……………… 全国大会(新人戦)とクリスマス
関東選抜に出たさくら先輩たちは、二泊三日だった。県外の開催なので宿泊必須。紬先輩が朝から晩まで二人は一緒だ――って喜んでいた。
結果は女子の団体も個人も、男子の個人の一人も惜しいところだったけど今までで一番、嶺南弓道部としては成績が良かった。ただし小太郎先輩を除く。小太郎先輩は異次元だから。
ボクたちの出る全国選抜は三日間開催。だけど、開催地が遠いので、ボクたちは前泊、後泊入れて四泊五日の遠征になった。
クリスマスを小太郎先輩と一緒に過ごす――!
いや、大会なんだけど。それはそうなんだけど。
実は先週、団体メンバーで一年生の一人が自転車で転んで左手の尺骨を折った。
補欠のボクが繰り上がった。怪我をした人がいるので、喜ぶわけにはいかない。
…………わーい……。
宿泊ホテルの部屋割りも一緒!
これもう、一年間頑張ったご褒美としか思えない。
無理に別々にして落ち着かなくさせるより、一緒にしておこうって顧問が思ったらしい。
行きの新幹線からずっと一緒。五日間ずっと一緒。
という、ボクの浮つき具合とは別に、小太郎先輩は落ち着いたあまえたさんだった。
やることはやる、けど、ボクに甘える。言葉じゃなくて、態度多め。
遠目で見ると、受け答えとか大人なんだけど、ずっと手を繋いでいる的な。もうボクとしても、慣れてきて恥ずかしくはない。
ただ、たまに「え?」って感じで繋いだ手を凝視してくる人がいて、そうなると少し恥ずかしい。小太郎先輩は「何か?」って感じで動じないけど。
小太郎先輩とボクのことで今回、顧問に確認されたことがあって……。同室で過ごすけど、「不純同性交遊」的な事については学校で認めている訳じゃないからねって。小太郎先輩は、
「そういうことは成人してからだと思ってます」
って答えてた。答え方も真面目だし絶対守りそう。
と言うことで、ボクたちは手を繋ぐ程度のスキンシップで毎日を過ごしているけど、楽しい。キスは別。小太郎先輩にとって、挨拶だから。まず、弱いところも見せ合える、互いに信頼のある関係というところが大きいかも知れない。
一日目は個人戦の予選から決勝まで。個人戦は小太郎先輩しか出ないから、後は応援。小太郎先輩が全国優勝。
終わって合流したら、褒める。めっちゃ、褒める。他の誰かがいたっていい。ハグしたり、頭を撫でたり、全身で褒める。
「優生くん、ありがとう。おかげで頑張れた」
二日目は団体戦。予選と決勝トーナメントの前半。団体は三人立ちでボクは中。二番目の位置。小太郎先輩は安定の落。ボクの後ろで全体を見てくれる。全国選抜というプレッシャーも感じず、ものすごい安心感。ボクも引っ張られるように、過去最高の成績だった。大前の先輩もボクと同じ三本しか外さなかった。小太郎先輩は皆中。的中記録をずっと更新している。
三日目は団体戦準々決勝から決勝。結果、団体は全国三位。閉会式まで終わると夕方近い。
団体戦の結果が出た日はクリスマスだった。宿でささやかにお祝いをする。顧問と補助指導員はアルコール。弓道部員はコーラとジュース。
夕食後、小太郎先輩とクリスマスイルミネーションを見に行った。バスで移動して、街中の大きい公園のイルミネーション。公園の中央の通路が全部キラキラしていた。両脇の大きな木立と真ん中の植え込みが色んな雪の結晶や星を模した光で彩られていた。
流れ星みたいに光が走ったり、音楽にあわせて色が変わったりしていた。
沢山の恋人同士やグループや家族連れが夢みたいな景色を堪能していた。
皆がイルミネーションに夢中だし薄暗いので、ずっと手を繋いで、寒いからその手を小太郎先輩のコートのポケットに入れていた。小太郎先輩は体温が高いからあったかい。
「優生くん、一緒にイルミ見られて良かった」
「小太郎先輩、今日、一緒に立射できて良かったです。夢が叶いました」
「優生くんに逢えて良かった。優生くんが僕を好きになってくれて良かった」
「ボクも先輩と一緒にいられて良かった。ずっと一緒にいたいです」
光の矢がボクたちの所から木立をずっと流れ星みたいに走って行くのに合わせて、良かったことを言い合った。
「来年も再来年も、ずっと一緒にいよう」
「はい」
先輩の言葉に頷いて、いつもより恋人っぽいキスをした。
どうしよう、幸せすぎる。幸せって続くんだろうか? それともいつか無くすんだろうか?
無くしたらどうしようと思ったら、涙が一筋流れた。
「優生くん、どうした?」
「幸せすぎて、不安になっちゃいました……」
俯いて、二人の足元を見て
「何もかも上手くいって今幸せなんだけど、先輩の前にもっと素敵な人が現れたり、何か大変なことが起こったらどうしようって思っちゃって……」
小太郎先輩はボクをぎゅっとして
「優生くんより素敵な人なんかいるはずもないし、大変なことはこれからも起きるだろうけど、二人で乗り越えよう」
先輩の目を見上げた。
「優生くんがいるから、僕はずっと頑張れる。優生くんは僕を助けてくれた。きっとこれからも助けてくれるでしょ」
「それは、先輩のためなら出来ることはなんでもしたいです」
「僕もそう。だから大丈夫だよ」
見上げた先輩の顔とそのずっと上の空から、ふわふわの雪が降ってきた。
きっと、一生この景色を思い出せると思う。
翌日朝ご飯の後、荷物を持ってホテルのロビーの椅子に腰をかけて、駅までのシャトルバスを待っていた。
二人がけのソファに小太郎先輩と並んで。小太郎先輩が、
「優生くん、熱っぽくない?」
って、ボクの額に手を当てた。
「ん、いや、大丈夫か……」
手を外して、そのままボクの額にキスをした。それはいつもの軽いキスだったんだけど……。
「優生……?」
ソファの後ろから声がした。




