本の付喪神
「あなたが次代の主様ですか?」
目の前の女性が、話しかけてきた。
その女性は、見たことのない服装をしていた。
上半身は、白くゆったりとした印象を受ける服、特に袖が下に長く垂れ下がっていて、腕を振るとたなびきそうだ。袖口には赤紐が飛び飛びに入っており袖口の下に結び目が来ていた、首元には赤い紐が襟にそって這い、胸の前に結び目が来ていた。下は上と対照的な赤よりも鮮やかな緋色だったが、やはりゆったりとしていて、ロングスカートほどの丈にタックが入っていて動きやすそうである。
容姿は、髪は輝きを放ちそうなほど艶やかな黒髪で、後ろの高いところで一つに括ったポニーテール。顔の造形は整っていてこれまで見てきた、女性の中でも断トツに優れていると思170㎝ほどだった。特に、厳粛な光を宿す綺麗な黒目に惹かれた。身長は、まあ、メイドぐらいでしか女性というものを知らないのだけれど。
しかし、メイドよりもスレンダーな気がする・・・
「あっ・・・あなたはどなたですか?」
少しどもってしまったが、至極当然な疑問だと思う。
自分の家に見知らぬ人が突然現れたのだから。
「知りませんか?」
「ええ、全く」
「本当に?」
「本当に」
「全く?」
「全く」
女性は困り顔をし始めた。
女性の困り顔は見ていて気持ちの良いものではないが、
「どうしたものでしょうか?」
「いや、僕に聞かれても・・・。」
本当にどうしようもない。
「分かりました」
と女性は言って、
「一から妾を説明しましょう。」
説明してくれるようだ、
「まず名前は、檀«まゆみ»といいます。妾は、人ではありません。先ほどあなたの目の前にありました、本です。常人には通常は見えない存在です。種族名としては、付喪神という物が年月を経て生まれる存在です。ですが、私は少し違いますが。根本的には同じです。が・・・」
「ちょっと、待ってください!」
僕は思わず、檀さんのセリフをぶった切った。
「檀さんは、本なのですか?」
「さん付けはいりませんし。砕けた言葉を使ってもらって構いません。はい、妾の本質は本です。此方の世界の常識には存在しないでしょう。」
そうだ、魔族や魔物など体が木の奴だっているが完全に人間の形をしているやつはいないし・・・いや、そうじゃないよ!
「此方の世界?別世界から勇者を招くことはあったけれど、本が来たなんて話は聞いたことがないよ!」
「妾は、本の状態で此方の世界に持ち込まれました。あなたの祖先によって。祖先の話は聞いたことがございませんか?陰陽師と名乗っていた。」
「それは、知っていますが・・・。もしかして、その祖先が違う世界から来た人であると?」
「その通りでございます。」
なんと、自分のルーツは異世界から来た人だと。とてもびっくりした。
「そして、その人物は特別な術«じゅつ»が使えました。」
それも知っている。だけど、これまで祖先以外誰も使うことができなかったものである。
「妾は待ちました。同じ力を持つものが現れることを、そして主様が生まれました。主様は、先祖返りです。」
「先祖返り?」
「はい、主様は、かの人と同じ術«じゅつ»が使えます。」
二度目の驚愕。
「妾は、術«じゅつ»が使える人に指南する役目を持って生まれました。なので、主様に仕えて教えていくことになります。」
なるほど納得できるせつめいだった。
こうして、僕の力を使うための勉強が始まった。
「まず魔力を操作していただきます。心臓から魔力は生み出されます。そして血管を通り、全身に送られます。意識して一か所に集めることもできます。まず、魔力を感じてください。」
意識を集中する、なんか心臓の辺りで、水のように湧き出ている感覚があり、それが全身に行きわたっている。
「感じとれたようなので、次はそれを利き手の人差指の指先に集めてください。」
水のような感覚のものを指先に集まるように意識する。徐々に指先が膨れているような気がしてきた。
「すみません、失礼します。」
檀が僕の手を掴むと、僕が持ってきた紙に扉に描かれていた特殊な星を書くように指を走らせた。すると、紙に文字が浮かび上がってきた、
<名前>レイメイ・アーウェン
<種族>人間
<Lv.>1
<スキル>
<ギフト«先天性スキル»>陰陽術
「これが、僕の力ですか。」
「そうです。これはステータスと言いますが、ご存知ですか?」
「いいえ、知りません。」
「分かりました。このステータスは、その人物の解説書のようなものです。貴方の先祖の時代では当たり前の知識だったのですが・・・。」
「それが理由か分かりませんが、昔より人が弱くなったと言われるようなことがあります。」
「自分のことが分からず成長限界を感じて諦めることが多くなったのかも知れません。」
そういうこともあり得るのか。
「では、上から説明させていただきます。一番上は、見ての通り、名前になります。その下も見たままですね。次はレベルです。」
「すいません。レベルとは何でしょうか。」
「そこについても文献が失われていますか・・・。そうですね・・・、強さを表す数字と申しましょうか。数字が大きいほど、その人物が強いということになります。魔物を狩るなどの戦闘経験を積むことによって、レベルを上げることが可能です。戦闘訓練であってもそれが本人の身になれば、経験値を積むことが可能です。」
軍隊を強くするために遠征をおこなうのは、こういう理由だったのか。
文献が失われ、レベルという概念が無くなった今日でも、常に戦うことになる、人々には自分が強くなっていることを実体験して、理解しているのかもしれないな。
「そして、スキルとは、人が努力をして授かるものです。たとえば、剣術というスキルは、何千何万と剣を振るったものに発現します。その上の限られたものしか使うことができないギフトがあります。これは血縁などの特殊な環境下で生まれた時から発現しているものです。主様には、ご先祖がしようされた陰陽術が発現しております。」
これが僕の力か・・・。少し感慨深いものがあるな・・・。
「では、ご理解いただいたところで。陰陽術を使うことに慣れていただきます。まずは、術師というものは、物理戦闘に弱いです。ですから身を守る術«じゅつ»覚えましょう。名を式神というものです。」
「シキガミ?」
「そうです。自身を守るための力、敵を倒すための力となる存在です。此方の世界の調教師«テイマー»と呼ばれているものに近いものです。」
そう聞くと、特別な力じゃない気がしてくる・・・
「ですが、そこにあるものとの契約ではなく、陰陽術は、自分のイメージを呼び出します。」
「存在を作り出すのですか?」
それは、神様のようなちからである。
「いいえ、イメージに近い存在を召喚する術ですね。」
「なるほど。」
「ご先祖様は、主となる十二体の式神は、姿は人、意志疎通ができ、知能を持った、素晴らしい式神を使役しておりました。力は、推し量ることなどできないものでした。」
そんなものを従えていた人が祖先か・・・。少しプレッシャーかな。
追いつけるように努力しよう!
「ということで、一体呼び出してみましょう。」
僕は、式神召喚に挑戦することになった。
「ところで、すいません。その服は何なのですか?」
「これは、巫女服というものです。マニアには垂涎ものですね。」
「はいっ?」
「すいません。メタな発言でした。」
出来次第、小説をあげていきます




