第一部 第二章 Ra
『ガーディアンドラゴン』とは一体何者なのか? ソイソー、ショー=サナエ達に力を貸す為に、キィーバドラゴンが送った力とは…。二者は元の広間に戻ってきた。
「ワープする前に何か光ったよね?」
「サナエ、サナエ。」
「左? えーっと…おっ、これか?」ソイソーは上着の左ポケットに手を入れた。そこには一枚のパペルが折り畳まれているようであった。そして、そこを隅々まで触っていくに連れて、少年に焦りの色が見え始めた。
「何で…一枚しか……入ってないんだぁ!」
「サナ?」ショー=サナエは至極冷静な様子でソイソーに問いかけた。
「ここには僕達が朝破いちゃったパペルが入ってたんだよ。」 「サナ。」
「それが一枚しか無いってことはさあ、無くしたってことじゃん!」
「サナエ、サナエ。」 「だから無いって言ってるじゃん。」
「サナエ!」急に、ショー=サナエは激しい様子でソイソーに対し始めた。その直後、自分からリュックを飛び出して、ドスンッ、という鈍い音と共に細い足が着地を決めると、ショー=サナエは手話ならぬ「体話」をし始めた。
「サーナエ、サナエサナエサナエ。」少年はショー=サナエのこの奇妙なくらいに激しい動きを、少し目を細くしながら眺めた後、一つ、フーッ、と息を吐いて、言った。
「分かったよ、確かに急がないといけないよね。ほら見て。」ソイソーは左ポケットの中から一枚になっているツルツルのパペルを取り出した。
「見てよ。何も書かれて…ん、あれ?」
「サナエ。」ソイソーは何も書かれていない面を見て驚いた。取り出したパペルが、一体全体どこで化けてしまったものなのだろうかと、少年はパペルを手の平で触りながら思った。そして、思い出したようにパペルを裏返すと、そこには、多くの線や文字が記されていて、上部の中央には大きく次のように記されていた。
「スンボー山之図」
「サナエ。」
「うん、そうだね。僕が悪いね。……どれどれ。」少年の顔は笑顔だった。しかし、その顔は、ショー=サナエからは見えないようにその復活したパペルで隠されていた。話す声の大きさは父親に叱られた時のように小さかった。
「………。」ソイソーは食い入るようにその地図を見た。前日に何度も使用していたので、見慣れた物である筈だった。「………ちょっと待って。」
「サナエ?」
「ダメだよ。だって、よく分かんないけどこの地図は元に戻った。だけど、地図にはこの洞窟のことは書かれていない筈なんだ。昨日よく見たから覚えてる。だから、今日は、本当はもっと上の方から調べてみるつもりだったんだ。ここに映っている地図だけは…、ちょっと…思い出せないんだけど…。困ったなぁ…。」
「…き…るか。」
「サナエ。」 「?」
不意に、少年は背後から不気味な音が聞こえるのを感じた。それで後ろを振り返ったが、そこには誰も居なかった。もう一回振り返ってショー=サナエの方を見てみると、ショー=サナエは下を向いていた。
「今の、サナエ?」
「…聞こえるか?」何故だか、少年には、この声がショー=サナエの方から聞こえてくるように感じた。
「サナエが……しゃべった。」
「私の声が聞こえていたらそのまま聞いてくれ。これは私からお主らへの一か八かの伝言だ。」
「『一か八か』って、サナエ…。」
「私はその破れたパペルに魔法を放った。私の魔法感覚が鈍っていなければ、お主の上着に入っていた物は、このスンボーを詳細に記したミスティパペルであろう。」
「『ミスティパペル』って…、」
「お主がそれを使えない状況でいるのを、私は地獄耳にも劣らぬ竜耳で聞かせてもらった。それで、お主の力になってあげたいと思い、修復させて頂いた、ということだ。」少年はショー=サナエのことをじっと見ながら聞いていた。ショー=サナエはその間ずっと、下を向いて口をパクパクと動かしていた。
「その肝心なテリー少年の場所だが…、」
「そうだ、テリー…。」
「…はこの洞窟とは別の洞窟に居る。だから、まずは、その地図に従って洞窟の外に出るのだ。さすれば、ミスティパペルは今のこの洞窟から立所に外の様子を映し出すであろう。後は、ミスティパペルの示す通りにテリー少年の元へと行くのだ。私からは以上だ。」
「そうだったんだ。よし…、」
「もし、何か聞きたいことがあっても、ソイソー殿には、声を送れる力は無いであろうから、諦めてもらいたい。」少年は、パンッ、と手を叩いた。やっとのことで気付いたのだった。
「うん。そうだね、キィーバドラゴン。僕は魔法とかが使えないからね。」ソイソーは息を大きく吸うと下を向いた。「ありがとう!」
「…。」ショー=サナエはようやく上を向くと、首を左右にプルプルと振った。珍しく、体の毛が数本だけ抜けていった。
「私は二千年の間…、」ソイソーが地図に目をやってすぐに、再び声が届いた。「いや、私の仲間達はもっと長い間であろう。この時が来るのを待っていた。」少年は地図が斜めに見える格好のまま数秒間、その先を待った。「だが、真のその時はまだ先となろう。お主が自覚をした時に………。お主が自らを『ガーディアンドラゴン』と悟ったその時に、私とお主らは改めて会うことになろう。」
「ガーディアンドラゴン…?」少年の声は非常に曖昧であった。
「主よ、その時は必ずやこの剣、お返ししましょう。どうか、その時まで、ご無事で! ……。」
伝言はここで途絶えた。
これからも、どうぞよろしくお願い致します。




