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第一部   第一章    Ni

 再び、ソイソーの家の一幕です。

 「あら、あなた。今日は遅い出なのね。」エレナは夫にそう言った。彼女は彼のことを、お仕事の時間ですよ、などと言って起こすことはまずしなかった。その必要がなかったからであった。だが、この日は、下の息子が勘違いで出掛けていったその時間よりも少し遅い時間に、彼は食卓にやって来た。その時間、二十分は、もし彼の寝坊であるならば、大変な時間であった。だが、そうではなさそうであった。


 「城に色々と荷が届くから、それを兵達が処理してるんだ。担当の大臣から、君達は遅くても大丈夫だよ、と言われてね。昨日は少し飲みすぎたし、ちょうどいいんだよ、なあ。」


 「サナエ!」彼もショー=サナエがお気に入りの様であった。エレナは少し複雑な心境で彼のことを見ていた。彼が、「サナエちゃん」ような姿のものにここまでの関心を示すことが意外なのであった。夫とは上級学院(私達にとっての『大学』にあたるもの)時代からの付き合いであったのだが、その彼は見た目どおりな真面目人で娯楽等に示す興味の数もかなり少なく、エレナが飼っていた亀にもほとんど無関心なのであった。それなのに、今目の前に居る彼は、がっちりした体から伸びる太い腕の先の大きな手で、それはもう大層優しそうに「サナエちゃん」の頭を撫でているのであった。そして、心の中にあったもう一つのことは、たった今、知ったことであった。


 「お城にそんなに沢山の荷物が来るなんて…、あなた、まさか…?」


 「大丈夫、心配するな。先月だって、互いの代表者による会合を設けたばかりだ。」言い終えてから、彼はショー=サナエを床に降ろした。ショー=サナエはその短すぎる足で階段の方へと歩いていった。後ろ姿を見ている夫にエレナは、更に幾つかのことを尋ねていた。その会話が少し進んだところで、ショー=サナエは右に曲がった。上を見ると、ちょうど上からアーマスが降りてきたところであった。


 「それじゃあ母さん、言ってくるよ。」


 「いってらっしゃい。」

 「気を付けて行ってこい。」その声を聞いてアーマスは振り返った。


 「あれ? 父さんも今日は遅いの?」 「ああ。だが、朝食を取ったらすぐ行くけどな。」

 「ふーん。じゃあ、いってきます。」

 「サナエ!」ショー=サナエは右の翼を振って、「いってらっしゃい」をした。


 「さあて、早く洗濯物済ませちゃいましょ。今日は忙しいわよお。」


 今後とも、よろしくお願いします。

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