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どうも、邪神です  作者: 満月丸
冒険者編
118/120

それぞれの旅立ち

…あの戦いから、一月が過ぎ去った。


虚公を初めとした虚無教勢力は滅び、ゲンニ大陸の平穏は守られた。しかし奴らの付けていった傷跡はあまりにも深く、人々は未だに完全な日常を取り戻してはいない。無理もない。虚無教のテロ行為、魔物の攻撃によって外門はボロボロ、暴動によって手傷を負った者は数しれず、それどころか未だに死人も数え切れない。

そんな、あまりにも甚大な被害の最中、しかし皇帝として即位したメルさん…メルサディール様の一声は、間違いなく人々の心に光を灯した。


「此度の騒動は、痛ましい出来事でした。しかし、神は我らを救い、手を差し伸べられました。ならば我々は生きねばなりません。犠牲となった全ての人々のためにも、邪神事変の頃より我ら人が抱いてきた、屈せぬ強き意志を抱きながら。そのためにもアタクシ、皇帝メルサディールは、この身の全てを投げ打ってでも再興に全力を投じることを、約束しましょう!」


ゲンニ大陸を救った勇者。神に愛されし皇帝。


彼の人の激励に、絶望に膝を屈していた人々は徐々に立ち上がり始めていた。過去のものとするにはまだ早いが、しかし少しずつ、人々は元の日常を取り戻しつつあるだろう。


そして時間が経つと、無性に去った者のことを思い返す。


カロン老は、あれから姿を見せない。虚公を打ち砕いた一撃の後、目を覚ませば眼前の荒野だった情景が、緑溢れる草原に様変わりしていた。怪我を負った者、腕を失った者、命を失わなかった者達の傷は癒え、残るのは惨劇の跡だけだった。

あの人に限って何かが起こったとも思えないので、きっと役目を終えたので神界に帰ったのだろう。休暇というのも建前で、本当は今回の騒動のために居てくれたのかも知れない。ハディは水臭いと怒っていたが、まああの人らしいとは思う。きっと照れくさかったのだろう。ただ、メルサディール様は少し、残念そうだったが。


さて、我々は、というと…。


かの戦いの後、メルサディール様の保護にて城へ招かれ、もてなされた。とはいっても、こんな状況なので慎ましやかなものだったらしい…天上人のもてなしがどういうものなのか、私には未だに理解はできないが。

翌日、相変わらず元気なハディが復興中の城下の手伝いを申し出た。やはり彼らしく、どこまでも強メンタルだと思う。正直、私は数日ほど寝込んでいたのだが、その間も彼は忙しくなく瓦礫の撤去や市民の救助を行っていたようだ。

…尚、ダーナはシーナと一緒にハディに会いに来ては門前払いされていたようだが、ラーツェル卿の采配で再会を祝うことが出来ていた。彼女もまた、今回の戦いの功労者だ。慰労も兼ねて歓待されたら、慣れないそれに目を白黒させて、借りてきた猫のようになっていた。そのあたり、まだ食欲旺盛なシーナの方が図太いと思う。

ネセレは豪遊しながら食っちゃ寝の毎日で、国を救ったドラゴンということでフェスベスタも賓客として饗され、ネセレの世話を焼いている。まだ山に帰る気は無いようで、時折、城下でハディのように人を手伝っているようだった。


そうそう、ゲッシュの宿は魔物の襲撃で半壊したのだが、なんとトンコー様のご支援によって今では以前より立派な宿に建て替えられている。更に彼女は「冒険者ギルド」なるものを発足したようで、商人ギルドのキュレスタ氏と連携して、忙しなく冒険者を募っている。いったい、誰の入れ知恵やら…。

ゲッシュの宿がギルド公営一号店となり、時勢もあって千客万来。防衛戦で活躍したミライアとライドのコンビも名が広まり、時折、人手が足りないので駆り出されてはブツブツ言っているが、両名ともに根っからの冒険者気質で楽しそうである。ギムナさんの占いも公営になり、彼女は更にホクホク顔で占いとおしゃべりに興じていたようだ。

