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伝説の魔法師リサベル

オークを引きつけながら逃げていたジルコニウム騎士達だったが、山頂付近まで到着したところでその歩みを止めるしかなかった。

「……………我々はここまでのようだ。この先はミスト王国領になる。これ以上進めばミスト王国に被害が及ぶだろう。皇太子妃の命と母国を守る最善を尽くすために、ここで戦うことを選ぶ。」

疲弊している騎士への、死刑宣告とも取れる言葉を告げる騎士長の顔が歪む。

自分の見積もりが甘かったと反省してもいまさら意味はないが、それでも状況を正確に判断してルート選択をしていれば………と考えてしまう。

自分の不甲斐なさで部下達の命が巻き添いになると考えれば合わせる顔はなく、部下の顔を見る勇気が出なかった。

そんなときである。

1人の若い騎士が進み出たのだ。

「騎士長!そんな顔しないでくださいよ。我々は天下のジルコニウム騎士です。その力、存分に発揮してやりましょう!」

その言葉を聞いた周囲も声を出して士気を高め始めたのだ。

「…………お前たち……」

「なんて顔をしてるんですか!目の前は肉の山なんですよ!終わったらオーク肉でパーティーでもしてやりましょう!」

笑顔でそう話す騎士達の言葉に、笑みさえ出てしまう。

「はははははははは!………まったくだ!これだけいればしばらく肉には困らんな。よし!自分の肉は自分で用意してこい!」

「ハッ!!」

威勢のいい掛け声に騎士達は踵を返してオークへと剣を抜く。

「散会して急所を狙え!2人1組で行動して深追いはするな!」

木の影に身を隠しながら騎士達が次々にオークを切り倒していく。

カカン山脈の頂上付近には木がまばらのため、騎士長が全体を見渡しながら指示を出す。

倒れ鳴き声を上げるオーク達だが、数の暴力は恐ろしく、徐々に木の少ないところにまで追い詰められ始めていた。

切り倒したのは50ほどに上るだろうか。

肉の量としては申し分ない数を討伐したはずだが、それでもまるで減ったようには見えなかった。

「…………ここまでなのか?いや……数を減らすだけでも意味はある!」

周囲の木が倒され始め、部下の騎士達が追い出されるように集まって来た。

「騎士長………せめてここで散る命なら、盛大に散ってやりましょう!」

「はははははは!まったく…………これではどちらが騎士長か分からんな!」

周囲からまさか自分が鼓舞されるとは思わなかった。

気持ちのいい仲間に出会えた。

こいつらと共に国の未来を担う少女の命を守れるならば、文句はない。

そう思わせてくれるのには十分な言葉だった。

「我らは死をも恐れぬジルコニウムの騎士である!同盟国のミスト王国に一歩も近づかせるな!恐怖など捨てろ!心を燃やせ!そして我が祖国、ジルコニウム帝国のために命を燃やせ!」

その言葉を聞いた騎士達は、次々と剣を空に上げて声を上げた。

「オールハイル、ジルコニウム(ジルコニウム万歳)」

「行くぞ!俺に続け!!」

騎士達は決死の特攻を仕掛けていく。

隠れる場所はもうない。

後退など許されない。

次々にオークに剣を突き立てていく。

一撃を受ければそれまでだろう。

それでも守りではなく攻撃を行なっていく。

気が付けば仲間がどんどんと倒れていくのが見える。

(…………俺も直ぐにそっちに行くさ。)

1匹でも多く討伐する。

それこそが自分の使命のように感じていた。

だが、無敵にも思えたオーク討伐が、絶望へと落とされた。

目の前に突如として大きな山が現れたのである。

「……………あれは……オークロード……バカな!」

キングの存在は可能性として考えていたが、さらにその上位のロードの事は予想外であった。

しかもロードの両脇には、オークキングがまるで飛車と角のように立っているのだ。

「ははははは……………こりゃーまいったね………」

ロードはその体格から5階建ての建物に匹敵する大きさである。

騎士では首まで届かない。

キングですら軍隊を用いて討伐する相手なのだ。

もはや勝ち筋は完全に消えていた。

「……………来いよデカブツ!」

ここが漢の引き際だと決め、そう声を上げたときである。

ロードが雄叫びを上げたのだ。

その声はどこまでも大きく、その衝撃で地面が激しく揺れるほどであった。

「ぐぅぅぅぅぅぅ………なんつー馬鹿でかい声してやがる………」

立ちあがろうとしたときにフラついて気がつく。

右の鼓膜が破れて三半規管がイカれたのだ。

平衡感覚もままならないこの状況では、普通のオークすら危ういだろう。

いくら考えても打開策など見つかるはずはない。

目の前では軽々しく巨木を引っこ抜いて枝を打ち、あっという間に棍棒のようにしてしまったロードの姿が見えていた。

(ここ………までか……)

