68 光泰 つたわる
五月二十四日、
本能寺の変まで、あと八日。
紙相撲を作った時に、余った紙を利用してとある玩具を作った。
思ったより時間が、かかってしまった。
現代だと百均で売っている物で作れるが、一から作ると面倒だった。
形を整えるために色々と、試行錯誤を繰り返したら、二日もかかってしまった。
光泰 「完成じゃ」
茂兵衛「それは、何で御座いましょうか?」
光泰 「まだ教えぬ。手妻(手品)の種明かしを聞いてどうする」
茂兵衛「紙の入れ物に、糸を垂らした簡単な作りで御座いますが、
私めには検討も付きませぬ」
光泰 「後で使わせるから、期待しておれ。
最初は、初菊に試すでのう」
そう言えば、茂兵衛に与えた仕事は進んでいるだろうか?
光泰 「所で、人集めは進んでおるか?」
茂兵衛「牢人共を集めるには、無理のようで御座います」
戦えそうな人は、明智光秀が連れて行ってしまったからな。
光泰 「仕方がないのう、動ける者なら誰でも良い。
人手が必要なだけじゃから、元服前の子供や、
動ける年寄りでも良いぞ」
茂兵衛「畏まりました。浪士組に命じさせます」
浪士組には、村々に人集めの伝達を頼んでいる。
本当は、戦える浪人が欲しかったが無理なので仕方がない。
光泰 「さて、初菊を驚かせるか。平次殿には、茂兵衛の代わりに
護衛を頼むぞ」
茂兵衛「お待ちくだされ」
光泰 「なんじゃ、手短に話せ」
茂兵衛君、すぐに人集めに動いてくれよ。
早くこの玩具で、初菊とイチャイチャしたいんだよ。
茂兵衛「何故、平次殿が私の代わりに、護衛を任されたので御座いましょうか?」
いや、君は護衛として役に立っていないよ。
光泰 「ならば、どちらが腕が立つか勝負してみるか?」
茂兵衛「おっと、用事が御座いました」
茂兵衛は逃げた。
実は、茂兵衛は弱い。僕より弱い。
今のところ、僕の直属の部下で、一番強そうなのは、
服部平次君で、二番目が田中権兵衛君。
その後、僕と同じぐらいの実力の浪士組の人達がいて、
最後に森茂兵衛君となる。
ちなみに、坂本城の人達は僕の家臣ではなく、
明智光秀の家臣なので除外している。
平次 「宜しいのですか?新参者の私めを、側に置いても?」
光泰 「問題なかろう。それから、そなたが忍びの者であるのは、隠しておれ。
堺の商家に紹介された、武芸の才が有る番頭の倅と言う事にするかのう」
平次 「商家の番頭の倅ですか?経験がございませぬが」
光泰 「商いの才は、無い事にすれば良い。堺との伝令に雇い入れた者と言えば、
他の者は気にはせぬであろう」
平次 「左様で御座いますか?」
服部平次は、何かと慎重な性格のようである。
さて、初菊の部屋に向かうか。
光泰 「初菊ぅ~♡、少し良いか?」
初菊 「十次郎様、いかが致しましたか?」
光泰 「これを、耳に当ててみよ」
初菊 「こうですか?」
後は、紐が弛まないように、ピンと張るまで離れた。
距離は、3メートルぐらいだ。
光泰 「初菊、聞こえるか。今日も可愛いのう」
初菊 「キャ!」
驚いた初菊は、可愛い声を出した。
平次 「(はて?、何をして居るのじゃろうか?)」
森お茂「若様、何を成されたのですか?」
コレ、解りやすい説明がむつがしいな。
光泰 「初菊、森殿の耳にも当ててみよ」
説明するより、使って貰った方が解りやすい。
光泰 「もしもし森殿、聞こえるか?」
森お茂「ヒャーーー!!!!」
森のオバちゃん、驚きすぎだよ。
(もしもし森は、最初に言いたかった)
森お茂「これは、妖術かなにかですか?」
妖術って・・・そう言う反応か。
光泰 「妖術では無い。新しい玩具じゃ。
手妻(手品)みたいなものじゃ」
新しい玩具、糸電話である。
初菊 「手妻で御座いますか?
