第48話 モンスターの被害者
俺はバスの中で寝ているんだろうか。
ガコッガコッと、
体が少し上下に揺れている感じがする。
それに、いい匂いがする。
隣に女子中学生でも、
座っているのかな。
あれ?
俺、横になっている?
左手側から、いい匂いがする気がする。
ゴロンと寝返りを打つと、
柔らかい何かに触れ、
いい匂いは強まった。
少しの汗臭さ、
下の方をグリグリすると、
僅かな女の匂いがする。
「トモエさん、気付きましたか?」
俺達はケフの大森林で攫われた、
クラリスを助け出し、
急いでフェーズヒに、
向かっていたんだったな。
「ん~?リーンちゃん?」
俺は少し右に回転して、目を開ける。
目線の先にはリーンちゃんの顔が見える。
「膝枕ですか?」
夜は開け始め、
既に森の中でも無いらしい。
「そうです。
気持ち良かったですか?」
なるほど。
つまり、あの匂いはあのニオイなんだな。
「はい。
ありがとうございます。」
リーンちゃんの顔がちょっと赤い。
「結構、良い感じの匂いでしたよ?」
フレンダさんに言った台詞と、
同じ事を言っておく。
きっと、馬車の横を歩きながら、
聞いていただろうからね。
「……私も、嗅いでいいですか?」
「……いいですけど。」
なんだろう。
フレンダさんへの対抗心かな?
「良い匂いでした。」
うん。
さっきよりーンちゃんの顔が、
赤くなりました!
「私、門番に言って来ます!」
フェーズヒが遠くに見えて来た頃、
リーンちゃんがそう言って、
城塞都市に向かって走り出す。
「先触れですか?」
フレンダさんに聞いてみる。
「いえ、この子達をこのまま、
城内に入れられないから。」
「余計な恐怖を与えますか?」
ゴブリンに攫われると、
腕を食べられるとか、
正気を失う事態になるとか。
「そうね。
でも、一番の目的は私達への被害を、
防ぐためかしら?」
ミルクさんが答えてくれた。
それって、逆恨み対策じゃないか。
「やり切れないですね。」
「仕方ないよ。
私だって、クラリスがこんな目にあって、
自分を責めているんだから。」
フレンダさんは、
悲しみと苦悩を感じさせる顔をしている。
「フレンダ、こういう時は男に逃げなさい。
トモエさんがいるんだから、
一杯抱いて貰いなさいよ?」
ミルクさんが凄い事を言っている。
嬉しいけれどっ!
「うん。そうする。」
あれ?俺の意思が介在しない所で、
フレンダさんとの楽しい夜が決定された。
まぁ、純粋に喜べないが。
暫くすると、帆などを携えた門番達と一緒に、
リーンちゃんが帰って来た。
太い柱が四本あるから、
それを馬車の四方に立てて、
その上に帆を付け、
荷馬車の中身を覆うらしい。
「お帰りなさい。
リーンちゃん。」
「はい、戻りました。
冒険者ギルドにも、
伝令をお願いしておきました。」
リーンちゃんが一瞥もくれなかった。
もしかして、さっきの事を、
恥ずかしがっているのか?
「リーン、忘れてた。
ゴメンね、本当はリーダーの私が、
一番しっかりしなきゃいけないのに。」
「フレンダさんは、休んでいて下さい。
顔色悪過ぎます!」
リーンちゃんの言う通り、
フレンダさんは、危機的状況から脱して、
ケフの大森林からも出て、
緊張感が解けてきたからか、
憔悴の色を色濃く写し出している。
「場所を空けて貰えますか?」
「分かりました。」
荷馬車に柱を立てる為、
門番達が乗り込んできたので、
俺達は御者台に移動する。
「ニースちゃん、少しズレてくれる?」
「はい。」
ニースちゃんには右手に移動して貰って、
中央にフレンダさんを座らせる。
ちょっと、御者はし難いだろうけど。
門番達は柱を荷馬車に固定する訳では無く、
彼らが道中、ずっと支えるらしい。
荷馬車に座っている女の子達は、
昨夜より落ち着いて静かにしている。
「よっこいしょ。」
馴染みのある掛け声を言いながら、
門番達は荷馬車に帆を掛けて、
クラリスと女の子達を隠してしまった。
俺はフレンダさんの肩を抱きながら、
城塞都市への道を進む馬車に乗っている。
彼女は俺のパジャマに顔を埋めながら、
偶の嗚咽に耐えている。
綺麗な金髪を、よしよししてあげよう。
御者台の左側を、
リーンちゃんが歩いていたから、
俺は左手を差し出してみる。
……気付かない振りをしていたが、
結局、彼女は握り返してくれた。
まさにこれは、
両手に花っ!!




