カウントダウン よん
いつも誤字脱字チェックありがとうございます! 助かってます。
何度貴方に逢いたいと思ったことかわからない。
思い出す暇なんてないくらいに、忘れたことがないその姿を、声を。
どれだけ見たいと、聞きたいと、叫びたいくらいに泣きたい心を抱えた17年は、長くて、永くて、これからもきっと終わらないと思ってた。
受け入れられない現実に泣き続けた日々は、諦めるためには必要なプロセスだったと、今なら笑えるけど。
脳筋を断罪する権利は、本当なら私にはないのに。
この想いを告げればよかった。
罪悪感を持たれるくらいなら、告げなくてよかった。
目の前であんなことになってトラウマ起こしてないといいなぁ、とか心配するくらいは許されるかな。てかそうすることしかできなかったし。
もう、私には貴方の幸せを祈るしかできないんだと、絶望に沈んだ心には、新しい恋なんて不要だった。
遠い遠い、もう二度と逢えない場所にいるはずの貴方を、なぜ私は見てるのだろう。
短い黒髪、藍色が混じったような瞳。整った容姿は周りの女性の視線を浴びても表情を変えない。紺色の貴族服、タイは琥珀色。
間中朱桜、私の記憶の中ではもうすぐ18歳。
私のモテる幼なじみで、私の初恋の人で、私の最愛の男である。
すぅちゃんに釘付けの視線は、動かすことができない。脳内はある意味パニックだけど、ドレスアップした姿でみっともないことはしないのよ? と姉さまが微笑ってらっしゃるので姿勢は気をつけである。
生きてる、動いてる。すぅちゃんが目の前にいる。……ヤバい、泣きそう。
元気そう、神官さまとは打ち解けてるのか時々ふ、と笑ったりしてる。興味無いものには無表情がデフォのすぅちゃんにしては珍しいものだ。
私がドレスを着てなかったら、駆け寄ってたかもしれない。泣き叫んで抱きついてたかもしれない。
ああ、今本当に。私は城田ひなじゃないって思い知る。トゥレン・ハリェスの私では、すぅちゃんに名乗ることはできない。すぅちゃん、と呼ぶことも。
勇者さまとただの文官では、住む世界が違うのだから。
陛下のせいで段取りが狂ったので、勇者一行への褒美等のやりとりは宰相閣下と後日ってことになった。
早々に退出したい陛下と、まだ見ぬイケメンハーレムを夢見る真っピンクでは、陛下の意思しか通らない。文字通り運ばれて行く真っピンクの夢は夢のままだろうと予言しておこう。
陛下が退出したので、用が済んだ貴族も退場していく。勇者と知り合いになりたい野望を叶えることができるのはひと握りだと、みんな知ってるのだ。
お零れを期待するなら、成果を待て。お貴族さまはお貴族さまである。お陰で人が減って動きやすくなったからいいんだけど。
「ハリェス嬢、勇者さま一行に挨拶に行きましょう」
本気っすか。
頑張れレンさん! あと少しだから(多分)