近づいてくるオーク達を前に、もはやどうすることもできない。

目を閉じて死を受け入れるつもりでいた。

だが突如として激しい閃光と共にオーク達の声が響き渡ったのである。

「……っくぅ、一体今度はなんだ!?」

騎士長が目を開けると、黒焦げになったオークが目の前に倒れたのである。

何が起きたのか分からずに混乱するが、次々とオークが閃光と共に黒く焦げ落ちて倒れていく。

「……………これは……雷!?それにこの威力はなんだ!?極大魔法か??」

雷はどの属性にも当てはまらず、“神のいかづち”と言われ、これまでどの魔法師にも扱う事ができなかったのだ。

まさに伝説級の魔法である。

それに加えて威力も凄まじく、雷に打たれたオーク達は一瞬で丸焦げになってしまう。

「これは………女神のイタズラか!?」

そう考えて、騎士長はただボー然とその光景を眺めているしかできなかった。

すると山向こうのミスト王国側から声が聞こえて来たのでだ。

「すみませーん。わたくしがそちらに入っても不法侵入扱いを受けたりしませんわよね?」

声のする方角を見ると、黒のローブにとんがり帽子という、明らかに“魔女”と呼べる存在が立っているのだ。

「……………非常時ですので構いません。これは…あなたが?」

「お邪魔でしたか?ですが状況的に、わたくしがお助けする必要を見受けられましたので………。申し遅れました。ミスト王国王女、アリス・ド・ミストより拝命して救援に駆けつけました。リサベル・ランロック・ローダンセにございます。」

「…………その格好は………?」

そう言われたリサベルが恥ずかしそうに顔を赤らめる。

「これは致し方なく着ただけです!帽子は制服ですし、ドレスから制服に着替える時間がもらえませんでしたので…………」

よく見るとローブの下には、貴族の令嬢が着用するドレスがチラリと見えている。

「ローダンセ嬢、助けていただいたのはありがたいのですが、向こうにオークキング2体に加えてオークロードまでいる。流石に戦力が足りない。どうかローダンセ嬢だけでも逃げ……………」

「逃げませんわ!」

リサベルが食い気味に宣言する。

騎士長は驚いてリサベルをみるが、大量のオークを前に自信を見せる姿に唖然としてしまう。

「しかしローダンセじょ………」

「くどいですわよ!わたくしにはこのような実戦の場がありませんでした。わたくしの力がどれ程なのか、ここはいい力試しの場なのですから!」

リサベルはアリスとの会話の前までは自信がなかった。

だからこそ、アリシア達がジルコニウムへロイド救出のために向かった時も、ついて行かずにロゴス領に引きこもってしまった過去がある。

そんな不甲斐ない自分を誰も責めはしなかった。

それは優しさなのか、当然の事だと考えてくれているのかは分からない。

だがそのときに一歩踏み出せなかった事を、誰よりも自分が許せなかった。

(折角アリシアに直接指導を受けていたというのにあの失態…………。今度こそアリシアを助けるために力を使う…………)

