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第七九段 まして、臨時の祭の調楽などは
この細殿では、まして賀茂の臨時の祭りの調楽などの様子は、すごく面白い。
(君達の中から舞人十人、楽人十二人が選ばれて趙楽が行われるそうです。)
殿守司の官人などが、長い松明を高くともして、頸は襟の中に入れて、松明の先がものに当たりそうなほどなのに、おもしろく舞い、楽人たちは笛を吹いている。心して正式の礼装である束帯に身を包んだ公達が細殿で立ち止まり、女房たちに話しかけていく。一方では、殿上人の随身達が楽を妨げないようにしのびやかに自分の主人を追っていくのだが、その声が管弦の遊びに交じっていつもとは違って「おかし」とかんじられる。
そのあとそのまま格子を上げて、楽人たちが帰って来るのを待っていると、君達の声で
「荒田に生うる 富草の花 手につみれて 宮へまいらん なかつたえ」と歌っている。行きはともかく帰りに歌うのはおもしろいのだが、いったいどういう生真面目な人なのだろうか。
さっさと歩いて行ってしまう者もいるので笑っていると、
「ちょっとお待ちを。なぜ、夜を捨てて世を捨ててそんなに急ぐのです。」などと言い掛ける女房もいるが、気持ちが悪いのであろうか、倒れそうなほど慌てて、追いつかれたら捕まってひどい目にあうかのように慌てて退出する者もあるようであった。




