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夢現ドロップ  作者: 橘 雫


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8/12

エマージェンシー!

ヒーローはとってもいい性格。

ヒロインは振り回され体質。

つ、疲れた。

私、とっても疲れちゃいましたよパト◯ッ◯ュ。



何とか午前の授業が終わりました。

口から魂が『こんにちは』していないかちょっとだけ心配です。

何せ、今まで16年間生きてきた中で一番疲れた半日だったと言っても過言では無いと思いますもの。

このまま机にべったりと伏せてしまいたい気分です。



「千夏さん、お疲れ様でした」



「あ、ありがとうございます。蓮さんもお疲れ様でした」



労ってくれるのは嬉しいんですが、私の疲労の原因である蓮さんに言われると結構複雑ですよ?



午前の授業。

青葉台の授業の進め方の参考にと最近のノートを見せてくれると言って、蓮さんの机が私の机とぴったりと隙間無くくっつけられました。

……ご、ご親切にありがとうございます。



でも、机がくっついた事によりやけに肩と肩が近くなった蓮さんの体に、異性との必要以上の接近に不慣れな私は挙動不審に……。

ついでに朝、手のひらをさらりと撫でられた事なんかも思い出してしまってどぎまぎしている私を見て、何故か嬉しそうに微笑む蓮さん。

何でそんなに嬉しそうなんですか。

何なら私、最後には動揺のし過ぎて涙目でしたよ?

絶対に気付いてましたよね!?



まったく何も頭に入らない残念な授業が終わり、10分程の休憩時間。

転校生の私に話し掛けて下さる優しいクラスメイトの皆さんがいたんですが……。



何故か蓮さんが中継ポイントみたいに皆さんからの質問を私に伝え、私からの返答を蓮さんが皆さんに伝えるという不思議現象が発生!



私の耳はこんな近距離で中継ポイントが必要な程遠くはありませんが!?



私の机の周りに皆さんが集まってくれての質疑応答です、お互いに聞こえないはずがありません!

だから勿論、私が自分で答えますって言おうとしたんですよ!

でもですね!?



「まだ、千夏さんは皆さんに慣れていらっしゃらないですからね、いちいち緊張させてしまったら可哀想でしょう?慣れるまでは私がしっかりとフォローしますから安心して下さい。順々にゆっくりと慣れて頂きましょうね」



クラスメイトの皆さんに中継ポイントの必要性の説明を説いてらっしゃいました。

……私は人に慣れない野性動物か何かなのでしょうか。

クラスメイトの皆さんの蓮さんを見る目が生暖かいです……。

すぐには友達が出来にくい(涙)悪役顔の私としましては、親切に話し掛けて下さる皆さんと親しくなりたいんですが!?

それはもう、切実なんですけど!?



「な、なあなあ?宮緒って、こんな性格だったっけ?もっとこう、馴染んでないわけじゃないけど周りからは一歩引いた感じっていうか、なんつーかそんな感じじゃなかった?」



「だよねだよね!?自分から進んで誰かを構い倒す姿なんて、今まで見た事無かったよね!?」



男子の1人が困惑した様な顔で首を傾げています。

うんうんと頷く女子。

周りの皆さんも同じ様な顔で頷かれていますね。

そう言えば、山藤先生も似たような事をおっしゃってましたっけ?



「私自身不思議なんですけど、千夏さんを見ていると何でもして差し上げたい、尽くしたいという気持ちになるんですよね。他の誰でも無く、私だけを頼って欲しいとも思いますし……。どうしてでしょうね?」



「!!?」



どうしてと言いながら、蕩けるような笑顔で首を傾げる蓮さんはヤバイです!

破壊力抜群です!

私的には言われた内容と相まって、顔から火が噴きそうなんですけど!?

寧ろ、火なんて生易しいです!

炎を噴出しそうです、大噴火です!!

羞恥のあまり、木っ端微塵に吹き飛びそうです!

このイケメンは自分の言葉の破壊力を理解しているのでしょうか!?

本人はさらりと言ってますが、「私だけを頼って欲しい」だなんてさらりと片付けられる様な物じゃないですよ?

いえ、若干幼い子供に向ける感情の様な気がしないでもありませんが、どちらにしても恥ずかしさで今すぐ死ねますよ!?



「ちょっ、ちょっと!宮緒くん、その辺にしてあげて!笹森さんが白目になってる!笹森さんのライフはもう0よ!?」



爆発しそうな私を助けてくれたのは、さっき席を移動してくれた近藤さんでした。

私の様子に気が付いた近藤さんが慌てて蓮さんを止めてくれます。

近藤さんは眼鏡を掛けた知的美人って感じの方です。

セミロングの黒髪もさらさらで素敵ですね!

艶々の髪に天使の輪が見えますよ。

今の私にとっては天使と言うより、救いの女神って感じですけど!



「おや、千夏さん。顔が真っ赤ですが大丈夫ですか?」



大丈夫じゃありません!

誰のせいだと思っているんですか!?

聞いていた周りの皆さんだって男子も含めて軒並み固まっていますよ!



「……宮緒くんはもう少し、自分の顔と言葉の影響力ってものを理解した方が良いわね。どうやら笹森さんは異性には慣れていないみたいだし、色々と加減してあげないと」



まったくです!

近藤さん、もっと言ってやって下さい!



ため息混じりの近藤さんの言葉に蓮さんはにっこり笑うと私を見つめます。



蓮さんのにっこりには最早悪い予感しかしません。



「嬉しいです。千夏さんは私の顔と言葉に影響されて下さるんですね?授業中にも私を見てはそわそわしてらしたので、顔はお気に召して頂けているのかなとは思ったのですが」



「!?」



や、やっぱり予感的中!!



エマージェンシー!

エマージェンシー!!

確信犯です!!

確信犯がここに居ました!!

お巡りさ~ん、どぎまぎしている私を分かっていて微笑んでいた凶悪犯がここに居ますよ~!!





て、手直しに時間が……。


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