アリシアから学んだ自然現象、術式の展開方法、そして魔法コントロールの技術………

入学前に学んでいた魔法理論が根底から崩された気がした。

だがそのすべては間違えていなかった事を体験して知った事で、納得もできた。

師匠アリシアを助けるため、今度こそわたくしは逃げませんわ!」


力強くロッドをオークに向けると、リサベルは周囲の木々から少しずつ水分をもらい、数え切れないほどの水球を作り上げたのだ。

「こ、これは…………何処からそれほどの水球を………」

騎士長が目を丸くしているのをよそに、リサベルは涼しい顔でさらに作り続ける。

木、地面、そして空気中から水分をどんどんと奪っていく。

幸いにして森の中だけあり、水分には困らない。

アリシアから学んだ自然現象を元に周囲から集めただけなので、自分の魔力はさほど使ってはいない。

「いきますわよ!」

リサベルは1000にも及ぶ水球を一斉にオークへと向けたのだ。

その水球すべてがオーク達の顔に張り付く。

『リサベルの魔法コントロールは天才ね!』

アリシアの声が思い出される。

自分が唯一アリシアよりも得意なこと。

それが魔法をコントロールする事なのだ。

(水球の1000でも2000でも操ってみせるわよ!)

リサベルが作り上げた水球が、オークの呼吸を阻害する。

立ちながらもがき苦しむオーク達だったが、しばらくすると次々と倒れて動かなくなっていったのだ。

「……………なんて魔法だ……それにこれだけの魔法をすべて制御しきる精神力………まさか伝説の魔法使い(エクストラ・マギ)なのか………?」

騎士長は目の前で起こる事が信じられず、ただボー然と見守るしかなかった。


すべてのオークが倒れたが、キングの生命力は凄まじく、未だにもがいている。

ロードに関しては水球の大きさが足りずにびくともしていないのだ。

「あとはあの3体だけですね…………」

リサベルが空に杖を掲げると、オークキング達の頭上にもくもくと高くまで雲が形成された。

「ローダンセ嬢………今度は一体……」

「………?先程もご覧になったのではありませんか?」

そう言うと、キング目掛けて雷が落ちたのである。

激しい雷鳴が轟き、2体のオークキングが力無く倒れた。

それを見た騎士長は度肝を抜かれたようで、驚きのあまりに口が開いたまま固まっている。

「雷を魔法で発生させるのは難しいですが、水蒸気を集めて冷却し、それらをぶつける事で電気が発生します。電気は大きい物質へと流れる性質があります。ここでならもちろん地面ですわ。あとは雲と地面の間に流れる電流の道にオークを配置すれば良いだけです。」

