第49話 フェーズヒへの帰還
俺達はケフの大森林で攫われた、
クラリスを助け出し、
フェーズヒに向かっている。
荷馬車の荷台は門番達が帆で隠し、
俺はリーンちゃんとフレンダさんと、
今回の冒険を噛み締めている。
城門には朝早くから、列が出来ている。
それに並ぶのかと思ったが、
列を素通りして城門に向かっていく。
「もうすぐ、城門です。」
「ありがとう。」
フレンダさんは俺の胸から顔を上げて、
目を赤くしながらも答えてくれる。
あ、リーンちゃんから手を離された。
フレンダさんには、
リーンちゃんとも手を繋いでいた事は、
内緒にしておいた方が良さそうだ。
「門番に話して来ます。」
リーンちゃんはそう言って、
門番達の所に向かって行く。
彼らも俺達が何を連れて来ているか、
分かっているみたいだが。
城門に並ぶ列を、
外側に居る弓装備の門番が待たせて、
俺達は横入りする形で城壁の下に入る。
列から不満の声が聞こえたりはしないが、
注目を浴びている。
「中身を拝見する。」
偉そうな門番がそう言って、
荷台を確認する。
「……多いな。
冒険者ギルドから、
裏口に来る様に伝令があったぞ。
行ってよし!」
「分かりました。」
フレンダさんが答え、
俺達は個々の荷物を調べられる事も無く、
城門を通過する。
「白黒が来ました!」
冒険者ギルドの裏口に近付くと、
ギルド職員のリンちゃんが、
俺達の到着を他の職員へ伝えてくれる。
「リンちゃん!
カスナードさんを呼んで来て!
急ぎよ!」
フレンダさんが声を掛けると、
リンちゃんは冒険者ギルドの中に、
真っ直ぐに走って行った。
「カスナードが来るまで、
待った方が良いですか?
場所は伝えてありますから、
治療院で会えると思いますが。」
若い女のギルド職員が、
そう言ってくる。
まぁ、荷台の中身は、
男が検分する様な物じゃないから、
冒険者ギルドも気を使っているんだろう。
「お願いします。
急ぎです。」
フレンダさんがそう答えるが、
ゴブリンロードの件だろうか。
「分かりました。」
その間も、他の女ギルド職員が、
荷台の中身を確認しては、
何処かに走って行く。
暫し待つと、赤毛に熊耳が見える、
壮年の男がやって来た。
「どうした?フレンダ。
……クラリスに何かあったのか?」
クラリスの親戚かな?
同じ髪の色、同じ様な耳だし。
「中を見て下さい。」
フレンダさんは、
彼と目を合わそうとはせず、
暗い声を出す。
「……フレンダ、
これは冒険者の宿命だ。」
まぁ、何があったのか、
察するには十分な状況だ。
それでも、クラリスを確認する前に、
まずはフレンダさんに声を掛ける辺り、
立派な人間なんだろう。
「はい……。」
俺は御者台の右に座っている、
フレンダさんを抱き締める。
「止めてよ。
今はそういう気分じゃない。」
フレンダさんは言葉では拒否しているが、
実際に俺を押しのける様な事はしない。
「クラリス、聞こえるか?」
「……叔父さん……ごめんなさい。」
「大丈夫だ――」
クラリスは瀕死の重傷だ。
今は血を新しくしたばかりだから平気だが、
敗血症の危険は相当高いはず。
そもそも、生き残っても、
日常生活すら苦労しそうだが。




