どこかの街 屋敷内 3:護衛王子
すいません。どうしても切れが悪くて最後の辺りを考えてたら遅くなりました。
「興奮のしすぎですね」
医師がリージュを見ての診断はドロとウツワをホッとさせるものだった。ウツワは平静を装って平気なふりをしていたがドロのパニックときたらそれはもうすごいものだった。リージュは苦しそうと言うより幾分頬の緩んだ表情で眠っているが、自分が原因と思っているドロにはそのようには見えないようで部屋の中を行ったり来たり。
「護衛の方は大丈夫ですか?随分とびっくりされたでしょう?」
医師がウツワに声を掛ける。
「はい、でもどちらかといえば僕よりもあっちですね」
「ああ、先程からああしてますね。お嬢様は今回は幸せそうに眠っているので私としては嬉しいのですが」
「あはは、そうですね。でもドロは眠っている女の子を見るのがあんまり好きじゃないんです」
ウツワは部屋の隅にいるドロを見てリージュの手を握る。
「それは………失礼しました。立ち入った事を聞いてしまい」
「いいんですよ。それに慰めるのは僕のやることじゃありませんから。放っておいてもなんとかなります」
「はあ、いいんですか?」
「はい、適任がいます」
微笑を浮かべてウツワは言う。容態に異常が無いことが分かると医師は「なにかあったらまた呼んで下さい。主人には私から異常はないと伝えておきますから」と言い部屋を出て行った。ウツワは医師にお礼を言うとリージュの手を握り、
「ご主人様、大丈夫デスヨ。ただ興奮のしすぎだったミタイデス」
「本当にそうか?俺がまたなにかやったんじゃないか?」
ドロに話しかけるのは背中におぶさる手足のちぐはぐな人形、魔ペット。魔ペットはおぶさる格好からよじ登り耳元で誰にも聞こえないように語りかける。
「ご主人様、奥様のことを言っているのですか?」
「ああ」
「あれはご主人様のせいではアリマセン。リージュ様もソウデス。お話をしてはおりませんが、そんなことを言ってはリージュ様がなんて顔をスルカ」
「でも……眠る姿が怖いんだよ」
「知ってイマス。だから落ち着いてクダサイ。ウツワ様もそれを知っていて私にご主人様を任せて下さったのデス」
ペシペシと魔ペットはドロの肩を叩く。
「分かってる、分かってるよ」
ドロは深呼吸をして気持ちを落ち着ける。リージュの眠る姿を見てどうしても重なってしまう、今も眠り続ける少女の姿。ドロは落ち着けとドクドクと鳴る鼓動を落ち着ける。
「大丈夫デス。焦らずにイキマショウ。ほら、ご主人様リージュ様が目覚めましたよ」
ドロが振り返り寝台を見るとリージュが目覚めキョロキョロと辺りを見回している。
「リージュおはよう」
「お、おはよう……ございます」
リージュは視線をウツワにとめ次に手を見る。握られている手を見てリージュは顔を赤くし、いつも隣にある獅子の人形に手を伸ばすが片手は寝台を叩くだけで何も手に出来ない。寝台の上はぎゅうぎゅうと人形があるが、獅子の人形は他の人形の倍、幅を取るのでリージュの手の届く範囲に人形はなかった。
「!?!?!?!?」
隠れようにも隠れられず、手を離そうにも離せずリージュは固まった。
「リージュ?どうしたの?」
「あ、そ、その、人形は?どこに?」
リージュはやっと落ち着きを取り戻し、なんとか人形のありかを聞くとウツワが寝台の足下、本を読んだ場所にあった獅子の人形を取ってリージュに渡す。その時にウツワは手を離して人形を取ったのでリージュはホッとしたような残念なような複雑な気持ちで人形を受け取る。
「ありがとう」
「どういたしまして。でもごめんね、隣に人形を置いておけばよかった」
ウツワは苦笑し頭を掻く。リージュはブルブルと頭を振ってそんなことはないと否定する。
「その………手を握っていてくれて……嬉しかった……です」
そこまで言うとリージュは人形の後ろに隠れ顔が赤くなるのを隠す。その姿にウツワはクスッと笑うとお礼を言った。話題を変えるようにリージュはウツワにドロはどこにいるか聞く。
「そこにいるよ」
とウツワは部屋の隅で寝台を見ているドロを指差す。
「な、なんであんなところに?」
「さっきリージュが倒れちゃったでしょ?それが自分のせいだって思ってるんだ。だからリージュ、ドロにドロのせいじゃないって言ってあげてくれない?」
「わ、分かりました」
リージュはコクコクと頷き了承する。ウツワがドロを呼ぶと落ち着いてはいるが動きがビクビクしていてまだ引きずっているのがウツワには見てとれた。
「ドロ、リージュが起きたよ」
「リージュ………その」
「赤い王子様の……せいじゃありません。私は体が弱くて時々こうやって倒れてしまうんです。だから……赤い王子様のせいじゃありません!」
「えっ、そ、そっか……そうなのか。そっか良かった。良かった」
そう言うとドロは寝台に乗りリージュを抱きしめる。するとポロポロと泣き出した。
「うううよかった、また起きないんじゃないかって、よかった」
リージュは自分の置かれている状況が分からず抱きしめられていることに赤くなったり赤い王子様を泣かせたことに青くなったり顔色が目まぐるしく変わる。ウツワは慌ててドロを引き剥がして落ち着かせる。その時リージュはウツワがドロではない誰かと喋り苦笑しているような気がしたが一瞬のことで特にその後話している様子はないので気のせいだとリージュは思った。
「リージュ、大丈夫?ごめん、倒れそうでも耐えてほしい。これで君が倒れたら今度こそドロは落ち込んだまま当分そのままになっちゃうから」
とウツワに言われリージュはコクコクと頷く。不思議なことに顔の火照りはあるが倒れる前の予兆もないのでリージュはホッとする。ウツワは泣き止んだドロを寝台から下ろし部屋の隅に置くと戻ってきた。
「重ねて謝るよ。ごめんね。ドロはあれで結構大変な思いをしてきたから」
リージュはなんとなく、それはどんなことか聞きたかったが聞いてはいけない気がして何も言わずに頷いた。
「ありがとう」
そう言うとウツワは優しく微笑みリージュの頭を撫でた。




