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第五七段 職の御曹司の立蔀のもとにて(その3)
頭弁は、定子様にお目にかかってお話申し上げる時でも、はじめに取り次いだ私をたずね、私室の局に下がっていても呼び寄せるか、やってきて話しかける。
私が、里下がりをしているときは、文をよこしたり、自らたずねてきて、
「もしあなたの参上が遅くなるのなら、『頭弁がこう申しております。』と、人を遣わして定子様に申し上げよ。』などとおっしゃる。
「誰それがいらっしゃいますよ。」などと言って他の女房に譲ろうとするけれど、そうはできないと言われる。
「その場のありように従い、一つに決めず、何事も対処していくのがよいのですよ。」とおこがましく諭すように申し上げても、
「『あらたまざるものは心なり』と言うではありませんか。」とおっしゃるので、
「『過ちてはすなわちあらたまるにはばかることなかれ』とは、どういうことを言うのでしょう。」と不思議そうに答える。
教養高い会話をしていたという話が、続きます。




