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第二五段 にくきもの(その一)
にくきもの(いやなもの)
急ぎの用事があるときにやってきて、長話をする客は、「にくし」。軽く扱っていい人なら、「あとで。」と言って追いやってしまえるけれど、身分が上で気を遣わないといけない相手であれば、まったく「にくし」。
(まったくいやだったらありはしない、現代と同じね。今なら、メールがあるから来はしないけど。返事が遅れると怒るし。延々とやり取りが続くと、自分の用事ができないし。)
硯に髪の毛が入っている墨。また、墨の中に石のかけらが入っていて、刷っているときしきしするやつ。
急に病気になってしまった人がいるときに、修験者を探すと、いつも頼んでいるところにいないで、他のところに行っているという。どこにいるのか、たずね歩かせると、なかなか探せず、待ち遠しく思っていると、やっと来てくれる。ああ、やっと加持祈祷をしてもらえるとよろこんでいると、このごろの物の怪の調伏に疲れがたまっていたのであろうか、座った途端に、読経が眠たそうな声になってしまうのは、ひどく「にくし」。
にくきものも、いっぱいあるようです。