手妻とは、紙の蝶を飛ばしたりする物では、無いのですか?」
光泰 「蝶の変わりに、声を飛ばしてみたのじゃ」
森お茂「このような不可思議な事、聞いたことが御座いませぬ」
そうなんだよ。糸電話なんて簡単に作れるのに、
この世に存在すらしていなかったんだよ。(二日かかったけど)
もしかして電話が先なのだろうか?
電話が無いと、糸電話の漢字の意味が通じないし。
ここから、初菊とのイチャイチャタイムの始まりだ。
光泰 「初菊、愛してるぞ」
初菊 「私のどこがお好きですか?」
光泰 「全部じゃ」
初菊 「恥ずかしい事を、言わないで下さい」
光泰 「本当のことじゃぞ」
それから10分ぐらい話した。
森お茂「お二人供、仲の良い事は宜しいですが、
姫様には、覚えておかねばならぬ事が多いのです。
若様も、そのくらいに致しませ」
光泰 「そうか、ではまた今度遊ぼうな」
楽しい時間は短かく感じるものだ。
30分話していたようだ。
森お茂「姫様、常識破りの若様に、ふさわしい奥方に成るため
頑張らねば成りませぬよ」
常識破りって・・・そう見えるかな?
初菊 「自身が無くなります」
変なプレッシャーを、初菊に与えたようだ。
光泰 「森殿、そう焦らなくて良い。
このような物、誰でも作れる」
森お茂「誰でも作れるから、問題なのです。
紙と糸だけで、遠くの者と話ができるなど
妖術使いだと思われても、仕方ありませぬ」
光泰 「大袈裟な・・・そうなのか?」
初菊に意見を求めた。
初菊 「そうです」
これは、発表したら大事になるかな?
でも、これ役に立たないよな。
糸電話は、長距離には使えないと言う、欠点が有るからな。
電話の作り方、誰か教えてくれないかな?
光泰 「他の者の、意見も聞くべきか?」
森お茂「その方が宜しいでしょう。
売るにしても、戦に使うにせよ、慎重にしても損は有りませぬ」
茂兵衛は何故、この母親の子に生まれて、あんなに頼りないのだろうか?
坂本城七不思議の一つである。
光泰 「御祖父様の意見も、聞いておくか」
次に、範熈祖父さんの部屋に向かった。
光泰 「御祖父様、新しい玩具を作りましたので試してもらえますか?」
妻木範熈「玩具作りも良いが、武芸の稽古を怠ってはおらぬか?」
光泰 「初陣した時に、武勲をたてますので、楽しみにしてくださいませ」
妻木範熈「ほう、初陣で武勲をたてる気か。それでこそ、わしの孫じゃ」
僕の初陣は、きっとアレの時だよな。
光泰 「そんな先の事より、まずは試して下さい」
妻木範熈「耳に当てれば良いのじゃな?」
さて、なんと言うか。その前に驚いて、心臓が止まると大変だな。
光泰 「この筒から、声が聞こえますから、余り驚きませぬように」
妻木範熈「そのような事が、出来るわけ無かろう」
まあ、信じられないか。電話が出来るのは二百年後だし。
光泰 「もしもし聞こえますか」
妻木範熈「わしは、耳がおかしくなってしもうたか?」
光泰 「どうですか?聞こえたでしょう」
妻木範熈「確かに聞こえた。これは玩具なのか?」
光泰 「玩具です。妖術でも忍術でも御座いませぬ」
妻木範熈「このような物、聞いたこととが無いぞ。
これは、大変な物を作ったものじゃ」
範熈祖父さんは、少し大袈裟なんだよな。
光泰 「玩具ですので、役にはたちませぬよ」
妻木範熈「いや、これを遠くに伸ばせば伝令など不要になるぞ」
光泰 「それは無理で御座います。
長くすると紐が弛み聞こえ無くなるのです」
妻木範熈「そうか、上手く行かぬものじゃ。
もし使えれば、伝令を雇わずに済むのじゃが」
範熈祖父さんは、戦術に使うのでは無く、経費を気にしているようである。
実に文官らしい判断である。
妻木範熈「何故、聞こえるのじゃ?」
光泰 「声とは、風の強弱で聞こえるのです。
この糸を揺らすことで、筒同士を同じように引っ張り
遠くに運ぶので御座います」
僕は正解かどうか怪しい、糸電話の説明をした。
正直言って、仕組みなど考えたこと無い。
妻木範熈「成る程、聞いても良く解らぬ」
光泰 「琵琶が鳴るのと同じで御座います」
妻木範熈「琵琶か、それなら解るぞ」
光泰 「この玩具を売ると、問題が起きますでしょうか?」
妻木範熈「必ず起こるであろうな。仕組みを理解できるとは思えぬ」
さて、困ったぞ。別の手品を考えないと、いけないかな?