トゥーセルカさんは吟遊詩人としてまた旅にでて、見聞を広めるべく本を片手に旅立っていった。彼の歌は何処に居ようとも、きっと風に乗って耳へと届くだろう。

アレギシセル侯爵は、此度の戦いでの奮闘から新たな称号と領地を与えられたようだが、戦いの後遺症で腕を悪くし(本当に悪くしたのかは不明だが)、これを機に引退することにしたようだ。これからは兄上がアレギシセル侯爵として、ラドリオンを統治することになる。やや心配になるが…コルティスもいるし、大丈夫だと思おう。

そう言えば、カルヴァンも魔物の侵攻にさらされたようだが、なんとか新議長になったコルショー教授の陣頭指揮のおかげで、犠牲は少なく済んだ。戦争経験が活きたようだと当人が言っていたらしい、というのは、カルヴァンからやってきたカーマスの話だ。しかしアイツ、VIPルームの高いワインを飲むだけ飲んで帰っていったが、何しに来たんだか。コルティスは負傷したようだが、今ではピンピンしている。防衛戦で大きく貢献したらしく、今ではカルヴァンでも一目置かれているようだ。


さて、私はと言えば…。


リーンにつけられた傷は治ったが、しかし片目の赤は消えなかった。鏡を見る度に、自分の赤い瞳に少しギョッとなってしまうが…そのうち、慣れるだろうか?しかし、この瞳…魔眼のようだが、意識することで様々な情報が手に入るようになった。見た対象の才能、潜在能力、現在の健康状態、ets…。正直、彼女にしては穏便な代物だと思う。

彼女は、私にこの目で虚公を見ろと言いたかったのだろうか?しかし今になって思えば、どこか首を傾げてしまう。

私の瞳に宿る彼女の欠片に、もはや意思など無いだろうが…それでも、呼びかけてしまうのは、何故だろうか…?


…そして後日。


一先ずの落ち着きを取り戻した帝国では、改めて正式な戴冠式を行った。

皇帝メルサディール…いや、皇帝カレンデュラの即位式だ。

彼女は、言った。


「今まで、アタクシは勇者でした。しかしこれからは違います。アタクシは勇者という称号の上に胡座をかくのではなく、皇帝という称号の上で世界を見ねばなりません。…故に、アタクシはメルサディールの名を封じ、新たなる名、カレンデュラを名乗ります。これが、皇帝となる最後のケジメだと思いますの」


カレンデュラ・M・アルクーゼ・デグゼラス。


皇帝になる以上、もう彼女と一緒に旅は出来ないし、師事することはない。彼女もそれを理解し、それらの思い出を名前と一緒に仕舞うことにしたのだろう。それがどれほどの覚悟の上での事なのか、私ごときには推し量れなかった…。

ただ、それでも。


「じゃあ、俺たちと一緒にいるときだけは、メル姉はメル姉でいてくれよ!」


ハディのその言葉に、彼女は少しだけ目を丸くしてから、花開くように微笑んだ。

きっと彼女の中で、その名は宝物のように大切に思われているのだろう、と、その笑みを見てようやく察した。


即位式での彼女は美しく、しかし強いカリスマを携えた女帝として、人々の前で堂々と胸を張っていた。その輝かしい姿に目を細め、私も人知れず拍手を送ったものだった。…私の中に残る、かつての友の記憶もまた、彼女の晴れ舞台に心躍らせているような気がした。

それと、ヴェシレアとの関係は、虚無教の侵攻によって互いが疲弊していたことも在り、メルサディール様の名の下に休戦協定が取り付けられ、現在では再び落ち着いたものへとなっていた。

