Episode 17 “身分の壁を壊す女教師”ハイアス・ノーズリーヴ先生、降臨
(嫌よ! 個別って何!? あれだけ朝から事件続いたのに!? わたしのメンタルは一つしかないのよぉっ!?!?)
エノリス様が小さく震えながら、
「エ……エル様っ……! が、頑張って……っ!」
としか言えない状態。
(頑張るのはあなたじゃない? わたし!?!?)
そんなときだった。
――バンッ!!!!
教室の扉が、蹴り飛ばされたかのような音で開いた。
「――こらァァァァァ!!!! 何してんだあんたらァァァッッッ!!!!」
ひぃっ……!?
アレクシス様、ルカ様、お義兄様、全員ビクッと肩を跳ね上げた。
紺髪ショート、内側だけ赤のインナーカラー。
ヒールの音をガンガン響かせながら歩いてくる。
王立エスタール学園高等科1-A担任教師、ハイアス・ノーズリーヴ先生、降臨。
「朝の女子寮で大騒ぎしたって聞いたけど、今度は教室で三対一の取り囲みかぁ?」
教室、静寂。
(出た……学園が誇る“身分の壁を壊す女教師”……)
ハイアス先生はアレクシス様の前に立ち、指をビシッと。
「殿下、ここ授業する場所だろ。プロポーズ会場じゃねぇ」
「ぷっ、プロポーズなど――!?」
アレクシス様が慌てて言い返すが──
「黙れ殿下、口閉じとけ」
「……はい」
言いくるめられる。
次にルカ様の前へ行き、指をビシッと。
「公爵、朝っぱらから少女の部屋にいくのは問題行動だ。“呼吸確認してた”とか意味わからん言い訳すんな」
「……っ……申し訳ありません」
反省しているのかしていないのかわからないが、一応謝るルカ様。
偉い。
「いや謝るのはいいけどな? 次やったら学園長に書類回すから覚悟しとけ」
「……はい」
(ルカ様も勝てない……! 強すぎる、ハイアス先生……!)
そしてお義兄様の前に行き二人と同じように指をビシッと。
「ショアン家の兄。お前は……うるさい」
「えっ!? 理由それ!? 俺だけ理由それ!?」
「お前、騒音の原因。以上」
「すみませんでしたぁ!!」
謝るお義兄様。
こちらも素直。
(先生……お義兄様の扱い雑じゃない……?)
ハイアス先生は、三人まとめて睨みつけた。
「いいか、オメーら。ここは王宮でも戦場でも恋愛劇場でもない。教、室。授業の邪魔になる奴、身分関係なく外出すぞ?」
「「「……はい」」」
完全服従。
王子と公爵と次期公爵が、元ヤンの前でペットみたいに縮こまっている。
ハイアス先生は、まだまだ終わらせない。
「それから。――全員、反省文提出。三百字詰め原稿用紙三枚以上で」
「「「…………は?」」」
殿下、公爵、お義兄様、揃って目が死んだ。
「聞こえなかったか? 三枚だ。“口では反省してます~”って顔してるヤツほど書かせると静かになるんだ」
「「「……はい……」」」
「安心してるようだが、ショアン嬢、ヴィエラ嬢。オメーらもだからな」
(ひええ⋯⋯! わたしも巻き込まれた! なんでよぉっ!!)
「ああ、言い忘れてたが、提出期限はあ、し、た、までだ。くれぐれも遅れるなんて考えるなよ」
(ひぃっ……アレクシス様もルカ様もお義兄様も……顔が無。強すぎる、先生……!)
こうして騒動は一旦終息した。




