悪役令嬢は媚薬を盛る
「ファスター様」
ファスターの私室を訪れたリザーフは、ヒロインとの話をファスターに共有した。
「そうか。育ての親に洗脳されていたのか」
「そのようですわ」
「その者の容姿や名前、情報は何もないんだな?」
「えぇ。転生者ということとヒロインを育て上げるほどのある程度の財力があることと、隣国との繋がりがあること以外はわかりませんわ」
「……てんせいしゃ? それはさておき、隣国とのつながりというと、公爵四家とナバラライト家か」
「あとは、商人あたりも可能性がありますわ」
「なかなか絞れないな……」
「こちらから、一つ仕掛ける方法もございますが」
「それは、リザーフの身に危険はないのか?」
「えぇ、ございません。ですから、」
そう言いながら、リザーフはベッドを指差す。
「あちらで人払いをしてお話を」
「……その提案に下心は?」
「多少」
「おい。まぁ、確かに密談には持ってこいだな。絶対手を出さないと誓うから、先に行っててくれ。人払いをしてくる」
「きたきたきたきたー!!!」
リザーフが勢いよくベッドに向かって駆け出し、ヒロインから受け取ったものをベッドの隅にセットする。
「……なんだ? そのお香は」
「えーと、その……安眠効果のある、聖魔法をかけてもらった、」
「ヒロインから受け取ったものを簡単に信用するなー! 没収!」
「媚薬効果がー!!!」
ファスターはお香を回収して、扉の前に待機していたハッバルアに渡した。
二人は一晩中、真剣に作戦を練って過ごしたのだった。
翌朝、寝不足なリザーフに、寝不足なハッバルアが声をかけた。
「リザーフ様。あのお香はどちらで手に入れられたのですか?」
「え? ヒロインからもらったのよ」
「有害な成分がないか調査の上、興味本位に一つ使ってみました」
「使ったの!? 効果のほどは?」
「一晩中眠れないくらいの効果はあったので、ご利用は絶対お避けください」
よぼよぼと去っていくハッバルアの姿を見て、聖魔法に恐怖を抱いたリザーフであった。