もはや戦争に不安を感じる必要もなく、人々は陽光の女帝へ惜しみない喝采を送っていたのだ。



・・・・・・



「…いい天気ですね」

「絶好の旅日和だよなぁ!」

『ふむ、こういう日は焼き肉が美味いのだがな』


蒼天の日。私達はケンタックを旅立った。

依頼の為ではなく、新たなる新天地を目指しての、戻らぬ旅である。


そもそも、件の戦いの後から、権力者から士官の催促が増えたのだ。やれ兵長の地位を与えるだの、宮廷魔法士にさせてやるだの、連日のように訪問する使いにウンザリしていたのだが。メルサディール様にとっても何か言えることでもなく、すまなそうにため息を吐いていた……ので、いっそのこと旅に出ることにした。

今や、我々はゲンニ大陸の英雄だ。虚無教からデグゼラスを守った英傑として、ネセレですら密かに持ち上げられている毎日。正直、こんなに称賛されるのを見ていると、自分が駄目になりそうだったので出奔することにしたら、ついでにハディ達も着いてきた。


「ハディはともかく…ダーナとシーナは、大丈夫なのですか?」

「な、なによ!アタシが居ちゃ駄目だっていうの!?」

「ふぇぇ…すみませぇん」


なにやら、ハディと一緒に仲良しコンビのダーナとシーナもくっついてきた。ハディが二度と戻らないかも知れない旅に出ると知り、ダーナは意気込んだ様子で「アタシも行くわ!」と着いてきて、ついでに薬師としての腕を上げるべく、シーナも一緒に来た。全体的に見た目の子供率が高いパーティになった。


ちなみに、ネセレは帝都に残った。なにやら盗賊業を廃業し、皇帝のお付きにして裏方の諜報員として暗躍しているようだ。当人は今まで通りの態度なので、他の付き人からは顰蹙を買っているようだが、まあ大丈夫だろう。それに、一人くらいは以前のような態度の人間がいれば、メルさんも気が休まると思う。

意外なのはフェスベスタで、彼は山に帰らず、そのまま帝都に居着いている。皇帝の盟友であるドラゴンということで、賓客としてさまざまな知識や力を貸しては見返りに寝場所を提供してもらっているようだ。このまま、帝国に帰化でもするのかもしれない。


そんな、騒々しく別れの挨拶を交わしたかつてのメンバーを思っていれば、ハディが地図を手に尋ねてくる。


「な~、ケルト。それで、まずはどっちの大陸に行くんだ?」

「そうですねぇ、今回の騒動で翼種側が騒いでいるようなので、反対側へ行きましょうか」

『というか、無目的で出てきたのか、お前ら。行きあたりばったり過ぎるだろうに』

「じゃあ、ザーレド大陸か?俺、獣種の言葉とか全然わかんないんだけど、大丈夫かな?」

「だ、大丈夫よハディ!なんかこう、身振り手振りでいけばきっと伝わるわ!」

「ダーナちゃん、それはちょっと勢いだけっていうかぁ」

「まあ、なんとかなりますよ」


我ながら適当だな、と思いながら、苦笑しつつ荷物を抱え直す。この適当さも、誰の影響なのやら。


「俺、思ったんだけどさ」


ふと、ハディが口を開いた。

見てみれば、彼としては珍しく真剣な顔で、空を仰いでいる。


「リーンを倒したけど、俺の体は戻らなかっただろ?爺さん曰く、俺って成長することはあっても、年老いることはないんだって」

「え、そ、そうなの?」

「らしいですね。私達も…おそらく不老でしょう」

「ええ!?そ、そうなの!?」


知らなかったダーナは慌てているので、教えておく。

魂の覚醒によって肉体は精霊に近づいているので、人間的な機構が鈍麻してるのだ、と。例えば、食欲などは以前より低くなるだろう。同じく、肉体の加齢も止まるのではないか。

言われて、ダーナは真剣に悩んでいる。


「うぅ…あ、アタシの成長って、もうないのかしら…こんな、一生ぺっちゃんこなんて…ん、うううんっ……!!」

「大丈夫だって。俺もダーナも、まだまだ成長するさ!」

「そ、そうよね…まだまだ成長期だもんね!きっと大丈夫よ、うん!」

『胸が成長するとは言っていないがな』

「う、うっさいわね!バカレビ!」


からかうレビに木の棒を振り回して怒っている。どうにも、彼女はハディにだけは正直である。

それで、と話を促せば、ハディは続ける。


「んでさ、俺以外にも吸血鬼っているみたいなんだよな」

「ああ、ティアゼル砦の彼も、ですね」


リーンの眷属、銀髪の吸血鬼。

彼は今、どうしているのだろうか?


