道④
階段を下りきった先——そこには、異様な光景が広がっていた。
天井に届くほど巨大な、龍のようなシルエット。
金属のように鈍く光る鱗、風化しきった尾。
そして、その体のあちこちに走る、古びた銃創の跡。
だが——
「……あれ、喉元……」ユリが小さくつぶやく。
喉元には、何かに激しく貫かれたような大穴が空いていた。
焼け焦げたように黒ずみ、骨まで砕かれているのが分かる。
致命傷——そうとしか思えない損傷。
その“ミイラ”の前に立ち、ヒデユキが語り始めた。
「……こいつは、”世界が滅びた日“に現れた、いわば始祖と呼ばれるランバートだ。…十年前、私が倒した」
その言葉に、空気が一気に凍りつく。
タツヤ、ナツキ、ユリ…全員が目を見開いた。
ランバートの大型個体との戦闘経験が無いわけではない。だが、“龍”のタイプなど聞いたことがなかった。
そして何より、世界の崩壊と呼ばれた“あの日”に現れたものを一人で倒したなど——
ヒデユキは少し、遠くを見るような目になり、続けた。
「……100年前、“滅菌”によって世界は滅びた。
しかし、ランバートは生き残った…と、言われているな?」
誰も返せない。静寂が支配する。
「だが……実際に生き残った“始祖”のランバートなど、ほんの一握りに過ぎない。そしてその始祖も、今ではもういない…筈なのだよ」
ナツキが訝しげに首をかしげた。
「……でもさ。ランバートって今でもウジャウジャいるぜ?始祖が少数だったって、あいつら繁殖でもしてんのかよ」
その言葉に、ヒデユキはゆっくりと首を振った。
「……例えばだ。とんでもない技術で“現代”に怪物を人工的に生み出せるとしたら…その技術で得をするのは、誰だと思う?」
タツヤが口を開く。
「……人類にとっての敵を……人類が意図的に生み出すってことか?……馬鹿げてる…!」
だが、その直後
「…R.W社…」
ユリが、呟くように言った。
タツヤは驚いたように彼女を振り返る。
ヒデユキは、静かに頷いた。
「……あくまで仮説だ。証拠があるわけじゃない。
だが、私はこう考えている。
今のこの時代、“血”がエネルギーだ。より多くの血が集まり、それを変換することで、膨大な力が生まれる。"血税"、"ブラッドエネルギー"、定期的に現れる"人類の敵"、"消費される兵器"…。
この構図で、一番“得をする存在”がいるとすれば…それは、“兵器を供給し、管理し、情報をコントロールする企業”ではないかと、ね」
彼の言葉は、決して断定ではない。
だが、そこにあったのは核心に近づいた人間の確信、そして、静かな怒りだった。




