あと14日/両親挨拶後
「遠回りするか」と言われて頷けば、数分後には、車は大きな幹線道路から高速道路へ進路を変えていた。
街灯が、数秒ごとに車内を照らしていく。
「……あー、ひっさびさに緊張した」
「全然そうは見えなかったけど」
棘のある口調に、泉がこちらへちらりと視線を寄越した。
「なーに膨れてんだよ」
「膨れてねぇよ」
「じゃあ『ぼく不満ですぅ』って顔やめろ」
「んな顔してねぇ」
「してんだよ。なんだ、不満があんなら言ってみろ」
「……」
少しの間。
やがて、ポツリと。
「……『運命の番です』って言った」
神楽は口を尖らせた。
「あ? なんか悪かったか?」
「悪いっつーか、前に『運命なんかない』って言ってたじゃん……」
「言ったか?」
「言った。教室で、女子たちにさ……」
「……あー、あれか」
泉はネクタイを緩めながらシートに背中を付けた。
「あれは一般論だ」
「うーわ出たよ」
「うるせぇ。あの場で『運命の番はいまぁす』って言ってみろ。余計めんどくせぇことになってたぞ」
「……」
行き先を示す緑の看板が眩しくて、目を眇める。
「それに、運命かどうかなんて結局は当人同士しかわかんねぇだろ。本人がそう思ってんならそう言やいいんだよ」
「……大人って……」
「方便っつーんだよ、覚えとけ」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でられ、「やめろ」と抗議すると、今度は耳朶を指先で弄られた。
出そうになった声を、息を呑むことでやり過ごす。
「──お前さ、次のヒートいつだ?」
「唐突すぎんだろ。……えーと、あと二週間? ぐらいだと思う」
「んじゃ、その頃になったら抑制剤飲むのやめろよ」
「──あ、……うん……」
俯く横で、ふ、と笑う吐息が聞こえる。
「急に素直になんのな。かーわいー」
「……うっせぇよ……」
(だってそれ、『噛むぞ』って予告じゃんか……)