「リーンの事だから、俺たち以外にも吸血鬼は居るんだと思う。吸血鬼は血を吸うことで仲間を増やせる。だから、これから吸血鬼ってどんどんと増えていくんだと思う」

「…そう、ですね。その可能性は十分に有りえます」

「でさ、やっぱ吸血鬼って普通の人にとっては怖いじゃん?化け物って呼ばれても仕方ないくらいに」

「は、ハディ…」

「いいって、ダーナ。わかってるから」


カラカラ笑うハディに、私は少し羨ましく思える。どこまでも底抜けに明るく前向きな彼の長所は、いささか眩い。


「人間の社会に吸血鬼が溶け込むのって、難しいことなんだと思うんだ。人にバレたら、きっとただじゃ済まない。人が好きでも、一緒には居られない。居場所がない連中も増えると思う。…だからさ、俺達みたいな半端者の居場所を、見つけてみたいんだ」

「居場所?」

「そ。敵対的じゃない異形の者だけの村とか作って、そこに住むんだ。そうすれば、人を襲わなきゃいけない、なんて考える奴は減ると思うし。どう?いい考えだと思うんだけど」


ハディの言葉に、私は少し感銘を受けた。自分は人とは違うと理解していても、仕方のないことだと諦めていたが…しかし、同類を受け入れる集落という存在は、きっとはみ出しものにとって、救いになると思う。無論、苦労はとんでもないだろうが…。

だが、私は頷く。きっとその案は、とても尊く、とても偉大な一歩だと思ったからだ。


「…そうですね。とてもいい案だと思いますよ」

「だろー?へへへ!だからさ、この旅でその集落を作る、いい土地を見つけようかなーって」

『うむ、まずは土地と自給自足の環境を整えて、それから各地で住む異形をスカウトせねばな』

「面白そうですね。私もお手伝いしますよ」

「あ、アタシも手伝うわ!ね、シーナ!」

「あ、はぁい。ボクも、奴隷の子を受け入れらる場所があるといいな~って、思ってましたぁ」

「ああ!それじゃ夢はでっかく、国を作ることを目標にしよう!」


国とは、本当にでかく出たが…しかし、きっと。ハディならそれを成し遂げてしまうだろうな、と私は思った。ならば、私もささやかながら手を貸してみよう。私は精霊のような人間だが、不老だからこそ人間の世界に居場所は作りづらい。変わらない存在に、人は畏怖を覚えるだろう。だから、そこで居場所を作る努力をしても良いはずだ。

それに…リーンの過去を見て、彼女のような境遇の者がいると知った。彼女は人間性を与えられて苦しんだと。…ならば、もしも境遇がもっと良ければ…彼女はもっと、違う存在になれたのだろうか。

彼女と似たような境遇の異形を救うために、その受け皿を用意する。

詮無い、自己満足な妄想だ。

それでも、試してみる価値はあると、そう思ったのだ。


「それでは、参りましょうか。我々の新天地を探しに」

「おう!頑張るぞー!」

『できれば、我も顕現できる場所だと嬉しいのだがな』


私達は笑い合いながら、草原の道を征く。

赤い瞳で世界を見ながら、透き通る風を頬に感じる。

私は在りし日の友の言葉を思い出しながら、手にした手帳の1ページに、文字を書き込んだ。




我が友が冒険を記したのは、この世界が美しかったから。だから皆にそれを教えて回った。

精霊である私はそれを実感しなかったが、今ならわかる。

有限、それは調和であり、混沌である。

目まぐるしく渦巻くこの世界は、常に流動しながら先へと進み続けていく。

その色合いは、喧しくともどこか心地よく、時に美しい色を放つ。

精霊であり魔法士であり人である私は、人と精霊の両界に立つものとして、双方の仲立ちをしていこう。いつか、彼らが人を理解できるように、私がそれを教えて回るのだ。

そして、この美しい世界が滅びることが無いように、友と同じように世界を記していこう。

小さな世界で悩む人々へ、世界の広さを知ってもらおう。

そう、人が虚無に屈せぬように、心に光を灯して回り、挫けぬ意志を育んでいこう。


これは、世界を巡る小さな魔法士が記す、ありきたりな冒険記だ。


                           ―冒険者ケルトの日記―



※※※




【皇帝カレンデュラについて:

