第七章
いつも読んでいただき、本当にありがとうございます!
第七話では、カエルの運命が少しずつ動き始めます。
村での平穏な日々の中にも、不穏な影が近づいてきています。
最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。
夜が明ける頃――
村は静けさを取り戻していた。
しかし、その静けさは以前のものとは違っていた。
家々には戦いの跡が残り、人々の表情にも不安が浮かんでいる。
ロイドは村の入口に立ち、遠くの森を見つめていた。
昨夜倒した暗殺者たち。
だが彼は確信していた。
「……これで終わりではない。」
その言葉を聞いたエレナが静かに近づく。
「まだ来るの?」
ロイドは小さく頷いた。
「ああ。」
「あいつらは命令で動いていただけだ。」
「本当の敵は、まだ姿を見せていない。」
その頃、カエルは庭で木の剣を振っていた。
ブンッ!
ブンッ!
幼い体で何度も剣を振る。
昨日の戦いを見てしまった彼の心には、一つの思いが生まれていた。
(強くなりたい。)
(お父さんとお母さんを守れるくらい強く。)
ロイドはその姿を見つめ、静かに笑う。
「剣を握る理由を忘れるな。」
カエルは首を傾げた。
「理由?」
「そうだ。」
「力は誰かを傷つけるためではない。」
「守るためにある。」
カエルは真剣な表情で頷いた。
「うん!」
その返事を聞き、ロイドは一本の木剣を差し出した。
今まで使っていたものより少し長く、重い剣だった。
「今日から本当の修行を始める。」
カエルは驚きながら剣を受け取る。
「本当に?」
「ああ。」
「だが修行は厳しいぞ。」
「泣いても逃げられない。」
カエルは剣を強く握りしめた。
「絶対に逃げない!」
ロイドは満足そうに頷く。
「なら来い。」
二人は村の外れにある広場へ向かった。
朝日がゆっくりと昇る中――
少年の新たな修行が始まろうとしていた。
その時だった。
村の見張り台から鐘の音が鳴り響く。
ゴーン!
ゴーン!
村人たちが一斉に空を見上げる。
一羽の白い鷹が村へ向かって飛んできた。
その足には王国の紋章が付いた筒が結ばれている。
ロイドの表情が険しくなった。
「王都からの伝令か……。」
嫌な予感が胸をよぎる。
彼は鷹から手紙を受け取り、静かに封を切った。
そこに書かれていた内容を読んだ瞬間――
ロイドの顔色が変わった。
「……ついに来たか。」
彼は手紙を握り締める。
その内容をまだ誰にも話さなかった。
しかし、その知らせは――
カエル・ドレイヴンの運命を大きく動かすものだった。
ロイドは手紙を静かに折りたたみ、深く息を吐いた。
エレナが不安そうに尋ねる。
「何が書いてあったの?」
ロイドは少し黙った後、低い声で答えた。
「王都から全国へ通達が出た。」
「特別な魔力を持つ子供を探しているらしい。」
エレナの顔が青ざめる。
「まさか……。」
「カエルのこと?」
ロイドは頷かなかった。
しかし、その沈黙が答えだった。
「まだ名前は知られていない。」
「だが時間の問題だ。」
その頃、カエルは何も知らずに木剣を握っていた。
「お父さん!」
「修行を続けよう!」
ロイドは無理に笑顔を作る。
「ああ。」
「まずは構えだ。」
カエルは剣を構える。
ロイドはその姿勢を見て首を振った。
「違う。」
「力を入れすぎるな。」
「肩の力を抜け。」
カエルは言われた通りに構え直す。
「こう?」
「そうだ。」
「剣は力で振るものじゃない。」
「体全体で振るんだ。」
ロイドはゆっくりと剣を振る。
その動きはまるで風が流れるように美しかった。
カエルは目を輝かせる。
「すごい……。」
「僕もそんなふうになりたい!」
ロイドは微笑む。
「焦る必要はない。」
「毎日一歩ずつ進めばいい。」
修行は昼まで続いた。
素振り百回。
足運び百回。
そして木の枝を相手にした基本の打ち込み。
幼いカエルの腕は震えていた。
汗が額から流れ落ちる。
それでも彼は剣を置かなかった。
ロイドは心の中で驚く。
(まだ六歳なのに……。)
