第14話 商業ギルドの認定試験
俺は宿屋の娘、リーンちゃんに案内され、
商業ギルドに来ている。
商業ギルドの二階には、
個室が並んでいた。
もちろん、個室があるのは採光している壁の、
反対側だけだが。
吹き抜け側には、
手摺りと椅子が置いてあり、
順番待ちをしている者も幾人か見える。
扉が開いている所は、
空いているという事かな。
それぞれ、○○担当と書いてある。
リーンちゃんが入って行ったのは、
棄民担当って書いてあった。
「すいません。
認定試験を受けたいんですが。」
リーンちゃんは雑談をすっ飛ばして、
用件を話し出す。
まぁ、雑談したりしないのかもしれないけど。
個室には、カウンターに向かい合って、
椅子が置いてある。
奥には職員が、手前には俺達が座る。
職員の奥には扉があるから、
そっちにもスペースがあるんだろう。
「お二人ですか?」
「いえ、私だけです。」
「貴方はこの都市に人頭税を払っていますか?」
人頭税を払っていると、
この都市の住民と見なされるんだろうな。
「えっと、違います。」
所得税と住民税は払っているけどな!
あと、健康保険とか厚生年金とかっ!!
「出身地とお名前をお願いします。」
「東京出身のトモエです。」
なんかこの設定、不味い気がして来た。
商業ギルドが把握していない村って、
存在するのか?
「トウキョウですか?
領主様のお名前を伺えますか?」
安倍……いや、無理だろう。
少なくともギルドが知らない貴族は、
いないんじゃないか?
「分かりません。」
「分からないんですか?
うーん、リーンさん?ですよね?
大丈夫ですか?」
お、流石有名人!
ギルド職員にも顔が知られているらしい。
「母と一緒に北門を通っているので、
大丈夫だと思います。」
「そうですか。
正規の手続きを経て、
入って来たんですね?」
「はい。
銭貨5枚、支払いました。」
「それでは、試験用紙をお持ちします。
代筆は必要ですか?」
「いえ、字は書けます。」
日本語だと思うから、多分な。
英語でも平気だ。
……夢言語だと無理だけれど。
職員さんは奥に行ってしまった。
まぁ、試験問題を常備はしていないだろう。
棄民担当って事は、
他の業務もあるんだろうし。
「問題、難しいんですか?」
「私は受けた事がないので、
分かりませんが、
一枚目が出来ると、
直ぐに仕事があるらしいですよ?」
問題は数枚ある模様。
商業ギルドに必要とされる技能は、
計算とかか?
「ありがとうございます。
お仕事を探す機会を頂戴できて、
助かります。」
「……別に、怒ってませんから。
ちょっと驚いただけです。
どう見えているか分かりませんが、
まだ結構、若いので!」
なるほど。
夜のお話は、まだ恥ずかしいお年頃だと。
あれ?経験無い?
いや、そんな事聞けないけどっ!
聞きたいけど!!
「そうだったんですか。
気を付けます。
その、ごめんなさい、」
「そうですね!
謝って下さい!許しますから。」
「はい。
変な事言ってごめん。」
「はい!」
うん、可愛い!
笑みも天使の様だ!!
「こちらが問題になります。
リーンさんは扉を閉めて、
ご退出下さい。」
すげーいいタイミングで、
職員が戻ってきた。
これ、絶対会話聞かれていたよな?
ちょっと恥ずかしい。
「分かりました。
トモエさん、頑張って下さい!」
「頑張ります!」
美少女の応援、
体に染み渡ります!
「この砂が落ちきるまで、
問題を解いて下さい。」
無骨な砂時計が出て来た。
でも、透明度の高いガラスみたいだし、
これ自体が高そうだ。
「分かりました。」
問題は羊皮紙に書いてあり、
回答は木板に書くらしい。
筆記用具は、インクと羽根ペンだった。
上手く書けるか心配だが、
取り敢えず、
既に砂が落ち始めているから始めよう。
一枚目をめくると、
問題には、四則演算が書いてある。
……え?小学生?
職員さんは、こちらを見ているが、
不正をしていないか、
監視をしているだけかな。
うげっ。
字が掠れるし、
木の板にも書きにくい!
兎に角、二項の計算から四項の計算まで、
単純な物から繰り上がり繰り下がり、
全ての場合を書き出せとか、
後半になるとそれなりに高度だ。
二枚目、所謂文章題だ。
植木算、仕事算、相当算、、
中学受験かっ!
線分図を書く訳にもいかず、
頭の中で頑張って解く。
検算には数学を使う。
まぁ、その方が一般的な解き方だが。
三枚目、お金に関する事や、
簿記に関する問題だ。
元利均等返済、元金均等返済、
帳簿について、
注意点や活用法を文章で答えたりとか。
高度って言うか、
これ商人じゃないと使わなくない?
例えば、冒険者には無駄な知識に思える。
まぁ、お小遣い帳とか付けるなら、
使うかもしれないけど。
社では自身に関する経理とかも、
自身でやらされるから分かるけど。
よし、解き終わった!
砂時計を見ると、
まだ半分以上残っていた。
……もしかして、やり過ぎた?
よし。残りはペラペラ捲りながら、
検算している様に装おう。
「あの、終わったのなら採点したいんですが。」
そうですよね。
見ていれば分かりますよね!
「お願いします。」
職員も仕事があるだろうし、
早く終わるなら、終わらせたいよな。。
全部合っていると思うんだが、
それが心配だ。
「リーンさん、終わりましたよ。」
職員は問題と解答を書き込んだ木板を持って、
奥に行ってしまったので声を掛けた。
ノックをしてから、彼女は入って来る。
ノックの文化、あるんですね。
「お疲れ様です。
どうでしたか?」
「……面倒事が起きそうです。
すいません。」
「えぇ。何したんですか?
商業ギルドに喧嘩売ったんですか?」
そんな事する様に見えるのか!?
いや、付き合いが短いから、
お互いの事よく分からないよな。
「違いますよ!
解き過ぎたというか、
簡単過ぎたと言うか。」
「??
出来たなら、仕事も来ますし、
良い事なのでは?」
「程度の問題かと。」
「あぁ、なるほど。
新人冒険者なのに、強かったりすると、
反感買ったりしますよね。」
それじゃあ、俺つえー出来ないじゃん!
「うん、それで合ってる。」
「トモエさん、リーンさん、
こちらにお願い出来ますか?」
さっきの職員が、
廊下から声を掛けてきた。
絶対他の部屋に、
連れて行かれるパターンだ。
「分かりました。」
「トモエさんの言った通りになりましたね。」
耳元で言われると、ぞくぞくします!
「残念な事に。」
まぁ、命の危機では無いと思う。
出自とか、そんな話かな。
……だと、いいなぁ。