女帝カレンデュラ、または旧名メルサディール。かつて勇者として名を馳せた彼女は皇帝となり、デグゼラス帝国に長きの繁栄を与えた賢帝として、後世にまで名を残す事となる。彼女の治世は民衆や貴族にとって限りなく公平に近く、やや潔癖が過ぎるところがあったが、それでも多くの人々に慕われる統治であったと評される。それが可能であったのは、彼女の勇者としての能力の部分が大きいだろう。もちろん、それを影で支えた偉人たちの功績もあるが。

彼女が皇帝となった後でも新たな錬金術の調薬を試み、畑などの植物に関する画期的な肥料の開発をこなしていたという。更に現在の農業の基盤となる改革を、当時の技術都市であったメーシュカと協力して編み出し、これによって帝都の農地は大きく改良されることとなる。また、魔法都市カルヴァンとも長らく懇意にしていたらしく、当時のカルヴァン議長であるヒューゲル・コルショーの名によって、カルヴァンを全ての魔法を志す者たちに向けた学園として再編成し直した。

彼女は勇者という称号を潔癖なまでに忌避し、決して公務では旧名を名乗ることはなかったという。後に伴侶となるラーツェル・キルシュカイア卿も、人前で彼女を旧名で呼ぶことはなかったようだ…が、夫婦仲はとても仲睦まじかった、とは後の竜伯の言である。


ともあれ、彼女は5人の子に恵まれ、帝位を譲るその時まで国に尽くし、退いた後も国のために苦言を呈して身を粉にして働き、103歳という老齢で没したという。

彼女の治世の間、デグゼラスに危難が訪れることは、終ぞ無かった。


               レ・サイアのエスケル著「古代の偉人伝」より】



【異形都市カロンについて

ゲンニ大陸の南に浮かぶ群島に、異形都市カロンという国がある。かつて、吸血鬼の王…通称・鬼王ハディールの手によって建国され、世界中のあらゆる知性ある異形を受け入れていたという、混沌極まりない国である。

元来、半異形などは人に虐げられて棲家を追い出され、行き場なく人を襲う者や、奴隷として売買されることも多い。また、吸血鬼や突然変異的に生まれた種族なども、小さな勢力故に淘汰される傾向にあった。

そんな行き場を失った者達を取りまとめ、一つの国として興したのが、この異形都市カロンである。名前の通り、人とは大きく違った形を持つ者達が多く、場合によっては非常に強い攻撃性を持つものも居るのだが、結界によって地区ごとにわかれて整備され、弱い者が強い者に虐げられることのないよう丁寧に整備されている印象を受けた。

基本、我々普通の人種が入る際も特殊な魔法道具を渡され、結界によって危険な地区は通行できないようにされている。人種はここでは弱者に分類されるらしく、通行証が無い限りヴァンパイアロードや精霊の転生者が住まうような地区には行けないらしい。少し残念だ。

例外は、強力な力を持っていても強い理性で自制できる者であるらしく、私が見た中では3メートルを超える巨人が街を歩いている場面を見たこともある。一振りで私など粉々に出来てしまえそうだが、当の巨人は意外にも理知的な人物であった。

先程も述べた通り、この都市はかなり整備されており、蛮族と罵っている我が国の都市と見比べても遜色ないレベルである。いや、むしろ魔法が得意なエルフ達の魔法技術によって一部の技術は王国以上(以下黒塗り)


            カプラス・シニカセオ著「ゲンニ大陸旅行記」より】





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