high-five47ex.《エキシビションマッチ2》
《high-five26.33関連》
「首尾はどうだった?」
高校サッカー選手権大会を共同製作し、放送する、
民間放送連盟の責任者、宗高が尋ねた。
「上々です。
吉備師恩の監督・高鈴剣次は全面協力を約束してくれました」
プロデューサーの麻生が、
交渉担当の系列局・吉備放送局からの情報を答える。
「伊立第一も、実現の方向でほぼほぼ承諾してくれました。
いえ、女子選手の常時一名出場枠に引っかかっているようでしたが、
こちらの提案も含め少し考えたいと……。
『幻の全国大会を、三年生の引退試合及び女子マネージャーの慰労として』
という趣旨は完全に理解してくれました。
相賀本人も『審判割当てと調整がつけば』と言っています」
バラキ県には県域テレビ局は存在せず、
当然系列局も無いため、江本ディレクターが直接交渉している。
伊立市からトンボ帰りした所で打ち合わせとなった。
「サッカー協会の審判部にも話をしておいた、問題は無い。
エキシビションマッチへ審判員の協力も得られる事になった。
摂津ドーナッツにも断りを入れたら、
吉備師恩がOKなら三人の出場は認めると言ってくれた。
ついでに高校女子選手権の連中にも筋は通しておいた。
奴らも二刀流審判員には未練たっぷりなようだ。
『高校女子選手権で育てたようなものです』なんて言っていた。
審判部への口添えもして欲しそうだったが、
そこはサッカー協会が考える事だ……」
宗高も押さえるべき要所は心得ている。
「伊立第一で女子選手は確保できそうか?」
麻生Pが江本Dに尋ねる。
「女子マネージャーが各学年に一人ずついますが、
何としても、相賀の双子の姉とされている、
Vリーグの成沢遥香を引っ張り出したいですね」
「こちらの提案も含め、助っ人の線はどうだ?」
何か引っかかりがある表情で宗高も尋ねる。
「伊立第二や伊立女子高から受け入れるとすれば平等に一人ずつ。
吉備師恩の一年生・高鈴めぐみのレンタルと、
BKBからの友情出場は、正直な感触を言えば望み薄です」
「BKBでは『主題歌をソロで歌う国分寺を出しても良い』と言っている」
「交渉の切り札には使えないか?」
そこまで宗高は話を詰めてあるのかと舌を巻きながら麻生P。
「伊立第一では『趣旨がぶれる』と即刻却下されました」
肩をすくめながら江本Dが報告する。
「まあ、そんなところだろう……。
ところで『相賀の双子の姉とされている』と言ったな?」
宗高は聞き逃さなかった。
江本Dはニヤリ。
「ええ、成沢遥香と相賀晴貴は双子として育てられた、ただの幼馴染です。
父親の成沢監督と相賀監督は元伊立北部(男子)のチームメート。
そして成沢遥香の母・遥美と、相賀晴貴の母・貴美も、
元伊立北部(女子)のチームメートでした。
晴貴が5歳の時に母親は亡くなっています。
伊立では『公然の秘密』と言うやつです」
「スクープしますか?」
麻生Pが考え込む宗高の様子を窺う。
「……いや、それには及ばない」
「実はそれ以上の耳寄りな話が……」
江本Dは再びニヤリ。
「……相賀晴貴は、二刀流でイタリアに行きます」
『えっ!』
これには二人とも驚いた。
「相賀は伊立ゾンネンプリンツで練習しているはずだが……」
「偽装ですね。『特別指定選手』の申請すらしていません」
「確かに。承認されれば在学のままでも公式戦に出られるはずだ……」
江本Dは頭を掻きながら打ち明ける。
「正直言うと、情報源から口止めされていたのですが……」
「成沢と相賀の後ろ盾、西中郷と高萩だな……。
伊立ゾンネンプリンツを巻き込むとなると、
裏で糸を引いているのはアイゼン・シュルツェンか……。
レアルに太いパイプを持っているが、イタリアで二刀流となると、
たしか財政難で合併するチームがあったはずだ……」
相変わらず宗高は鋭い。
「流石ですね。スクープは自分たちの番組で、と言っています……」
「分かった。スポーツ局には俺から条件付きで情報提供しておこう。
スクープは譲っても、取材力ならウチが後手を踏むことはない……」
エキシビションマッチは様々な思惑を含み大きく動き出した。




