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Episode 27 常にバチバチの三人

 放課後の寮部屋。窓から差し込む夕陽が、机やベッドを柔らかくオレンジ色に染めていた。


 わたしは、アレクシス様、ルカ様、お義兄(にい)様、エノリス様とお茶会をしている。


 エルを中心に机を囲むアレクシス様、ルカ様、お義兄様は、まるで戦場の騎士のような緊張感を漂わせる。

 いや正確には、“わたしを巡る三つ巴戦”の開戦前夜戦だ。


 アレクシス様は金色の瞳を鋭くわたしに向け、わずかに眉を寄せる。

 ルカ様はいつもの落ち着いた微笑みの奥に、鋭い眼光を隠している。

 お義兄様は、義兄としての余裕を漂わせつつも、義妹を巡る警戒心が滲む。


 わたしは頭を抱えながら思った。

(……ヤバい、またこの三人でバチバチするやつ……)


 ルカ様が静かに口を開く。

「……エル、このあと、少しだけ、お時間いただけますか」


 すかさずアレクシス様が口をかぶせる。

「エル、私と先に話すぞ」


 お義兄様が腕組みをしながら、柔らかくも鋭い声で割り込む。

「エル、俺と話す時間がほしい」


 エルは頭を抱え、思わず声を絞り出す。

「や、やめて……! もう順番とか考えられないわ……!」


 その横で、エノリス様が小さく笑う。

「……こうなるんですね、やっぱり」

 わたしは少しほっとする。エノリス様の存在は、柔らかな安心を与えてくれる。


 三人は一瞬、互いの視線を交わし、静寂が流れる。


 アレクシス様が口を開いた。

「……俺が先に話す」


 ルカ様は微笑みながら静かに頷く。

「順番なら、譲ります」


 お義兄様もやや不満げに頷いた。

「……俺も、待つか」


 こうして、戦闘はひとまず沈静。


 わたしは小さく息をつき、机に置かれた手を握りしめる。

 その瞬間、エノリス様が紅茶のカップを差し出し、にっこり笑った。

「こうして皆で過ごせる時間は、やっぱりいいですね」


 夕陽に照らされる穏やかな空間の中、アレクシス様、ルカ様、お義兄様は少しずつ柔らかくなる。

 だが、視線の端にはまだ微かな火花が散る。

 ――ほっこりしつつも、油断ならない三つ巴の戦いは、まだまだ続く。


 ルカ様が少し距離を詰めて、わたしに向かって真剣な瞳を向けた。

「エル、君の気持ちを……」


 その瞬間、アレクシス様が立ち上がり、怒気を帯びた声を出す。

「ちょっと待てルカ! 私が話出す前に、何勝手に距離詰めてんだよ!」


 お義兄様も負けじと立ち上がる。

「ルカ、落ち着け。俺もエルと話す権利がある!」


 ルカ様は動じず、静かに微笑みながら前に出る。

「二人とも、怒るのはまだ早いですよ。ただ……私はエルに直接、伝えたいことがあるだけです」


 アレクシス様は目を見開き、顔を真っ赤にして声を張る。

「いや、早くねぇよ! お前、出すぎだろ!」


 お義兄様も眉間にしわを寄せ、腕組みを崩さずに睨みつける。

「俺は黙ってないぞ。エルの前で無遠慮に距離を詰めるとは……ルカ、少しは控えろ!」


 ルカ様はわずかに肩をすくめ、落ち着いた声で応じる。

「……分かりました。でも、エルにとって重要なのは私の距離ではなく、私の言葉です」


 アレクシス様が机を叩き、声を荒げる。

「クソ……俺だって、エルに言いたいことあるんだ!」


 お義兄様も机をドンと叩き、さらに大声で。

「俺は義兄として、エルを守る立場だぞ! 黙って見てられるか!」


 その場にいる三人の空気は、一気に火薬庫のように張り詰める。

 わたしは顔を真っ赤にし、両手で頬を押さえる。

(……や、ヤバいわよ、これ本気でバチバチしてる……!)


 その横で、エノリス様は静かに紅茶を差し出し、苦笑いしている。


 ルカ様はゆっくりと距離を保ちつつ、視線だけでアレクシス様とお義兄様に語りかける。

「二人とも、落ち着いて。焦らず、順番に」


 だが、アレクシス様とお義兄様の目はまだ冷たい炎を(とも)している。

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