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第五七段 職の御曹司の立蔀のもとにて(その5)
晩春の三月末ごろは、冬用の直衣は着にくいのであろうか、束帯の袍だけ着た殿上人や宿直の人の姿が見られる。早朝、日が昇るまで、同僚の式部のおもとと廂のところで寝ている。すると、奥の引き戸を開けさせられて、一条天皇と定子様が出ていらっしゃった。慌てて起きようと騒ぐのを、ひどく笑われる。唐衣を髪の上から着て、宿直用の衣やなんやかやにうずもれているところにいらっしゃって、陣屋から出入りする者たちをご覧になっている。前を渡る殿上人は、まさか天皇様とお后様に見られているともつゆ知らず、御簾の外からわたしたちに言葉を掛けていく者もいる。
「私たちがここにいる様子は、見せないように。」と笑っていらっしゃる。そうしてから、立ち去られるときに、
「二人とも、さあ。」と参上するように言われたのだが、
「いま、顔をつくろいますので、それから参ります。」と言って参上しなかった。
さて、二人残った清少納言と式部のおとど。次に何が起こるのでしょう?次でこの段は終わります。




