精霊の面子
くまモンじゃないほうを選んでしまった俺!
剣ちゃんはいつも目立たない子だ。自己主張もあまりせず、本来は大人しい子だ。
いつも慶ちゃんの後ろにくっついていて、慶ちゃんのマネっこばかりしている。
あまり主体性はない。
でも、今日、スーパーでイチゴが売ってたとき、俺は佐賀産の大きいイチゴを買った。
熊本産の紅ほっぺと佐賀のさちのかを売っていたんだけど、べにほっぺはものすごく粒がちいさかった。佐賀のさちのかは凄く大きくて食べ応えがありそうだった。
そりゃ、佐賀産を買うよね。
でも、熊本産にはくまモンの絵がプリントされていた。
今日は剣ちゃんのイチゴの番だった。
剣ちゃんは迷わず「くまモンの買って!」と言った。でも、お供物は一旦、精霊様にささげて、そのお下がりを人間がいただく形になる。それによって、精霊様は、
人間に施しをしたということで徳があがる、ようは精霊が得るものは高徳であり、名声である。だからイチゴがどこ産であろうとあんまり関係ない。それに、
結局食べるのは人間だ。
だから、俺は軽くかんがえて、「まあいいじゃん」と言って佐賀産の大きなイチゴをとって買った。
剣ちゃんは自分の主張が入れられなくて、唇をとがらせていた。
その時はそれで終った。
しかし、そのスーパーの帰り道、小さな地元の小売店で、イチゴの特売をやっていた。1パック499円だが、、熊本産のさちのかでものすごく大きかった。しかも、くまモンのプリントがしてある。すごくおいしそうだったので、俺はそれを買うことにした。次は忍ちゃんの番である。忍ちゃんは自分の番が早く回ってきたので、すごく喜んでいた。剣ちゃんは自分の番じゃない。くまモンなのに、もらえない。体を小刻みに震わせていた。オレは、これはヤバイと本能的に思った。精霊を怒らせるとよくない、霊を怒らせる一番の事は、面子を潰すこと。昔、九州を自転車旅行していたとき、お稲荷様の祠をみつけて、祠には10円そなえ、その横にあった小さな瀬戸物のキツネには「君はちっこいから、1円でいいよね」と言って1円を供えた。その時はなんともおもわなかったが、
霊の世界では大きかろうと小さかろうと、格差をつけることは面子を潰すことにあたり、非常に恐ろしいことなのだ。結果、そのあと、俺は山で日が暮れて、
側溝に落ちて肋骨の骨を折る、恐ろしい体験をした。
まさか剣ちゃんはそんな怖いことをする精霊ではないが、面子を潰すことによって、確実に関係は悪くなる。今後、今までみたいに無邪気にふるまってくれなくなるかもしれない。そうしたら、気まずい。ちょっとしたお金のことじゃないか!俺は奮発して3パック、1500円分のイチゴを買った。剣ちゃんは目をまんまるにしてパチパチしながら俺を見た。しばらくして目がうるんできた。
「はい、これ剣ちゃんの、くまもんだよ」
そういうと、剣ちゃんは目をうるませながら俺にだきついてきた。
「ありがとう!」
いつもは、とろーん、のたーっとしている剣ちゃんがこれだけはっきり表情を表すことは珍しい。
ああ、本当によかった、と俺はおもった。
最終的に剣ちゃんと仲良くできてよかったよ!




