おっさんと相談事の日々
俺が救出されてから2週間が経過した。
あの時の疲労からか毎日昼過ぎまで寝てしまい、不調からか夜も早い時間に睡眠についていた。
ああ、不調なんて言い訳だ。
いつも通りダラダラしていただけだ。
そうそう、俺の救出に来てくれた冒険者はギルド長がリストに纏めておいてくれたおかげで、後日になるが全員に食事を奢った。ランクに関係なく全員だ。未成年のGランクの少年も来てくれたみたいで、おじさんは感動した。
さて、今日は何をしようかと思いながら人の少なくなった食堂で遅い昼食を食べながら考えているとユウジがやってきた。
「ラグさん、ちょっといいですか?」
「ああ、構わんが何か相談事か?」
「はい、実は…」
対面に座ったユウジが深刻そうな顔で話し出した。
「俺のパーティーにはファーミ―って貴族の娘がいるんです。この前、護衛依頼の途中に皆で彼女の実家に寄った時に、家名もちということで貴族と間違われた上に娘が決めた婚約者だと向こうの親が思い込んじゃって…。そのまま誤解が解けないまま護衛を続けてたら、彼女の実家から俺とファーミーの婚約披露宴の招待状が身近な貴族に送られて来たんです。いまさら誤解なんていうと貴族のメンツを潰すことになるし、どうしたらいいですか?」
ハーレムパーティー作っているユウジだから、誰か別の娘を落としたいって相談かと思いきや、この上なく面倒な事になったな。
貴族はメンツやプライドの為なら必要以上に金を出す。おそらく、今回も結構な額を使っているんじゃないのか?
「ユウジ、君はどうしたいんだ?ファーミーと結婚して貴族になる。または結婚して冒険者を続ける。それとも結婚せずにファーミーと別れて冒険者を続けるか。いや、そもそもファーミーは何て言ってるだ?」
「…結婚はまだ早いって。この前イリアさんからファーミーの剣は筋が良いって褒められて冒険者を辞めるつもりは無いって言ってました」
…なるほど。ファーミーってあの剣士の子の事ね。以前、牢屋の中にいる俺を助けてくれた子か。今、顔と名前が一致した。最近の若い子は皆カワイイから区別がつかないんだよな。おじさんあるあるだな。
「なるほど、ユウジはファーミーと結婚してもいいと思っているだな?」
「…はい。貴族になれば、第二婦人とかもオッケーって聞いたんで…」
若い健康な男子の正常な考え方だな。貴族になって偉くなり、多くの女を囲う。誰しも若い頃に見る夢だ。
「…ん?二人とも将来的には結婚してもいいなら、婚約しても問題ないと思うが?」
「ええ、ですから、俺みたいな未熟者が彼女を幸せにできるか心配で…」
おーけー、惚気だな。恨み、辛み、妬みは俺の得意分野だが、惚気話を聞く気はない。
「ユウジ、男ならドシッと構えて、何者にも動じない姿を見せないと、ファーミーに情けない姿を見せるつもりか?失敗しても笑い飛ばせるくらいの気概を持て。胸を張って、上を向いて、堂々と生きるのが男ってものじゃないのか?」
「そうですね…」
「まだ気合が足りないようだな。闘魂注入するか?」
「…お願いします!」
「よーし、目をつむって歯食いしばれ」
ユウジは目を硬く瞑り、歯を食いしばり、力を込めた。
俺は近くにいた給仕の娘に無言のジェスチャーでユウジにビンタするようにお願いした。
最初は首を振っていた娘も拝み倒して力いっぱいビンタした。
パシーンと甲高い音が響いた
「ありがとうございます!」
ユウジは目を瞑りながら深々とお辞儀をした。
給仕の娘の前に割込みユウジの肩を叩いた。
「何かあったら、いつでも相談に乗るぞ」
「はい!失礼しました!」
ユウジは吹っ切れた顔をして飛び出していった。
うむ、若いってのは良いものだ。真っすぐな気持ちで頑張ってほしいな。
それにしても、ユウジは鈍感だな。
闘魂注入でビンタと言ったらボンバイエの人しかいないじゃないか。
それも、異世界では誰も通じないネタだぞ。
鈍感なのか注意力散漫なのか、わかんらんが、貴族になってやっていけるのか?
あと、給仕の娘よ。もう、ビンタは頼まないから素振りとかしなくていいから。




