嫌な予感ほど高確率で的中します!
ようやく半日が終わりました~。
「ご馳走さまでした!」
周りの視線も何のその……なんてしがない一般ピーポーにそんな高度なスルースキルがあるはずも無く、蓮さんの陰にこっそり隠れる事で何とか皆さんと楽しくお昼ご飯を食べる事が出来ました。
私を隠してくれる蓮さんの大きな身体に心から感謝ですね!
クラスメイトの皆さんに名前を教えてもらい、私としては最高に楽しい時間でした!
このまま皆さんがお友達になってくれたら言う事無しなんですけど……。
今夜、星にお願いして眠ろうと思います。
途中、蓮さんがお赤飯を一口分けて下さったんですが、その時に《あ〜ん》をされそうになってあわあわと白目になり掛けましたが、見兼ねた近藤さんが止めてくれて助かりました。
あの瞬間、私は近藤さんが女神様だと確信しましたよ!
もし、恐ろしい事にあのまま近藤さんが止めてくれずに≪あ〜ん≫が実行されていたら、蓮さんに≪様≫を付けて呼んでいた方達によって私の命は危なかったかもしれません。
そう考えると、近藤さんたら女神様な上に命の恩人というわけで、私としては感謝しても感謝仕切れないというものですよ。
近藤さんにこそ《様》が必要だと思います!
無意識に拝みそうになっていたらしく、そこはご本人に丁重にお断りされてしまいました……。
それから、近藤さんには≪様付き≫についても教えて貰いましたよ。
なんと、様を付けて名前を呼ばれているのは蓮さんだけではなかったんです!
代表的なのが生徒会所属の別制服組。
生徒会は家柄、容姿、能力共に優れている方が所属しているそうで皆さんの憧れの的なんだそうです。
それと風紀委員の方にも同じ様に呼ばれている生徒がいるらしいですよ。
そんな漫画みたいな完璧超人が現実に存在するのかと普通なら驚くところですが、すでにお隣に《蓮様》と言う完璧超人がいる訳で……。
それだけに蓮さんみたいな人が他にも何人かいると言われたら、そりゃあ驚きますよね!
この学校の人材、どうなっているんでしょう!?
あ、後は皆さんに私の口調についても聞かれたりしました。
同級生なんだからそんなに丁寧に話さなくて大丈夫だよと言って貰えたのですが、小さい時に父の口調を真似していたら、いつの間にかこの口調がデフォルトになったんですよね。
父も昔はもっとフランクな口調だったのに、ある時いきなり「中間管理職は上にも下にも丁寧じゃないと今の時代は生き残れないんだよ」と暗い顔で言ってから今の口調に変わったんですよ。
子供心に今にも灰になりそうな父を見て、中間管理職って恐ろしい仕事なんだと思ったものです。
だから、いつか私も中間管理職になった時に困らないよう、今のうちから丁寧に話すようにしようと思ったのが真似を始めた切っ掛けだったんですよね。
懐かしい話です……。
「さて、休み時間も後10分位だし、そろそろ教室に戻りましょうか」
綺麗に中身を食べきった二段重を風呂敷で包み直した近藤さんに促され、皆さん教室に戻る準備を始めました。
あの量のお弁当を本当に完食した近藤さんに驚きつつ、私も空のお弁当箱を包み直して皆さんと一緒に立ち上がります。
──その時、軽快な電子音が近くから聞こえてきました。
「園子様、お待たせ致しました。どの様なご用件でしょうか?」
隣に居た蓮さんが制服の内ポケットから流れるような動作でスマホを取り出し、相手を確認すると私達に「失礼致しますね」と言って、そのまま通話を始められました。
どうやらお相手は園子お嬢様のようです。
それにしても蓮さんは電話に出るのが素早かったです!
コール一回で反応した感じでした。
テレビで言っていたんですけど、社会人の電話応対の基本はまず、コール3回以内に出る事だそうです。
相手を長くお待たせしない事が大事なんですね。
蓮さん、16歳にしてその基本が身に付いているって凄くないですか!?
蓮さんはスマホで話をしながら、私達に軽く会釈すると隅の方に移動して行かれました。
お話が長引きそうなんでしょうか。
「あの様子だと時間も掛かりそうだし、私達は先に教室に戻ってましょうか」
来た時と同じく、近藤さんの号令で皆さんと一緒にぞろぞろと移動開始です。
隅に移動していた蓮さんの側を通る時、目が合ったので「先に戻ってますね」と邪魔にならないよう小声で伝えてそのまま通り過ぎようとしたら、蓮さんに手を掴まれ引き止められてしまいました。
「?」
どうしたんでしょう?
私に何か用事があるから止めたんだとは思うんですが……。
蓮さんに引き止められた私に近藤さんが気が付き「先に行ってるわね」と手を振って先に学食を出ていかれました。
その後を鈴木くん達がにやにやしながら出ていきます。
私は蓮さんと一緒に置いてけぼりにされてしまいましたよ。
蓮さんは私の腕を掴んだまま話を続けていますが、私が内容を聞いちゃってもいいんですかね?
この距離だと嫌でも聞こえますよ?
「……はい、かしこまりました。今丁度一緒におりましたので、ご本人にお聞きして了承が得られれば放課後お連れ致します」
……お、おや?
本日何度目でしょう。
背中の辺りをゾクッと嫌な感じが走って行きましたよ?
「……それでは失礼致します」
通話を切った蓮さんが私を見ます。
何だか気の毒そうな顔をしている気がするんですが、私の不安がそう見せているだけなのでしょうか?
「千夏さん、今日の放課後お時間ありませんでしょうか?出来れば放課後私にお付き合い頂きたいのですが。今朝紹介させて頂いた浅見が千夏さんにどうしてもお願いしたい事があるそうで、生徒会室まで来て頂きたいそうなのです」
「きょ、今日ですか?えっと、お願いってどんな事でしょう?」
「はい。突然のお話ですからね、ご都合が悪ければ千夏さんのご予定に合わせるそうですので、ご希望の日があれば浅見には私からお伝えさせて頂きます。お願いの内容についてですが、私からは何とも言えませんので浅見本人に聞いて頂ければと」
申し訳なさそうに話す蓮さんから何故だか「残念ながら逃げられはしないと思います」という副音声が聞こえた気がしました。
どうしてでしょう?
人って嫌な予感程当たるものなんですね……。
園子お嬢様が私にどんな用事があるのかは分かりませんが、蓮さんの副音声の通り今回お断りしてもこの先逃げ切れる未来が少しも想像出来ません。
このまま呼び出しをお断りし続けても、そのうち今朝の豆台風の様な勢いのままに突撃されて木っ端微塵になる未来しか見えてこないんですけど……。
もしや、私ってば園子お嬢様に目を付けられた今朝の時点で詰んでしまっていたんでしょうか?
主人公にとって人生で一番長い一日になるのかもしれません(笑)




