「ホワイト・ハート&レイン」の客
結局、悶々としたまま夜が明け、寝不足のまま学校に行った聡が放課後立ち寄ったのは、駅前にある喫茶店「ホワイト・ハート&レイン」だった。
喫茶店。
カフェではなく、いわゆる純喫茶と呼ばれる古風な店であり、高校生が立ち入るような店ではなかった。
聡が店に入ると、マスターらしき男がチラリと聡に目をやり、小さな声で「いらっしゃい」と声をかける。
カウンターにふたりの男。
五つあるテーブル席は二組の客がいる。
さすがにカウンターの席を選ぶのは気が引ける。
「ブレンドコーヒーを」
そう言って開いているテーブル席に向かいかけたところで、大切な合言葉を口にしなければいけないことを思い出す。
「ブランシュガーの追加を」
そして、座る。
「……まあ、この中の誰かが同業者ということなのだろうが」
マスターにそれを伝え、話が通るのなら、第一候補はマスター。
次はカウンターに座るふたりの男のどちらか。
聡は心の中で呟く。
「まあ、誰でもいい」
やがて……。
「ブレンドコーヒー」
愛想のない声でマスターはコーヒーを置いていく。
「……違うのか」
「まあ、違うわけではないけど、今日は僕が相手だ」
一瞬の断層があったかのように、目の前の席に座っているのは眼鏡をかけた若い男。
サラリーマンというより、サラリーマンを装った詐欺師、そう思わせる男だった。
「西園寺卓だ。よろしく」
「一之瀬聡だ」
「相談しに来たのに随分とデカい態度だね。君」
「不愉快と思っているのならお互い様だ」
「そういう態度だと嫌われるでしょう。みんなに」
「おかげ様で友人は多い」
「それよりも、確認したいことがあって来た。それに答えられるのか。あんたは」
「たぶんね」
「そうか。それなら結構。きちんと答えられたら、コーヒー一杯ご馳走してやる。だから、真面目に答えろ」
「いいでしょう。コーヒーをご馳走してもらえるよう努力させてもらいます」




