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第一部   第一章    Tsu

 入ったことの無い部屋っていうのは、確かに気になるもので、いろんな想像をしたものです。でも、実際、入ってみると、案外大したことなかったりもしました。

そういう場所は、もう、以降はただの部屋ですね。

 ソイソーはその場所に、「超」を付けて呼んでいますが、何があったんでしょうかねー?

 今回は、何やら怪しい者達も登場します。

 「(あのパペルは図書棟の、しかも三階にある『超特別極秘部屋』から借りてきた魔法の地図だったんだ。それなのに…。弁償は確実だな。そんでもって、怒られるな。絶対。今までになかった怒られ方をするんだろうな、きっと。……。まあ、ここまでは明日以降の話だ。問題はこれからこれから。取り敢えず、抜け出すことには成功したけど、もう幾つか突破しなきゃならない問題が有るなあ。最初の問題は、城下町の門だ。でも、ここは何とかなる計算だ。ショー=サナエが居たらの話だけど…。それでも、前の時は居なかったじゃないか。あの時の僕はちょっと凄かったなあ。あんな感じで行ければ、門兵をすり抜けることはできるな。うん、大丈夫だ。その次が問題だ。…辿り着いた後だ。…。テリーには、勘で探す、みたいなことを言っちゃったけど、それじゃあ絶対に負けると思って借りたスンボーの地図、それが使えないのは辛いなあ。魔法力が戻ってくれればまた元通りになるかもと思って、破れた地図は一応持ってきたけど、やっぱりまだ二枚共ただのパペルのままだ。テリーには何としても勝ちたいから、これを元通りにする方法を意地でも見つけないと…、ん? おっと、危ない。)」


 ソイソーは前方に数名の兵が立っているのを見つけた。次の十字路を右に曲がると、少年で言うところの「最初の問題」に当たる場所に辿り着くのであったが、その十字路に彼らは居た。おかげで、問題の数は増えてしまった。「最初の問題」は彼らに見つからないようにする、ということとなった。兵士の数は三。まだ若い感じの者が二人に、少年の父親くらいの者が一人だった。もし、三人とも若かったら、ソイソーは顔を下に向けて走り抜けていくつもりであったが、それも運頼みな行為と言えるものなのであった。今年採用された末端の新人兵士でもない限り、ソイソーをただの少年と見なすことは有り得ないのであった。二年目の兵士だとまだ覚えられていない可能性もあったが、それは分からなかった。大体は、顔を見られればまずこう言われるのである。


 「何処かへお出掛けですか? お供致しましょう。」そうなれば、ソイソーの今日という運命は全く違った展開を見せることとなったのだろう。休日の昼時を、町を歩くことだけに使って、結局家に戻ってその後、少年にはよくある、母親からのお叱りを受ける、というようなある意味で平穏な休日を過ごすことになり兼ねないのだった。ソイソーはしばらく薬屋の前に積んである木箱の陰に隠れて、彼らが何処かに行くのを待つことにした。


 一分と少し経つと、一人の兵士が彼らと合流した。その彼は、年齢的には先に居た三人のちょうど真ん中くらいの感じであった。四人になった彼らは最初、一人分ほどの間を空けて向き合うように立っていたのだが、すぐに、込み入った話をするかのように密着する形になった。そして、実際、四人目の兵士がやって来た方向を度々指し示しながら何かを言っている様子であった。ソイソーは、その方向が自分のこれから向かう先であったので、少し気になった。この光景を少年が見かけるのがここ最近で二度目であるから、それは尚更であった。


 「確か、あの雨の日も…。」場所もその十字路であった。城下町から外に通じる所は、(魔)電車の線路を除けば、一般に使用しているのは三箇所、西門・南門・東門である。スンボーの山に行く為には西門から出る必要があり、ソイソーは前回と今回で同じ道を歩いていた。今居る場所は、西門がある東西大通りの一番西側にある十字路の北側小通りであった。


 兵士達の話は終わったようだった。四人の中で一番年の者が、少年の視界から見て、右側に体を向けて小さく頭を下げた。他の三人もそれに(なら)って頭を下げた。そして、四人はこちら側に向かって歩き出した。その瞬間、少年はまず、「あれ?」と思った。彼の行動はここから前回と違っていたのだった。その時の彼らは南へと向きを変えて、雨の中に消えていく形であった。予想外の動きに驚いた後、少年は「(今回消えなきゃいけないのは僕だ。)」と思った。このままではあの人達に見つかっちゃう、という状況にソイソーは立たされた。少年の居る所が陰となっている状態なのは十字路から見た時だけであった。そして、木箱はよりによって、彼らが小通りに来た時に少年が旨く遣り過ごすことができないような、建物に接した形で置かれていた。兵士達はすぐそこまで来ていて、少年に残された選択肢は一つに絞られることになった。