リサベルはかなり省略して説明したのだが、騎士長には何も理解できなかった。

ただ目の前でオークキングが同時に2体、一瞬のうちに討伐された事だけは分かる。

「……………これほどの魔法を操れるのか………?先ほど話していた師匠とやらは誰なんだ!?ミスト王国にこれほどまでの魔法師が他にも存在しているのか!?」

誰が見ても、リサベルが放った魔法の全てが“規格外”であった。

500年前ならいざ知らず、現代の魔法師が放つ魔法など1人の力では水球1つを作れるだけでも魔法師団に入れるレベルである。

それを簡単に1000もの数を作り、集団のオークを殲滅したのだ。

そこに実現不可能と言われた雷魔法である。

それ程までの魔法を目の前の少女が使いこなしているのだから、その師匠なる人物はそれ以上のバケモノだと考えても無理はなかった。

しかしリサベルは、その言葉を聞いて笑顔で笑い飛ばす。

「騎士様は面白い事をお聞きしますわね!すでに会っているではありませんか。」

リサベルがそう話しても、騎士長は未だにピンと来ていないようだった。

すると遠くからこちらに向かって走ってくる人影が見えてきたのである。

「噂をすれば、わたくしの師匠のお出ましですわ!」

騎士長が見ると、アリシア達がこっちに走って向かってきているのが見えたのだ。

「リサ!?何でここにいるのよ!?」

合流して早々に、ミモザが驚きながらリサベルの身体をベタベタと触って確認する。

「本物ですわ!おかしいですわね、アリス様がこちらに向かう事をお伝えしておくとおっしゃっていたのですが…………」

その一言でアリシアがため息混じりで納得する。

「………救援に人を出したってリサの事だったのね。そうならそうと、誰が来るかを教えてくれても良かったのに。」

「えぇ!?アリス様が送ったって言う戦力ってリサの事なの?」

ミモザもやっと気がついて驚いているが、リサベルは不満そうである。

「………………なによー、不満なわけ!?」

膨れっ面のリサベルにアリシアとミモザが吹き出して笑ってしまう。

「今度はなによ!急に笑い始めて!」

リサベルがぷりぷりと怒って文句を言う。

するとアリシアとミモザは顔を見合わせて声を揃えてこう言ったのである。

「リサはその話し方がやっぱりしっくりくるわ!」



和やかな空気が流れているが、未だにオークロードは目の前から動いていない。

自分の周囲の仲間達が全員やられたと言う状況をじっくりと観察しているようであった。

「アリシア様はこのままミスト王国側へとお逃げください!わたくしどもが命に変えても死守いたします!」

なんとか集まり始めていた騎士達だったが、もはや満身創痍である。

むしろ立ち上がることすら困難な者までいる。

それでも次期皇太子妃の護衛としての矜持を全うしようとしているのだ。

だがそれを見てリサベルがにこりと微笑んだ。

「騎士様。先程わたくしの師匠がいるとお話ししたではありませんか。あれくらいの魔物であれば、2人揃えば難なく討伐できますわ。」

そう言うと、リサベルはアリシアの肩を叩いた。

「師匠!いけますよね?」

その言葉を聞いた騎士達は完全に固まってしまった。

1000体ものオークに加え、オークキング2体をも圧倒した魔法師リサベルの師匠が、護衛対象の次期皇太子妃だと言ったのだから無理もない。

「…………アリシア様が………ローダンセ嬢のお師匠様……?」

完全に何を言っているのか分からないと言ったような騎士達に、リサベルは笑顔で肯定する。

「はい!魔法理論のすべてを教えてくれたのはアリシアですわ!もちろんまだ師匠は超えておりませんので、これからも、もっと教えて頂かなくてはいけないのですわ。」

謙虚に装うリサベルに、アリシアはため息混じりである。

「リサ?何度も言うけど、リサに教えることなんてもう無いわよ?あとは実戦だって言ったじゃ無い。」

「あら?じゃあその実戦での指導も是非お願いするわ!今が良いチャンスじゃない!あそこにデカい的が有るんですもの!」

そう言ってにこりと微笑むリサベルに、流石のアリシアも吹き出してしまった。

「ぶふっ。オークロードを的扱いにするなんて、もう実戦経験も十分見たいね!じゃあ折角なんだから共闘と行きましょうか!」

アリシアはレイピアを抜くと剣を構えた。

「何でいく?できれば周囲に被害が少ない方が良いんだけど………」

「それなら光魔法を試してみたいわ!」

リサベルのその言葉に、アリシアも同意する。

「それじゃあ一気にやっちゃいましょう!準備はいい?」

「もちろんよ!」

そう言うと、2人は空中に光を集め始めたのである。

夕暮れでやや薄暗くなっていた周囲が、完全に暗闇へと包まれる。

リサベルとアリシアが、周囲の光を一点に集めたからであった。


以前リサベルへの講義中に、アリシアが説明していた。

『昼に輝く太陽のエネルギーは莫大なの。あの力を集める事ができれば、世界中のエネルギー事情が解決できるわ!』

この世界においては、そもそも“エネルギー”と言う概念すら無いため、リサベルもその意味を理解するのには時間がかかった。

だが熱、光、運動などがエネルギーだと説明をされて、実験を通した説明が分かりやすく、理解することができたのだ。

『…………何も知らない状況から理解ができるなんて、リサはもしかして天才なのかしら?』

