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……………… 告白と新人戦

「言うの随分悩んだけど、今言うね。あのね」

 母さんはキョトンとしてそのまま止まっていた。


「ボクね、小太郎先輩が好きなんだ。小太郎先輩もボクのことを好きって言ってくれたから、ボクたち、付き合いたいんだ」

 微動だにしない母さんとか、レアだ。

 

「だからね、もし付き合ってそのままずっと付き合っても、ボクたちに赤ちゃんは来ないんだ。母さんが言ったみたいな、この世の希望は持てなくて、孫を抱かせることも出来なくて悪いんだけど」

「ゆうちゃん……」

「せっかくボクを守ってくれて、育ててくれて、親不孝で申し訳ないんだけど……でも、ボクは小太郎先輩が好きなんだ。小太郎先輩じゃなきゃだめなんだ」

「ゆうちゃん……」

「ごめんなさい。頑張って育ててくれてんのに、ごめんなさい」

「ゆうちゃん、謝らなくていいよ。謝ったら悪いことになっちゃう。母さんが悪かったよ。三つ目の牡丹餅でつい、赤ちゃんの話して」

 

 母さんは手を拭いて、まっすぐボクを見て言った。

「子供はね、産まれてきてくれただけで、もう全部の親の恩は返してんの。育つより先にね。育ったら、あとは、もう、親のものではないんだから、幸せになってくれさえしたら、もうそれで百点。加賀美くんと両思いでゆうちゃんが幸せなら、百点じゃないの」

 頷くだけで精一杯だった。

「誰かと生きるんなら、お互いの気持ちや思いの擦り合わせはしなくちゃいけないけど、譲り合ったり助け合ったりしながら、幸せに暮らしていけたら、もうそれでいいじゃない。ゆうちゃんが我慢したり、傷ついたりしながら不幸で生きていくんじゃなかったら、あとはもう母さんにとっては、生きててくれるだけで、笑っていてくれるだけで百点よ」

「うん」

 

「わかる? 好きに生きなさい。母さんのことでゆうちゃんが我慢することなんかないの。そんなこと望んでない。ゆうちゃんはそのままで母さんの宝なんだよ」

 ちょっとニヤッと笑って、

「加賀美くんが義理の息子なんてすごいじゃない? さすがゆうちゃん、今度連れてきて」

 

「えー……今度ね」

 部屋に行くのにドアに手をかけて、振り返って言った。

「ありがとう母さん。母さんの息子に生まれて良かった」


 ……と言うわけで、大丈夫でした。と、小太郎先輩とさくら先輩と紬先輩にお知らせを送った。

「良かったねぇ」

 拍手、万歳、やったねのスタンプ。追加で、涙のスタンプ。

「やっぱり素敵なお母様だったね」

 という小太郎先輩のチャットに、エヘヘってスタンプで返した。


 さくら先輩は次の週に復帰した。一度に無理はできないので、少しずつ射を増やして練習した。

 ボクはやっと『小太郎先輩赤面症』が治ってきた。


 小太郎先輩が側に来てもドキドキしたり顔がカーッと赤くなったりしない。慣れたのか、落ち着いたのか。一緒にいることが「日常」になってきたって事かも。


 新人戦予選会。

 土日二日間の開催で、一日目は女子、二日目が男子。

 どちらも、応援とお手伝いでその日試合ではない男女それぞれの選手も用がなければ参加。ボクは一日目の女子の部の応援に土曜日も出た。

 小太郎先輩は今年も流鏑馬に出る為、その調整で日曜の試合のみ参加。十人乗りの車で行くので顧問と補助指導員が乗るとお手伝いは三人しか乗れない。もう一人来られないと言うことで、ちょうど定員ぎりぎりの車に弓と荷物を満載して、出発した。

 今日出場する選手たちは弓道着。見学応援お手伝いのボクたちは学校のジャージ。

 ボクは明日の為にも、今日の女子の補欠の働きを見させてもらう。


 団体、個人の順で試合が進む。

 団体は一人十二射を三回射った合計的中数で結果が決まる。さくら先輩たちは三十六射中二十二。結果団体三位なので、次の関東選抜に出場できる。

 術後ここまでの数の弓を引いたことがないさくら先輩は、最後の方は的中が落ちていた。その分、紬先輩が後半の伸びを見せていた。


 午後は個人戦。

 さくら先輩は弓を引いて狙いを定める、会の時間がいつもより短くなってきた。多分、引き分けて我慢できないほど辛いんじゃないかな。

 それでも、予選四中(皆中)。同じく皆中の紬先輩と二年女子が三中で予選通過。準決勝の四射も三射目まで中てていた。が、四射目の矢を落としてしまった。「(しつ)」となって、外れに数えられてしまう。

 紬先輩も三中、もう一人は二中で、さくら先輩と紬先輩が決勝の射詰競射(しゃづめきょうしゃ)に出る。サドンデスだ。何射になるかわからない……。辛そうだけど大丈夫かな……。


 決勝の八人が横並びで順に弓を引く。三番目のさくら先輩と四番目の紬先輩。

 二人とも一射目を当てて四人が外した。残り四人の二射目で四人とも中。

 三射目はさくら先輩が「失」矢を落とす。紬先輩が外した。

 残りの二人が優勝争い。三位と四位だから、二人とも個人でも関東選抜の出場権を勝ち取った。


 戻ってきた二人を皆が泣きながら迎えた。

「やだ、ちょっと、泣かないでよ。次はもっとすごい成績残すんだから」

 さくら先輩は元気だった。

「もも、力尽きても頑張ってるんだもん……」

 紬先輩は他の誰よりも大泣きだった。ボクもだけど。


「優生くん、明日試合でしょ。頑張ってよ、私の分まで」

「えー、ボクなんて……頑張ります」


 帰りの車でさくら先輩と紬先輩は一番後ろの二人席でずっとグッタリと寝ていた。

 お疲れ様でした。


 

 

 


 


 

 

 


 


 

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