(この根性は普通じゃない。)
その時だった。
カエルの体から、一瞬だけ淡い銀色の光が漏れた。
ピリッ……
空気が震える。
ロイドは目を見開いた。
「今のは……!」
だが光はすぐに消えてしまう。
カエル本人は何も気づいていなかった。
「お父さん?」
「どうしたの?」
ロイドは静かに首を振る。
「……いや。」
「今日はここまでだ。」
しかし彼の胸は激しく鼓動していた。
(間違いない。)
(あの力が目覚め始めている。)
その力は王国だけでなく、この世界そのものの運命を変えるほど危険な力だった。
そして遠く離れた王都では、一人の老人が夜空を見上げながら静かに呟く。
「星が動き始めた……。」
「『運命の子』は、ついに目覚めようとしている。」
夕日が山の向こうへ沈み始めていた。
村は再び静けさを取り戻していたが、その静けさの中には昨日までとは違う緊張が漂っていた。
ロイドは家の外に立ち、一人で空を見上げていた。
王都から届いた手紙。
そして修行中に見た、カエルの身体から溢れた銀色の光。
その二つが頭から離れない。
「……時間がない。」
彼は小さく呟いた。
家の中ではエレナが夕食の準備をしていた。
カエルは疲れ切って椅子に座っている。
それでも、その顔には笑顔があった。
「お母さん!」
「今日はお父さんに褒められたよ!」
エレナは優しく微笑む。
「本当に?」
「じゃあ、もっと頑張らないとね。」
「うん!」
無邪気に笑うカエルを見て、エレナの胸は締め付けられた。
この平和な時間が、いつまで続くのだろうか。
その夜――
村人たちが眠りについた頃。
ロイドは静かに家を出た。
向かった先は、村の外れにある小さな丘だった。
そこには一人の老人が待っていた。
アルディスだった。
「来ると思っていた。」
ロイドは老人の隣へ立つ。
「……見たんだ。」
「あの子の力を。」
アルディスは静かに頷く。
「封印が少しずつ弱くなっている。」
「予言より早い。」
ロイドは拳を強く握る。
「まだ子供だ。」
「あまりにも早すぎる。」
アルディスは夜空を見上げた。
無数の星が静かに輝いている。
「運命は待ってはくれない。」
「王国だけではない。」
「この世界には、あの子を探している者が数多く存在する。」
「光のために利用しようとする者。」
「闇のために奪おうとする者。」
「そして……。」
老人はそこで言葉を止めた。
ロイドは険しい表情で尋ねる。
「そして?」
アルディスはゆっくりと答えた。
「四つの王座を滅ぼした者たちも、再び動き始めるだろう。」
その言葉に、ロイドは息を呑んだ。
「まさか……。」
「奴らがまだ生きているのか?」
アルディスは静かに目を閉じる。
「分からない。」
「だが、確かに気配を感じる。」
冷たい風が丘を吹き抜けた。
その頃、遠く離れた雪に覆われた山脈の奥深く。
巨大な氷の神殿の中で、一人の黒いローブを纏った人物がゆっくりと目を開いた。
その人物の前には、水晶玉が静かに浮かんでいる。
水晶の中には、一人の少年の姿が映っていた。
――カエル・ドレイヴン。
黒衣の人物は静かに微笑む。
「ようやく見つけた。」
「運命の子よ。」
彼はゆっくりと立ち上がる。
「長い眠りも終わりだ。」
その声と同時に、神殿全体が激しく震え始めた。
無数の黒い影が闇の中から姿を現し、一斉に跪く。
「ご命令を。」
黒衣の人物は静かに命じた。
「準備を始めろ。」
「物語の幕が、ついに上がる。」
その頃、何も知らないカエルは家のベッドで静かに眠っていた。
しかし、彼の右手に刻まれた紋章は、誰にも気づかれないほど微かに輝いていた。
それは、新たな運命が近づいていることを静かに告げていた。
(第七章・完)
第七話を読んでいただき、ありがとうございました!
ここから物語はさらに大きく動き始めます。
カエルの成長や新たな出会い、そして隠された真実を楽しみにしていてください。
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それでは、次回もよろしくお願いします!