妻木範熈「ところで、そこの者は見慣れぬが、新しく雇い入れたか?」
光泰 「前に申した、堺の者で御座います」
平次 「服部平次で御座います」
妻木範熈「堺の者なら元は商人であろう。近習にしてどうする」
光泰 「あの二人より腕が立ちますよ」
あの二人とは、茂兵衛と権兵衛である。
妻木範熈「情けない話じゃ。商人に負けるとは」
光泰 「なので、あの二人には別の役目に付けました」
妻木範熈「服部とやら、しっかりと役目を励むのじゃぞ」
平次 「ハッ!!」
妻木範熈「威勢の良いのう」
僕は、自室に戻った。
光泰「平次殿、この玩具をどう見る」
平次「織田様に、献上すべきかと思われます」
光泰「上様にか。そうじゃな、そうするか。
徳川様は、まだ安土に居るかのう」
平次「返事が早う付きましたので、まだ居られるかと」
光泰「徳川様が居られる時に、送るのは余り良くないか」
平次「左様で御座いますか?」
光泰「もし、上様がこの糸電話を徳川殿に自慢してみよ。
平次殿の目は、節穴だと思われるぞ」
今は、変に影響を与えると、予想外の事が起きるかもしれない。
平次「若様が気になされる事では、御座いませぬが?」
光泰「服部半蔵殿にも迷惑が、かかるやも知れぬ。
徳川様はこの後、堺に行くはずだから、その時に渡すか」
うん、そうしよう。物事は慎重にしなくてはならない。
平次「(これは、急いで知らせるべきか?)」
光泰「徳川様には、上様より先に渡せるよう、もう一つ作らねばならぬか」
平次「宜しいのですか?」
光泰「内緒じゃぞ」
作戦はこうだ。服部平次君に、徳川家康に糸電話と明智光秀の
謀反の伝達をさせ、恩を売っておく。
本能寺の変を阻止できなかった場合、逃げて徳川家に雇ってもらう。
命の恩人を、無碍にはしないだろうと思う。たぶん。
それに今までに見てきた、有名な戦国武将はイメージが違ったからな。
織田信長は、怖い人だと思ったら、 普通のオッサンだった。
森 蘭丸は、可愛い男の子だと思ったら、体育会系のお兄さんだった。
明智光秀は、悪い人だと思ったら、 ハゲたジジイだった。
長岡忠興は、よく知らなかったが、 モラハラ男だった。
徳川家康は、狸親父らしいが、 噂では冴えない人らしい。
糸電話は、三才になる次男の玩具として渡せばいい。
徳川秀忠は、三男だったよな。まだ生まれていないのかな?
全然、情報が入って来ないんだよな。
光泰「徳川様の御子は、何人居るのかのう」
平次「存じませぬ」
家臣の服部平次君ですら、知らないんだよ。
僕に解るわけない。
本当は、三年前に徳川家にもヨーヨーを送るはずだったのだが、
あの時は、嫡男の信康が切腹した頃と重なっていたので、
流石に辞めておいた。(注:二十五話)
しかし、徳川秀忠が年下になるのか・・・変な感じがする。
投稿が遅くなっていますが、
ドラクエライバルズにハマったからです。
けしてネタ切れでは有りません。
結末はちゃんと出来ていますが、途中の話がまだです。
本能寺の変の頃の明智家の動きが解りづらい。




