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……………… 心のライン

 昨日一日大会だったのに、普通に今日も部活はあった。そう間を空けずに今度は高校総体(インターハイ)県予選があるから。関東大会本選、そして高校総体(インターハイ)本選。その間に、二期制の僕たちの高校の前期中間試験もある。試験中は部活動禁止なので、高校総体(インターハイ)に出る運動部は辛いところ。文武両道を掲げているし、仕方ない。毎週末何かの大会か試験がある感じ。ジリジリする。

 人生で、試練は一つずつ順番に訪れるわけではないから。

 

 帰りの病院のバスで小太郎先輩と憩いのひととき。……本当はボクがいなかったら、先輩は帰りのバスでも英会話とかなんか勉強できたのかも知れない。申し訳ない気持ちもないことはないけど、この大事な二十分はボクにはもう譲れない。

「小太郎先輩、ボクいつもこんな時どうしたらいいのかなって、一人で判断がつかないんですが、先輩、そんなことないですか?」

「? 例えば?」

「初めてのことに戸惑うとか、どっちを取ったらいいか分からないとか、そんなことは? 迷うとかなさそうですよね? 分からなくて怖いとか、ないですか? こんな時どうしよう、どうしたらいいのか、よかったのか? とか」

 小太郎先輩は吹き出すように笑って、言った。

「ぼんやり仮定の話をよくまぁそんなに……。優生くんの頭の中はそんな風になってるのか」

 そうだな……と少し姿勢を正して小太郎先輩は言った。

「僕に課された課題も僕が選んだ課題も、乗り越えるのはなかなか勇気がいるし、乗り越え続けなくちゃならないんだ。いつも、ネット動画とかにある自転車で山の尾根の上の細い道を行くような気分なんだけど、足元じゃなくて真っ直ぐ前の遠くを目指すような気持ちを心掛けているよ」

 ボクも少し背を伸ばして先輩の方を向いた。

「結局、必要なことを精一杯やるしかないんだけど、一つ一つ細かいことを気にするより、目標の為に今やらなくてはいけない事をやるかな。僕たちはまだまだ知らないことが沢山あるけど、精一杯やって失敗しても、次に活かすことはできるし、最後に思った場所に行けたらそれでいいわけだから」

 小太郎先輩はボクに笑いかけながら言った。

「優生くんは優しいからさ、気持ちがふんわりしてるから、線を引いたらいいんじゃない? 心の中でここまで。ここからは譲れないって線を。それは自分中心でいいんだよ。そうやってまず自分を守って」

 きっと目を丸くしている、ボクの目を覗き込んで、

「そのラインがすごく外側にあったりすると、我儘とか言われるかもしれないけど、優生くんはそんな風にならないから大丈夫。今まできっと、他の人に譲ることばっかりだったんじゃない? そんなふうに居られるのも強いことだけど、自分と周りのためにも許せないラインを主張して」

 なんか少し涙が滲んで来たのを誤魔化したくて、慌てて聞いた。

「先輩は、怖いこととかないんですか? なさそうだけど」

「怖いことあるよ。弓道だって毎回毎回、矢を外すのが怖い。大会とかなら尚更。でも、怖くても失敗しても精一杯をやるしかないから」

「怖いことなんかないよって言うかと思ってました」

「怖いことに向かっていけるように、練習してる。あんなに集中して練習したんだから大丈夫だし、それでダメなら仕方ないって思えるように」


 バスがボクの降りるバス停で止まった。

「小太郎先輩、ありがとうございました」

「うん、また明日」


 カッコよくて、勉強も弓道もできて、完璧な小太郎先輩にも怖いことがある。まぁでも、ボクたち一般人なんかと比べようもないレベルの怖いことなんだろうな。

 もし小太郎先輩がボクだったら、ボク程度の悩み事とかササッと片付けて怖いことの中にすら入らないんだろう……。

 その夜、布団に入って、大きな積み木を一つ一つ片付けていく小太郎先輩の姿を想像しながら寝た。積み木は、十個片付いていた。


 ボクはどこにラインを引いたらいいんだろう?ボクが許せないラインをボクの気持ちで守ればいいんだな……。


 すぐ次の週末に高校総体(インターハイ)地区予選があった。

 地区予選会場はまた同じスポーツセンターだった。

 学校集合六時半も同じ。バスの席は学年毎になったのでボクは同学年の子と隣り合わせになった。

 さくら先輩はまた体調不良。大丈夫かなぁ。折角練習しても大会に挑戦できないのは残念だと思う。


 高校総体(インターハイ)地区大会は団体二位、個人は小太郎先輩が二位、山老主将が五位だった。女子は団体、個人とも予選を通過できなかった。さくら先輩が参加出来ていたら、おそらく個人で県大会に出られたんじゃないかと言う話だった。

 

「母さん、金曜から関東大会でさ、応援に行きたいんだけど。土曜と、結果によっては日曜の決勝も」

「いいよ。お弁当持ち?」

「うん」

「金曜はいいの?」

「あー……出場部員だけ公欠。他は普通に授業だから。一日目は公式練習とかだし」

 会場は、なんと屋内会場だ。場所も、予選の会場より少し近い。会場へは出場選手と顧問と補助指導員で行く。応援は希望者で各自参加。


 来年、ボクも公欠で小太郎先輩と一緒に出場したい。


 

 


 

 

 

 


 

 

 

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