 「(行きたくなかったけどなあ。…仕方ない、行くか。)」少年は覚悟を決めて中に入った。だが、案の定、ソイソーは同じ道を辿って来たことを後悔するのだった。


 「あーら、ソイソー坊ちゃん! 今日もお出掛けですか?」


 「ちょっと、静かにしてよ、おばさん。…あ…。」

 「こら、また『おばさん』って言った。私はまだ三十二よ! お姉さんと言いなさい。」


 「(あーー…、ダメだー…。)」と少年は思った。店に居た者の声は甲高く非常に大であった。四人の足音はすぐそこにあった。ソイソーは観念したように頭をダランっと下げた。だが、彼らの内、少年の父と歳の近そうな者だけが少し右を向いたのだが、誰一人として「ソイソー」の存在に気付く者はいなかった。過ぎ去っていく彼らを見て、少年は再び「あれ?」と思った。「お姉さん」の声はこの辺りでは有名で、少年が友達とこの近くまで来た時には、「ここにも八百屋さんがあるんだ。」と言うくらいであった。だが、ここは薬屋なのであった。浅く被る山吹色の帽子も象徴的な、「お姉さん」が一人でやっている店だった。ソイソーは今居るその店からそっと顔を出した。後ろからではあったが、急いでいる足取りであるように、ソイソーは感じた。


 「たすかったー。」ソイソーは右手をおでこに持っていって汗を拭うような仕草をした。


 「あーら、兵隊さん達行っちゃったわねえ。せっかく坊ちゃんの場所教えてあげたのに。」


 「もー、大丈夫だって、『おねえさま』。今日だって、そんなに遠くに行く訳じゃないんだから。」どんな少年でも吐く嘘であった。しかし、彼女も、ソイソーのことを「坊ちゃん」と呼んでるだけのことはあった。


 「あら、そうなの? でも、これ持っていきなさい。」そう言って、薬屋のお姉さんは、大人の人差し指ほどの大きさがある木製の瓶をソイソーに手渡した。「疲れた時に飲みなさい。お城の兵隊さんがよく使ってる物だよ。」

 「…。ありがとう、お姉さん。代金はしゅっせしたら払うからね。」ソイソーは薬屋のお姉さんに深く頭を下げた。その時、彼女はソイソーの背中にある大きなリュックに目線が行った。そして、薬屋のお姉さんは今一度少年に声を掛けようとした。しかし、


 「それじゃあ、僕急いでるから。」という声が先に出て、ソイソーは振り返っていた。彼女の口は僅かに開いたところだったが、一瞬閉じてすぐに大きく開いた。


 「『出世払い』みたいな言葉を使うのは私の方だよ、全く。気をつけてねえ。」ソイソーはもう一度四人の向かった方を見ていて、彼女の声には一瞬振り返って手を振る形で応えた。その後、ソイソーは目的の場所に向かって再び歩みを始めた。薬屋のお姉さんは店の外に出てソイソーに手を振った。少年の為に静かな見送りをしたのだった。最後の一声は非常に大きかったのだが。


 少年はすぐに見えなくなって、彼女はゆっくりと手を下ろした。その刹那、一陣の緩やかな風が背後からやってきて、彼女の山吹色の帽子が飛ばされそうになった。彼女は(すんで)の所で頭に手を当てた。「…。」薬屋のお姉さんは店に戻ろうと、後ろを振り返った。


 「あら?」すると、向こうから、彼女の普段はまず目にすることがないような者が歩いて来た。いや、その者の仕草を見ている限り、走ってきた、と言ってもいいかもしれなかった。だが、そのようなことよりも彼女にとって妙なことは、その者をいつか何処かで見たことがある気がするということであった。その者の青い瞳は、彼女が気付いた時点から、ずっと彼女の方向を見続けていた。薬屋のお姉さんは本能的にその者に向かって小さく手を振った。相手は、しばらくはただ足を動かしていくのみだったが、その後、一瞬だけ右側の方で彼女に返事をした。そして、彼女のことを通り過ぎる少し前のところで、その者は目線を自分の進む方向に戻した。そのままその者は行ってしまった。


 「あの子…、」かなり長い時間であった。しかし、彼女にはほんの数秒の出来事のように感じられていた。実際は十倍、二十倍長い間、異境の風を感じていたのだが。その風はキィーバに流れているものと非常に似ているものであったが、それよりも厳かであって少し柔らかさも感じられるものであった。薬屋のお姉さんが感じ取れるものはその中の一部であった。それは、彼女の上級学院で学んだ記憶を呼び覚ましかけたが、ちょうど太陽が雲に隠れたところでそれも頭の片隅に戻っていってしまった。彼女は無意識に足を一歩だけ南に動かしていった。「親とはぐれちゃったのかしら? 何か慌てている様に見えたけど…。」


 薬屋のお姉さんは学生時代に、体術部に所属していました。そういうことあって、ただいま、彼氏いない暦がかなり長く続いているところです。内心では、相当焦っているらしいです。

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