いじめ事件6 ~昼寝から目覚めると~
ここでは、恵理視点で物語が進みます。
屋上の階段の踊り場で、私はいつものように昼寝をしていた。屋上にはあまり人が来ないし、風通しもいいから、私のお気に入りの場所だ。まさに、春眠不覚暁である。そううとうとしていると、屋上から騒がしい声が聞こえてきた。
「やめて!」「きゃあああ!」
何事かと思って目を覚ますと、信じられない光景が目に飛び込んできた。あの怜奈が、田岸たち3人組をボコボコにしているのだ。怜奈の動きは、まるで格闘ゲームのキャラクターみたいだった。体育が苦手なはずの怜奈とは人違いかと錯覚さえするほどだった。
「……全く。」
私は呆れてため息をついた。いじめられているとはいえ、ここまでやり返すとは。しかも、田岸に止めを刺そうと拳を振り上げている。このままでは、怜奈が退学処分になってしまうかもしれない。
私はポケットから、野球のボールほどの大きさのマッサージボールを取り出した。昼寝の時に握りしめていると、妙な爽快感が得られるのだ。そのマッサージボールを、私は怜奈の頭めがけて軽く投げつけた。
「いった!」
マッサージボールは怜奈の頭に命中し、怜奈は一瞬ひるんだ。その隙に、田岸は怜奈の顔を軽く殴り、窮地を脱していった。
「くっそー、覚えていろよ!」
田岸は、他の2人組と一緒に、転げるように屋上から逃げ出していった。
怜奈は私を睨みつけた。その目には、怒りと困惑が入り混じっていた。
「なぜ邪魔した?」
ものすごい形相をして怜奈は私に問いかけた。この私ですら怖気づいてしまうほどだ。だが、そんな私は、黙って怜奈の腹を目がけてパンチを入れた。
「うぐっ!」
怜奈はうめき声を上げ、その場に崩れ落ちた。
「そろそろ昼休みも終わりよ。早く教室に戻りなさい。」
私は怜奈に背を向け、その場を立ち去って行った。




