高学年か、大学生と言われてたら信じてしまうご令嬢が、ほっそりとした頤に指をあて。


「なるほど? ええと、ですね。と、その前にまずは自己紹介ですわ。私はDeus ex Machina Corp.の最高統括責任者。CEOであり、その根幹技術の開発者。Steps to Elysium Onlineの基幹システムの構築をしたのも私ですわね」

「つまり……え……ではあの、夏のイベントの会場でお話をされていたのも?」


「ええ。身バレ防止のために、偽装はしていましたが、私ですわね。肉体年齢は見たままですが、精神的にはご存じ加速世界で、4倍どころではない加速倍率に研究施設その他諸々を構え、長期間過ごしていましたので、かなりの年齢です。どれくらいかは数えるのはとっくにやめましたわ」


「と、言う事は、生きているのか死んでいるのかもわからない。そんな状態の私をSEOのテスト空間に招待くださったのも貴女なのですね。ありがとうございます。あのお陰で、精神の均衡を、紗雪と出会うまで保つことができましたし。なにより、VRMMO世界の中でも、動ける素地が出来上がっていました」


「そ、それは私というか、そうでもないというか、……んーーっ! 今はまだ説明できませんわね。と、とにかく、お礼を言うのは私の方ですわ! 貴女があの日、事故……を装った殺害計画から救ってくださったのが、私ですの。改めて御礼申し上げますわ」


 いきなりいろいろな情報が放り込まれて、混乱に呑まれかけますが、しっかりと会話だけはつながねば……ただでさえ肉体がゲーム内の特級呪物たるチョーカーという状態ですから、相手からしたら表情も何もあった物ではありません。


「いえ。えと、正直まだ呑み込めていませんが、お救いできた? のなら、それは何よりです」

「ええ。これからの貴女同様、私も本質的な死とは無縁ですが、表向きの死亡を迎える事は、様々な活動に悪影響を及ぼしますからね。死んだはずの人間は、公然と活動ができなくなるのが現代ですので。社会的生命を救っていただいた。それによりこのデウス存続のリスクも回避いただいた。殺害計画を阻止いただけたことは、極めて大きな意味を持っています」

「それでその……これが身体……? というのは。ドローンカメラの代わりとか、そういう事ですよね……?」

 一抹の期待を込めて問いかけます。


「本体。という意味では、そのアクセサリー。厳密には、SEO内と同じ、魂核であるピンクダイヤモンドで正しいですわ。本物の宝石と申しましたが、マナ技術を用いた特別な措置を施してありますので、本来のダイヤモンドのように燃えて炭になるという事もありません。タングステンの超高合金性のパイルバンカーをぶち込んでも無傷ですわね! それこそゲーム内の不滅に近い、現実的に破壊する事が困難な耐久性です。まずは貴女の元の肉体の蘇生を試みましたが、魂との乖離が大きく、蘇生、貴女の魂の定着は不可能と判断しました」


 つまり、復元された元の肉体には戻れないという事ですか。性別の記憶すら曖昧ですので、そこのこだわりは正直もはやありませんし、今のゲーム内の身体がしっくり来ています。しかし、以前斎賀さんが仰っていた事とも相違するような……。


「そこで、Steps to Elysium Online内でさらに変容した魂の在り方。今の魂が肉体と認識している姿を再現し、魂の定着を図る事にしたのです」

「え……それがまさか、このアクセサリー、もとい、魂核としての宝石状態……」


 漆黒の瞳でじっと見つめ返してくる彼女。そういえば名前もうかがっていないような。


「そこは少し、私、そして研究チームも悩みました。が、最大の課題は、貴女の魂が2つの肉体。ゲーム内の天使と堕天使、その2つの肉体を、両方己の器と認識してしまっていた事にあるのです。仮に、どちらかの肉体のみを原型として生成し、魂を移し替えた場合、早晩乖離が発生し、魂の損耗につながる。そう判断しました。そのため、2つの肉体を共に魂の器とするためにはどうすればよいか。困難な課題でしたが、ゲーム内と同じ状態を再現する事に成功したのですわ」

「それではもしや」

「はい。魂の本体はその”不朽の束縛”を模したアクセサリーにはめ込んだピンクダイヤモンド、魂核に。そして肉体は、2つの身体を操っていただく事ができます。この状態ですと、肉体が仮に致命傷を負ったとしても、その痛みのフィードバックこそ受けますが、魂が直接消滅、死亡する事はありません。魂核の安全さえ確保しておけば、私と同じ、実質不死身ですわ」


 実はまだSteps to Elysium Onlineの中です。と言われた方が信じられそうな、これまでの超技術とはさらに一線を画す、荒唐無稽な話に、気が遠くなりますね。


「それは……何と申してよいか……」

「羽根については、言い訳ができませんので、通常時は無し、外見上人間に見えるように肉体を生成してあります。ただ、斎賀から課題を出されているでしょう? 魔法をこの現実で完全に習得すれば、翼をマナで適宜生成する事もできるようになりますわ」

「お、おぉぅ……想像以上に現実がファンタジーです」


 その言葉に彼女はクスリと、年相応に見える笑みを浮かべ


「ファンタジーが、実は現実なのですのよ。人類、いえ、世界がそれを忘れてしまっているだけです。そうそう。斎賀が超人的な肉体をプレゼント。と確か説明してありましたよね?」

「ええ、ナオ様にはそのようにお伝えしてあります」

 こくり……と、頷く体はありませんが、気持ちで頷いておきます。


「マナの操作器官。簡単に言えば魔法を行使するのに必要な器官を、埋め込んであります。魔術システムに引っ張られるゲーム内よりももしかすると、楽に魔法を発動できてしまうかもしれませんわ。それと、肉体強度についても、その関係で、魔力的保護と強化が常時かかっています。SEO内である程度慣れていらっしゃるはずですが、迂闊に全力を出して物を壊さないように気を付けてくださいね。そして今申したことは全て、貴女の伴侶……共に過ごす住民であるルナリスさんと、元ナビAIの紗雪さんも同じです。彼女達は肉体に魂を紐づけても良かったのですが、ナオさんと同じ魂核の方が、結果的に安全性、不死性の担保が容易ですので、そのようにさせていただきました。よろしいですわよね?」


 正直よくわからないというか、思考が追い付いていませんが、これまでの事。それに、ここまでしてくださった以上、こちらの損があるとは思えません。ありがたく、お気遣いに甘えましょう。

「はい。ありがとうございます」


「よろしい。では、お二人も呼びますわね。特にルナリスさんからすれば、ゲーム内と存在の在り方がほぼ同一になりますので、この形が一番、精神の安定上も良いですの。紗雪さんはまあ、ナビAIですから、理解力に問題はありませんわね」


 そうしていよいよ、二人もこの現実にその魂が移住。SEOからは”ログアウト”し、両隣の魂核に宿る事となったのです。

 2人との確かな、温かなつながりを感じるとともに、目の前に並べられた4つの、近未来的なカプセルベッド。長らくモザイクで隠されていたそれが、淡い蒼い光を硝子部分に宿し。プシューっと空気の抜ける音と共に、ゆっくりと開くのでした。


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