アリシアが褒めてくれるので、それも嬉しくなって勉強に時間を費やした。

自身の領地の問題で時間が取れない事も多々あったが、それでも時間を見つけては様々な自然現象に興味を持って研究にのめり込んだのである。

その集大成が、この光魔法であった。

アリシアが構想して、リサベルが初めて作った魔法である。

あまりの威力に使う場面が制限されるが、今こそ使う時であると判断した。


魔法詠唱は、力を持つ。

不完全な状況や制御が難しい時には、詠唱を行う事で制御をし易くするというメリットがあるのだ。

普段、理論が解明される現象などを用いた魔法は想像がしやすいために、無詠唱で魔法発動を行う2人だが、光魔法ともなればそうはいかない。

光は質量を持たず、直線的に動く性質がある。

何よりも当のアリシアでさえ、光が何なのか?と聞かれても正確には答えられる自信がない。

そんな光を制御するには、容易なことでは無いのだ。

光を集めたことで周囲が暗くなり、まるで悪魔が降臨するのかと言う雰囲気になり、騎士達が周囲を警戒している。

しかし数秒後、オークロード周辺に無数の光が溢れ始めたのである。

「「distraction ray!」」

声を揃えて詠唱された魔法は、暗闇の中でまばゆい光を放ちながらオークロードを覆い尽くした。

周囲はあまりの眩しさで目の前が真っ白になり、その魔法を見ることはできない。

だが一瞬のうちに光が晴れると、オークロードの身体が地面へと崩れたのである。

「………一体……何が……」

騎士長が目の前で起こった光景を前に、理解ができずに完全に思考が止まってしまった。

リサベルが無数の水球を作ってオーク達を殲滅し、雷魔法でキングを倒してしまった事にも驚いたが、討伐実績がないロードすら瞬殺したのだ。

その光景を観た周りの騎士達も同様だったようで、ただただ呆然と倒れていくロードの姿を眺めていた。

「…………さて!まずは治療してしまいましょう!みなさんこちらに来てください。」

アリシアがそう話すと、騎士達は我に返り、今度は申し訳なさそうにしている。

「アリシア様………救護セットは荷馬車の方に置いて来てしまっている状態です。それにこのような事は想定していませんでしたので、たいした物は用意できませんでした。」

だがアリシアは特に気にする様子はない。

「別に救急セットなんて無くても大丈夫よ。包帯があれば問題ないわ!何故か包帯だけは大量に有るんだから!」

そう言うと荷馬車の荷物を入れたスクロールから包帯だけを大量に出したのである。

「……………もう驚きません。ですがお聞きはしても良いでしょうか?」

「はい、どうぞ!」

「そちらのスクロールは、もしかして収納のスクロールだったりしますか?」

「はい、その通りです!」

「いやいやいやいや!収納のスクロールは現存するスクロールの中でも国家予算に匹敵すると言われるほどの激レアアイテムじゃないですか!」

「そうなのですが、今は訳あってお借りしている状態ですね。」

アリシアはスクロール研究のために、現存する収納のスクロールをミスト国王から借りていたのである。

まさに“国宝”を借りて私用で使っている状況なのだ。

「気にしなくてもいいですよ!どうせいくら高価な物でも、今はほとんどの人が使えないアイテムですから。」

そう言うと魔法で止血し、骨折箇所などにも魔法をかけながら手際良く添木を当てて治療していく。

その様子に誰も何も言わなくなってしまった。

本当は聞きたかった。

『何故通常の魔法を使えるアリシアが、治癒魔法(神聖魔法)を使えるのか』と言う疑問について。

実際アリシアが使っているのは神聖魔法ではないのだが、誰が考えても治療する魔法と言えば神聖魔法なのだ。

しかし、今までの出来事を考えれば、これ以上聞いたところできっと答えはこう返ってくるだろうと考えていた。

『使えるから使っている』

常識では考えられない事がさっきも起こったのだから、もはやそう言うものだと納得するだけである。

「我が国は安泰ですね。アリシア様のような方が妃として来て下さるのですから。」

騎士長がそう話すと、アリシアは照れている。

その様子にミモザとリサベルがニヤニヤとしているのだ。

「…………何よ〜……」

「別に〜?ただ、ずいぶんと馴染んでいるし歓迎されているんだなって思っただけよ。ねぇ?ミモザ。」

「そうねぇ………実はすでに皇后様も攻略しているのよ!嫁姑問題も完璧なの!」

完全に遊ばれているアリシアを見て、騎士達はゲラゲラと笑っている。

サーズは恥ずかしそうにしているが、マリエルはいつも通り微笑んでいた。

「とりあえず!このまま王都を目指すわよ。騎士長。あなた達をこのままここには置いていけないわ。一度ロゴス領に向かいます。あなた達はそこで療養してください。帰りはカカン山脈は通らずに海路で帰宅する事を命じます。」

アリシアは照れ隠しのように早口で話をまとめたのであった。

リサベルと無事に合流できたアリシアとミモザ。

ミスト王国領内へと足を進めることができた。

着いた先はもちろんロゴス領。

次に待ち受けるのは一体何なのか?


是非次回もよろしくお願いします!

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